レック2(原題[REC2])は、「全隊員に小型カメラを搭載する」という画期的なアイデアで撮影されています。まず序盤、SWAT隊がアパートに突入する前に、各隊員のカメラチェックを行うシーンが映し出されます。この瞬間、POVホラーファンならば誰もがワクワクせずにはいられません。なぜなら、これらのカメラが必ず物語の重要な役割を果たすことが予感できるからです。

そしてこのワクワク感への期待は裏切られません。複数のカメラ映像が切り替わることで、同じ空間で起きている出来事を異なる角度から体験できる構造は、単なる演出上の工夫に留まらず、物語そのものを豊かにする装置となっています。隊員が分断されたとき、それぞれが目撃する恐怖が同時進行で描かれる緊張感は、前作以上の没入感を生み出しています。
前作『REC/レック』が記者アンヘラとカメラマンの二人称視点だったのに対し、本作は多視点構造により、より複雑で立体的な恐怖体験を実現しました。これは続編としての正統な進化であり、POVホラーというジャンルの可能性を広げた功績は大きいと言えるでしょう。
前作との巧みな連続性
本作は、前作のラストシーンの直後から始まります。前作では、通報を受けた消防隊がアパートに駆けつけ、事態が悪化した後にSWAT隊が投入されるという流れでした。本作は、まさにそのSWAT隊の視点から描かれているのです。
この時間的連続性により、「あの惨劇の直後に何が起きたのか」という興味が自然と湧き上がります。アパートの外では、前作で何度も名前が登場した「ジェニフェルの父親」が登場し、娘を心配して泣き叫んでいます。前作を鑑賞した観客にとって、このキャラクターの登場は感慨深いものがあります。
さらに、前作で犠牲になった住人たちが感染者として襲ってくるシーンも印象的です。かつて生存をかけて必死に戦っていた人々が、今や凶暴な化け物と化している――この対比は、ホラー映画ならではの残酷な皮肉を感じさせます。
また、こっそりアパートに侵入した少年たちと、SWAT隊が予期せぬ形で遭遇するシーンも見どころです。パニック状態のジェニフェルの父親がSWAT隊に駆け寄り、隊員が反射的に射殺してしまう。その瞬間を目撃した少年たちとの緊張感ある対面は、「別ルートの生存者」という展開に独特のスリルを与えています。
深まるオカルト要素と宗教的テーマ
前作でもほのめかされていたオカルト要素ですが、本作ではそれが大幅に強化されています。保健省の医療担当官だと思われていたオーウェン博士が、実はローマ教皇庁から派遣された牧師だったという設定は、物語に宗教的な深みを与えています。
彼の目的は、感染源となった「最初の悪魔憑き」の血液サンプルを回収することです。この血液には悪魔を封じる力があり、それを手に入れることで事態を収束させようとしているのです。オーウェン博士が祈りの言葉を唱えると血液サンプルが発火するシーンは、科学では説明のつかない超常現象を目の当たりにする瞬間であり、観る者に不安と興奮を同時に与えます。

また、存在しない井戸に落ちる幻覚のシーンなど、オカルトホラーならではの演出も随所に散りばめられています。これらの要素は、前作のゾンビパニック的な恐怖から、より形而上学的で不気味な恐怖へとシフトさせる役割を果たしています。
ただし、この方向性の転換には賛否があるのも事実です。前作の「感染パニック」というリアルな恐怖を期待していた観客にとっては、オカルト要素の強化が受け入れがたいかもしれません。しかし、スペインという国が持つカトリック文化の影響を考えると、悪魔憑きや聖職者の登場は自然な流れとも言えます。日本のホラーが怨霊や呪いを扱うように、スペインのホラーが悪魔や信仰を扱うのは文化的背景に根ざしたものなのです。
物語構造と演出の巧みさ
本作の構成は、前半がSWAT隊の視点、中盤で少年たちの視点に切り替わり、終盤で再び合流するという三幕構成になっています。この構造には賛否があり、「少年たちのパートは蛇足では」という意見も理解できます。
確かに、少年たちの侵入エピソードは、物語の緊張感を一時的に分断する側面があります。SWAT隊の緊迫した作戦行動から、悪ガキたちの無謀な行動に視点が移ることで、テンポが損なわれる印象は否めません。
しかし、この構成には利点もあります。複数の視点から同じ空間での出来事を描くことで、アパート内の状況がより立体的に理解できるのです。また、少年たちという「素人」の視点を入れることで、訓練されたSWAT隊とは異なる恐怖の描き方が可能になります。プロの兵士と一般市民、それぞれが感じる恐怖の質の違いは、作品に多層的な深みを与えています。
とはいえ、もし少年たちのパートをカットし、SWAT隊の物語に集中していれば、よりタイトで緊張感の持続する作品になっていた可能性も否定できません。この点は、本作の唯一の弱点と言えるかもしれません。
まとめ:続編の枠を超えた恐怖体験
映画『REC/レック2』は、前作の成功に甘んじることなく、新たな挑戦を続けた意欲作です。全隊員カメラ搭載という革新的なアイデア、前作との巧みな連続性、そしてオカルト要素の深化――これらはすべて、続編としての正統な進化を示しています。
確かに、少年たちのエピソードや登場人物の判断ミスといった弱点も存在します。しかし、それらを差し引いても、本作はPOVホラーというジャンルの可能性を広げた傑作と言えるでしょう。
前作で描かれた「記録すること」の意味が、本作ではさらに拡張されています。複数のカメラが捉える恐怖は、単なる記録を超えて、真実を多角的に照らし出す装置となっているのです。
そして何より、本作が問いかけるのは「信じること」の意味です。科学を信じるのか、信仰を信じるのか。オーウェン博士という牧師が、超常的な力と向き合う姿は、現代社会における宗教の役割を象徴的に描いているとも言えます。
ホラー映画ファンはもちろん、続編映画の可能性を信じるすべての映画好きに観てほしい、刺激的で恐ろしく、そして考えさせられる一作です。





