映画ホラーシリーズ『REC レック』の完結編である「REC レック4 ワールドエンド」は、2007年の1作目から続くアンヘラ・ビダル記者(マヌエラ・ベラスコ)の物語を完結させる作品です。シリーズの特徴であったPOV映像を一部に留め、通常の映画的な撮影手法を取り入れた点が大きな変化となっています。
本作の舞台は洋上の軍用船という新たな舞台設定であり、最初のRECのビルと同じく逃げ場のない閉塞感をさらに増幅させていました。海上の船という周囲は海だけであり、陸上の建物のように外へ逃げ出すこともできません。狭い廊下や薄暗い照明が作り出す迷路のような構造が、恐怖を効果的に煽りとなっていました。
またウイルスの謎については、シリーズを通して描かれてきた疑問の一部に答えが示されますが、すべてが明確に解明されるわけではありません。この曖昧さは視聴者によって評価が分かれるところでしょう。
本作で最も重要なのは、アンヘラ・ビダル記者(マヌエラ・ベラスコ)という人間の物語をどう終わらせるかという点なのです。
POV映像から通常撮影へ
本作では、シリーズの象徴だったPOV映像が一部のシーンに留められ、大部分は通常の映画的な撮影手法が採用されています。この変化により、キャラクターの表情や心情をより丁寧に描けるようになり、人間ドラマとしての深みがある印象でした。特にマヌエラ・ベラスコが演じるアンヘラの表情は恐怖に怯える目、決意を固めた時の強い眼差し、仲間を失った時の悲しみが鮮明に捉えられています。
ただし、1作目からのファンにとっては、POV映像こそがシリーズの最大の魅力だったという意見も理解できます。あのブレるカメラ、息遣いが聞こえるような臨場感、まるで自分がその場にいるかのような恐怖体験があり、それらが失われてしまったことは、正直なところ残念だと感じました。通常撮影になったことで、ある種の「安全な距離感」が生まれてしまい、シリーズ初期が持っていた生々しい恐怖が薄れてしまったのは否めません。
映像面では、シリーズの他作品と比べて洗練された仕上がりとなっています。船内の美術設計は見事で、狭い廊下、錆びた金属の質感、薄暗い照明が組み合わさることで、閉塞感と不安感が画面全体に漂います。音響面でも、船のきしむ音、遠くから聞こえる感染者の叫び声、静寂の中で響く足音が恐怖を増幅させます。

マヌエラ・ベラスコの演技が支える人間ドラマ
『REC レック4 ワールドエンド』を語る上で欠かせないのが、やはり主演のマヌエラ・ベラスコの存在です。彼女は1作目から一貫してアンヘラ・ビダル記者を演じ続けており、本作でもその演技力を存分に発揮しています。
1作目でアンヘラ・ビダル記者(マヌエラ・ベラスコ)は、テレビ局のリポーターとして取材に訪れたアパートで、突如として恐怖のパンデミックに巻き込まれました。当初は恐怖に怯えるだけの存在でしたが、シリーズを通じて彼女は成長し、本作では生き残るために戦う強さを見せます。
特に印象的なのは、アンヘラが船内で出会う人々との関係性です。彼女は単独で行動するのではなく、医師や軍人たちと協力しながら生き延びようとします。この過程で生まれる信頼関係や、仲間を失った時の悲しみが、マヌエラ・ベラスコの繊細な演技によって丁寧に描かれています。
ホラー映画はしばしば、恐怖演出や派手なゴア表現に重きを置きがちですが、本作は人間ドラマとしての側面も大切にしています。アンヘラがどのように成長し、最終的にどのような選択をするのか──この物語の核心を支えているのが、マヌエラ・ベラスコの演技なのです。
物語構造とシリーズ全体の中での位置づけ
本作の物語構造は、比較的シンプルな三幕構成です。序盤でアンヘラ・ビダル記者(マヌエラ・ベラスコ)が船に搬送され、中盤でウイルスが船内に拡散し、終盤で生き残りをかけた戦いが展開されます。テンポに関しては、序盤はキャラクター紹介や状況説明にやや時間が割かれますが、中盤以降は一気に緊張感が高まり、息つく暇もない展開が続きます。
シリーズ全体との繋がりで見ると、『REC レック4 ワールドエンド』は、1作目から続くアンヘラ・ビダル記者(マヌエラ・ベラスコ)の物語の終着点を示しています。シリーズ全作を通して観ることで、より深い感動を得られるでしょう。ただし、本作単体で観た場合、シリーズを知らない人にとっては、登場人物やウイルスの背景が十分に説明されないため、理解しづらい部分があるかもしれません。本作はシリーズファンのために作られた完結編だと言えます。
ただし、POV映像から通常撮影へと変化したことで、他のホラー作品との差別化が薄れてしまったのも事実です。1作目や2作目が持っていた、POVならではの生々しい恐怖体験、カメラを通して感染者と対峙する緊迫感、逃げ場のない空間でのリアルタイムの恐怖がゾンビパニックホラーとしての『REC レック』シリーズの大きな特徴でした。
しかし本作では、通常の映画的な演出が採用されたことで、『バイオハザード』シリーズや『ワールド・ウォーZ』(2013年)のような大作ゾンビ映画、あるいは『28週後…』(2007年)のようなパンデミックホラーと似たような印象になってしまいました。洋上の船という閉鎖空間を舞台にした点では『ゴースト・シップ』(2002年)や『トライアングル』(2009年)といった作品も思い起こされますが、これらとの明確な差別化も難しくなっています。
特に残念だったのは、シリーズ独自の個性であるPOVカメラを持つ人物の視点で体験する「自分が感染現場にいる」かのような臨場感が失われてしまったことです。この要素こそが、『REC レック』シリーズを他の多くのゾンビ映画やパンデミックホラーから際立たせていた最大の武器だったのですから。
まとめ:シリーズファンへ捧げる完結の物語
ホラー映画『REC レック4 ワールドエンド』は、アンヘラ・ビダル記者(マヌエラ・ベラスコ)の物語を完結させる作品として、RECシリーズファンには必見の一作と言えるのではないでしょうか。POV映像から通常撮影へのシフトは賛否が分かれるものの、キャラクターの内面と成長を丁寧に描くという意味では成功していると言えます。
洋上の軍用船という新たな舞台設定は、閉塞感と絶望をさらに増幅させ、ホラー映画としての恐怖をしっかりと提供しています。マヌエラ・ベラスコの演技力が支える人間ドラマも見どころであり、単なるパニックホラーを超えた深みを持つ作品となっています。
ウイルスの謎がすべて解明されるわけではありませんが、シリーズを追いかけてきたファンにとって、本作は感慨深い完結編となるでしょう。恐怖と絶望の中で成長し、最後まで戦い抜いたアンヘラの姿は、きっと心に残るはずです。



