映画
アンダーニンジャ:アクションは一流、物語は寒い内輪ノリ

Score 2.5

花沢健吾の人気漫画を実写化した映画『アンダーニンジャ』は、現代日本に密かに存在する忍者組織と、そこから離反した「アンダー忍者」と呼ばれる反逆者たちの戦いを描くアクション作品です。福田雄一監督が手がけた本作は、優れたアクションシーンと実力派キャストの熱演という光を持ちながら、同時に監督特有のコメディ演出が原作の世界観と衝突し、作品全体のバランスを崩してしまった印象を受けました。

原題
Under Ninja
公式サイト
https://underninja-mv.com/

©2025 映画「アンダーニンジャ」製作委員会

公式サイトSNS
監督
登場人物
雲隠九郎(くもがくれ くろう)

Actor: 山﨑賢人

他の作品:

忍者組織「NIN」の末端忍者。重要な“忍務”を任されて物語の中心となる主人公。

野口

Actor: 浜辺美波

他の作品:

九郎と関わる女子高校生。物語に人間ドラマを添える存在。

加藤

Actor: 間宮祥太朗

他の作品:

忍者組織の一員として活躍。

鈴木

Actor: 白石麻衣(しらいし まい)

編集者であり忍者としての顔も持つ女性。

吉田 昭和(よしだ あきかず)

Actor: 佐藤二朗

他の作品:

売れない歴史小説家として登場。

配給会社
制作会社

ここがおすすめ!

  • 田渕景也によるアクション演出
  • 山崎賢人の新境地 熱血系ではない脱力した演技が新鮮
  • 福田監督特有のコメディ演出が、物語の流れを頻繁に分断
  • 浜辺美波がどうしても女子高生に見えない

あらすじ

現代の日本には、まだ「忍者」が存在していた。終戦後、GHQによって解散を命じられたはずの忍者組織「UN」は、水面下で活動を続け、今もなお約20万人の忍者が国内に潜伏している。その一方で、組織から離反し独自の活動を行う「アンダー忍者」と呼ばれる反逆者たちも暗躍していた。 下忍の雲隠九郎(山崎賢人)は、上司の猪ノ木(賀来賢人)から新たな任務を受けます。それは、とある高校に潜入し、アンダー忍者を探し出すというものでした。普通の高校生として学校に溶け込みながら、九郎は密かに調査を開始します。 しかし、平穏に見えた学校には、想像を超える陰謀と危険が潜んでいました。次第に明らかになる驚愕の真実。果たして九郎は、任務を完遂することができるのか──。

映画『アンダーニンジャ』公式サイト

映画『アンダーニンジャ』を語る上で避けて通れないのが、福田雄一という監督の存在でしょう。実写映画『銀魂』シリーズや『勇者ヨシヒコ』シリーズで一世を風靡し、独自のコメディセンスで多くのファンを獲得してきた福田監督です。

本作においても、その傾向は如実に表れました。予告編を見た段階では、従来の福田節を抑え、原作の持つシリアスな世界観を重視した作りになるのではないかという期待がありました。確かに、アクションシーンや美術面では一定の水準を保っており、「福田雄一監督作品としては」比較的映画らしい仕上がりになっていると言えます。

しかし蓋を開けてみれば、やはり随所に挿入される福田流のギャグシーンが、作品全体の流れを分断してしまっている印象を受けました。

原作について

映画『アンダーニンジャ』の原作は、花沢健吾による漫画作品です。2018年から講談社の『ヤングマガジン』にて連載が開始され、2025年1月現在も連載が継続している人気作品となっています。

花沢健吾は、映画『アイアムアヒーロー』の原作者としても知られる漫画家です。『アイアムアヒーロー』は2009年から2017年まで連載され、ゾンビパニックものとして圧倒的な支持を獲得しました。2015年には佐藤信介監督によって実写映画化され、R18指定という攻めたレーティングながら興行的にも成功を収めています。

『アンダーニンジャ』は、花沢健吾が『アイアムアヒーロー』連載終了後に手がけた新作として注目を集めました。現代日本に約20万人の忍者が潜伏しているという斬新な設定と、シリアスなアクションとブラックユーモアを融合させた作風が特徴です。原作漫画は、かなりグロテスクな描写や暴力表現も含む大人向けの内容となっており、花沢健吾特有のダークな世界観が展開されています。

アンダーニンジャ
タイトル
アンダーニンジャ
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2023年にはテレビアニメ化もされており(全12話)、アニメ版では原作の持つ独特の雰囲気を比較的忠実に再現していたと評価されています。今回の実写映画化は、アニメ化に続くメディアミックス展開の一環として位置づけられますが、福田雄一監督という選択により、原作やアニメ版とは大きく異なる方向性の作品となりました。

花沢健吾の作品に共通するのは、一見コミカルに見える設定の中に、人間の本質的な弱さや社会の矛盾を鋭く描き出す点です。『アンダーニンジャ』も例外ではなく、忍者という非日常的な存在を通じて、現代社会の歪みや人間関係の複雑さを浮き彫りにしています。しかし映画版では、こうした原作の持つ深みが十分に表現されているとは言い難い仕上がりとなってしまいました。

アクションシーンの素晴らしさ

映画『アンダーニンジャ』で最も評価すべき点は、間違いなくアクションシーンの完成度の高さです。アクション監督を務めた田渕景也は、福田監督作品に何度も参加しているベテランですが、本作ではその真価を存分に発揮しています。

特に印象的だったのは、終盤での刀を使った戦闘シーンです。山崎賢人演じる九郎や忍者メンバーが、日本刀を手に敵と対峙する一連のアクションは、刀同士がぶつかり合う音、刃の軌跡、そして演者の息遣いまで、すべてが生々しく伝わってくる演出でした。

これはまさに田渕景也ならではのものでした。派手すぎず、かといって地味すぎない、現実世界に忍者が存在したらこう動くだろうという絶妙なバランス感覚が、作品に説得力を与えています。

キャストの奮闘と演出上の課題(特に浜辺美波の扱い方)

キャスティング面では、本作は実力派俳優に恵まれていました。主演の山崎賢人は、これまでの『キングダム』や『今際の国のアリス』で見せてきた熱血系の演技とは一線を画す、脱力したトーンの演技を披露しています。

非常に残念だったのが浜辺美波の扱い方です。浜辺美波といえば、『シン・仮面ライダー』や数多くのドラマで実力を証明している若手トップ女優の一人ですが、本作では完全にコメディリリーフとして消費されてしまっている印象を受けました。

まず根本的な問題として、浜辺美波がどうしても女子高生に見えないという点があります。彼女の持つ大人びた雰囲気と、高校生という設定のミスマッチが、キャラクターへの没入を妨げてしまいました。これは彼女の演技力の問題ではなく、キャスティングの段階での判断に疑問が残りますね。

特に問題だと感じたのは、いわゆる「鼻くそシーン」です。九郎が彼女に「顔に鼻くそがついてるぞ」と告げ、浜辺美波演じるキャラクターが自分の顔を何度もパタパタと叩くという長回しのシーンがあるのですが、これが体感で非常に長く感じられました。

効果音として「パイパイパイ」という音が付けられ、山崎賢人が「まだまだ」と繰り返す。このシーンが一体何を狙っているのか、正直理解できませんでした。しかもこのシーンは1回では終わらず、2回も繰り返されます。2回目はさらに長く、浜辺美波自身が笑いを堪えきれずに笑ってしまっている様子も映り込んでいました。

美しい女優に変顔をさせることで笑いを取るという手法は、福田監督の十八番かもしれません。しかし、それは俳優の魅力を引き出す演出なのでしょうか。浜辺美波ほどの実力派女優を、このような形で消費してしまうのは、あまりにも勿体ないと感じました。

また、彼女が演じるキャラクターがどういう人物なのか、最後まで掴めませんでした。九郎に対して「邪魔なんだけど」と言い放ったかと思えば、いつの間にか好意を抱いているような描写もある。気絶した時にはプロレスラーのような顔芸をさせられ、寝ている時に九郎と目が合うと白目を向く。こうした演出の意図が全く理解できませんでした。

ギャグシーンが物語を分断する。内輪ノリの功罪

映画『アンダーニンジャ』において最大の問題点は、ギャグシーンが物語の流れを完全に分断してしまっている点です。

福田監督の作品では、「アドリブ風演技」がしばしば見られます。俳優たちが、台本にはないであろうアドリブを繰り出し、共演者がそれに対して素で笑ってしまう。これは深夜ドラマ『勇者ヨシヒコ』の頃には新鮮で面白かったかもしれません。しかし、映画という媒体で鑑賞している観客に対して、この手法は適切ではないように思えました。

AIで作成したイメージ画像

映画『アンダーニンジャ』の問題点は、「振り」が一切ないまま、内輪ノリだけが展開されてしまっている点です。

例えば冒頭の佐藤二朗のシーンを見てみましょう。彼は売れない小説家役で、白石麻衣演じる編集者に原稿を全て却下され、「全部書き直してください」と言われます。すると佐藤二朗が「なんですと」「なんですと」「なんですと」と繰り返すのですが、なぜこのシーンが面白いと思えるのか分かりませんでした。

彼がどれだけ苦労して書いた原稿なのか、どんな思いで編集者を待っていたのか、そうした文脈が一切描かれていないため、ただ佐藤二朗が変な言い方をしているだけのシーンにしか見えません。笑えるとしたら、それは「佐藤二朗を知っているファン」だけです。

福田監督の作品を何度も見てきた人、佐藤二朗のこうした演技を「福田作品らしい」と感じて楽しめる人にとっては、これは面白いのかもしれません。しかし、初めて福田作品を見る人、あるいは原作『アンダーニンジャ』のファンにとって、この演出は受け入れられるものなのでしょうか。

物語の核心が見えない学校パートの混乱

映画『アンダーニンジャ』において、私が最も困惑したのは「今、何が起きているのか分からない」という点でした。

序盤の設定説明部分では、九郎が学校に潜入し、アンダー忍者を探し出すというミッションが提示されます。この時点では非常にワクワクしました。学校という閉鎖空間で、誰にもバレないように忍者活動をしながら、敵を見つけ出していくスリリングな展開を期待したのです。

しかし実際には、九郎は全く隠れません。透明化の忍術のようなものを教室で堂々と使いますし、いじめの仲裁にも介入します。校舎の壁を忍者のように登っているところを、生徒たちにスマートフォンで撮影されてもいます。

「忍者なのに隠れていない」という矛盾が、物語全体を曖昧にしてしまっている印象を受けました。もしかしたら原作漫画では、この矛盾に対する説明や意図があるのかもしれません。しかし映画では、その意図が全く伝わってきませんでした。

さらに混乱したのは、学校で殺戮が始まるシーンです。誰が誰を襲っているのか、なぜ襲っているのか、何が目的なのか?これらが全く整理されないまま、アクションシーンだけが展開されていきます。

ギャグシーンで疲弊してしまったせいで、物語を追う集中力が削がれたのか、それとも単純に脚本の構成が分かりづらいのか。いずれにせよ、「今、何が起きているのか分からない」まま映画が進行していく体験は、非常にストレスフルでした。

クリーピーナッツの主題歌と劇中音楽の魅力

クリーピーナッツによる主題歌「ドッペルゲンガー」は、本作のために書き下ろされた楽曲で、エンドロールで流れるこの曲は、劇中のシーンとリンクするように構成されています。歌詞の中に「往復ビンタ」という言葉が出てくる部分では、浜辺美波が自分の顔をパタパタと叩くシーンが映し出されるという演出が施されていました。

この演出が、映画を見た上でクリーピーナッツが歌詞を書いたのか、それとも先に曲ができていて、それに合わせて映画のシーンを作ったのかは正直なところ、判断がつきません。いずれにせよ、「ドッペルゲンガー」という楽曲自体は非常に素晴らしく、映画を見終わった後も耳に残る名曲だと思います。

まとめ:才能ある俳優とスタッフが報われない作品

映画『アンダーニンジャ』は、正直コメディ要素が全く噛み合わなかった作品だと感じました。

田渕景也によるアクション演出は素晴らしく、山崎賢人をはじめとする俳優陣の演技も光っていました。花沢健吾という原作者の持つ世界観も、本来であれば映画映えするはずのものです。クリーピーナッツによる主題歌や劇中音楽も、作品を盛り上げる力を持っていました。

しかし、福田雄一監督特有のコメディ演出が、これらすべてを台無しにしてしまったように思います。内輪ノリのギャグ、長すぎるアドリブシーンが物語の流れを分断し、観客を置き去りにしているのが印象です。

もちろん、本作を楽しめた観客もいるでしょう。福田監督のファンであれば、この作風を受け入れられるかもしれません。しかし、原作ファンや、映画体験を求める観客にとって、本作は残念ながら期待を裏切る結果となってしまう作品でした。

各サイトのレビュースコア

花沢健吾の原作を実写化した『アンダーニンジャ』は、「忍者は今も日本の地下に生きている」という荒唐無稽な設定を、徹底して脱力的かつ陰鬱なトーンで描く異色作だ。
本作はアクション映画としても、コメディとしても、非常に評価が割れる。その割れ方自体が、この作品の性格を雄弁に物語っている。

プラットフォーム別傾向とレビューコメント

IMDb (5.6 / 10)

  • 「日本のサブカルチャー特有の『脱力感』がアクションと混ざり合っていて興味深い」

  • 「忍者映画というよりは、奇妙な現代劇。国際的な視点で見ると、設定のディテールに説明不足を感じる」

  • 「ビジュアルやガジェットの作り込みは評価できるが、テンポが独特すぎる」

Rotten Tomatoes

  • Critics 55 / 100:「原作のシュールなトーンを実写に落とし込む努力は見られるが、批評家にはその“軽さ”が好悪を分ける」

  • Audience 68 / 100:「山﨑賢人の新境地」や「アクションシーンの意外なキレ」を楽しむファン層が支えている。

映画.com 2.9 / 5 | Filmarks 3.1 / 5(国内辛口傾向)

  • 「福田監督特有のギャグ演出が、原作の持つドライな空気感とぶつかっている印象」

  • 「九郎(山﨑賢人)の『やる気のない最強感』は再現度が高いが、映画としての起伏に欠ける」

  • 「アクションシーンのVFXやハイテク装備の描写は、日本映画としてはかなり攻めている」

総評:娯楽作か、それとも現代の寓話か

『アンダーニンジャ』は、非常に評価が分かれる「劇薬」のような作品だ。 従来の忍者アクションに期待する「派手なカタルシス」を意図的に排除し、どこか淡々と、そしてシュールに物語が進行していく。

「日常に潜む非日常」を徹底したロー熱量で描くスタイルは、 福田雄一監督のパブリックイメージである「爆笑コメディ」を期待した層には肩透かしを与え、一方で原作のニヒルな精神性を愛する層には一定の評価を得ている。

本作は、特定の批評家層に受けるアート映画でも、万人受けする超大作でもない。 むしろ、「現代日本という退屈な戦場」をニヤニヤしながら眺める、極めてニッチで贅沢な観客向けのポップコーン・ムービーといえるだろう。

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