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ウィキッド 永遠の約束:エルファバとグリンダ、ふたりの魔女が辿り着いた”永遠の約束”とは何か

Score 3.8

「善い魔女」か「悪い魔女」か。あなたがオズで信じてきたすべての物語は、本当に真実だったのか。 20年以上ブロードウェイで愛され続けてきたミュージカル『ウィキッド』。その映画化2部作がついに完結を迎えます。「オズの魔法使い」を知っている人には驚きの再解釈として、知らない人には純粋なファンタジー・ミュージカルとして楽しめる本作。圧倒的なスケールと情感をもって紡がれる、ふたりの魔女の最終章です。

原題
Wicked: For Good/Wicked: Part Two
公式サイト
https://wicked-movie.jp/

© 2025 Universal Pictures

公式サイトSNS
監督
登場人物
エルファバ

Actor: シンシア・エリヴォ

他の作品:

「西の悪い魔女」として追われながらも、動物たちの自由と真実のために戦い続ける緑の肌の魔女。

グリンダ

Actor: アリアナ・グランデ

他の作品:

「善い魔女」として人気を享受しながら、親友との断絶と自己欺瞞に苛まれる。

フィエロ

Actor: ジョナサン・ベイリー

他の作品:

グリンダの婚約者でありながら、エルファバへの愛を断ち切れないオズの王子。

オズの魔法使い

Actor: ジェフ・ゴールドブラム

他の作品:

オズを支配する虚飾の権力者。魅力的なカリスマとどこか掴みどころのない人物像で、プロパガンダを操る道具として機能させた。

マダム・モリブル

Actor: ミシェル・ヨー

他の作品:

腹黒い魔法学校の学長。

配給会社

ここがおすすめ!

  • シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデによる魂を揺さぶる歌声
  • 前作のアカデミー賞受賞(衣装デザイン賞・美術賞)もうなずける圧倒的なビジュアル
  • 「オズの魔法使い」の登場人物との思わぬ繋がり
  • 女性どうしの友情・葛藤・再生を描いた物語が好きな方

あらすじ

「悪い魔女」として民衆の憎悪を一身に受けながらも、動物たちの権利のために孤独な戦いを続けるエルファバ(シンシア・エリヴォ)。一方「善い魔女」として輝かしい名声を手にし、フィエロ(ジョナサン・ベイリー)との婚約を控えるグリンダ(アリアナ・グランデ)は、かつての親友との断絶に深い影を落としていました。マダム・モリブル(ミシェル・ヨー)と魔法使い(ジェフ・ゴールドブラム)が作り出したプロパガンダが支配するオズに、カンザスからひとりの少女ドロシーが降り立ちます。彼女の到着をきっかけに、エルファバとグリンダは再び運命の交差点へと引き寄せられ、ふたりは最後の決断を迫られます。

映画『ウィキッド 永遠の約束』公式サイト

映画ミュージカル・ファンタジー『ウィキッド 永遠の約束』は、複数の原作を持つ多層的な物語です。初めてこの世界に触れる方も、前作を観た方も、以下の背景知識を押さえておくと物語の奥行きがいっそう豊かに広がる映画でしたので、あらためて「オズの物語」と「ウィキッド」という作品の魅力を語りたいと思います。

AIで作成したイメージ画像

はじめてオズの世界に触れる方へ物語をより深く楽しむための背景知識

原作の三層構造――小説・ミュージカル・映画

映画ミュージカル・ファンタジー『ウィキッド 永遠の約束』は、2003年に初演されたブロードウェイ・ミュージカル『ウィキッド』の映画版2部作の完結編です。ミュージカルの作曲・作詞はスティーヴン・シュワルツ、脚本はウィニー・ホルツマンが手がけました。さらにその大元となる原作小説はグレゴリー・マグワイアが1995年に発表した『オズの魔女記(原題:Wicked: The Life and Times of the Wicked Witch of the West)』。映画はミュージカル版を主軸として脚色されており、原作小説とは相当に異なる内容となっています。


映画『オズの魔法使』のあらすじ

カンザスの少女ドロシーは竜巻に巻き込まれ、魔法の国オズへ降り立つ。偶然にも「東の悪い魔女」を倒してしまい、故郷へ戻る方法を求めてエメラルドシティへの旅に出る。かかし・ブリキの木こり・臆病なライオンとともに黄色いレンガの道を歩むが、強大な「西の悪い魔女」が行く手を阻み続ける。魔法使いの正体は詐欺師だったが、ドロシーは魔女を倒してついに故郷へと帰還する。

本作につながる主要キャラクター

映画ミュージカル・ファンタジー『ウィキッド 永遠の約束』は、1939年公開の『オズの魔法使』と世界観を共有しています。おなじみのキャラクターたちがエルファバやグリンダの物語と予想外のかたちで交差します。

キャラクター『オズの魔法使』での役割『ウィキッド 永遠の約束』との繋がり
ドロシーカンザスから竜巻でオズに降り立った少女。黄色いレンガの道を歩みエメラルドシティを目指す旅の主人公。マダム・モリブルが起こした竜巻でオズに降り立つ。その到着がエルファバの運命を決定的に動かすきっかけとなる。
かかし脳みそを持たないと嘆きながらも知恵を発揮する旅の仲間。重要な局面で判断を下す。ある人物がかかしの姿に変えられる。その正体はエルファバと深い縁を持つ人物。
ブリキの木こり呪いで全身がブリキになり、心を失ったと信じる木こり。旅を通じて思いやりを示す。呪いの魔法によってブリキへと変えられた人物の誕生秘話が本作で明かされる。
臆病なライオン百獣の王でありながら勇気を持てずにいるライオン。勇気を求めてドロシーたちの旅に加わる。前作でエルファバが逃がした子ライオンが成長した姿として登場。皮肉にも彼女の敵へと回る。

エルファバはなぜ「悪い魔女」にされたのか

エルファバはもともと、緑色の肌を持つために生まれながらに偏見と差別を受けてきた少女でした。しかし彼女の魔法の才能に目を留めたオズの魔法使いは、エメラルドシティへ招き、自らの片腕にしようと画策します。ところがエルファバは、魔法使いが動物たちを言葉を奪いながら迫害していた真実を目の当たりにし、その不正義に真っ向から反旗を翻します。

なぜ動物たちは虐待されているのか

『ウィキッド』の世界における「動物(Animal)」は、人間と同じように言葉を話し、思考し、社会に参加できる存在です。ところが魔法使いが権力を握る以前から、動物たちは少しずつその権利を剥奪されてきました。話すことを禁じられ、職を追われ、やがてはオズの社会から排除されていきます。

ふたりが語る「For Good」の重みとエルファバとグリンダの絆

AIで作成したイメージ画像

「エルファバとグリンダの絆」について問われたグリンダ役のアリアナ・グランデは、前作で多く描かれた友情の根幹が本作でもさらに深く試されると語っています。どれほど離れ、それぞれ別々の道を歩もうとも、ふたりの愛の本質は変わらない——切ないけれど美しい絆だと言葉を選びました。受け入れること、愛すること、そして手放すことを同時に抱えるこのふたりの関係が、映画ミュージカル・ファンタジー『ウィキッド 永遠の約束』の感情的な支柱であることが、改めて伝わってきます。

そしてシンシア・エリヴォは「物語には真実だけでなく、まだ知られていない側面がある」と語り、人生の岐路で何が起きたかを丁寧に描くことで、観る人自身の視点も変わっていくという手応えを話しています。

なんといってもクライマックスを飾る「For Good」についてアリアナは、ふたりがともに背負ってきたものの重さに触れながら、ある意味「一緒に地獄を経験してきた」からこそ最後に交わせる別れの歌だと語っています。愛する相手を失うこと、ともに築いた確かな関係を手放すことの痛みと、それでも感謝を伝えられる瞬間があることの幸せ——その矛盾した感情の全てをこの一曲に込めたと言います。

ジョン・M・チュウ監督が語る2部作完結への覚悟

監督のジョン・M・チュウは、2部目において各キャラクターの感情的核心を見つめ直すことに最も力を注いだと語っています。前後編を同時に撮影したことで、前編のキャラクターたちが後編でどのように変化し成長するかを長い視野で設計できたと振り返ります。

監督が特にこだわったのは「正直な人間の姿を映すこと」でした。エルファバとグリンダそれぞれの視点から物語を誠実に展開させることで、2部作全体が一つの完結した物語として成立するよう丹念に構築しています。2部目で新たに加わるキャラクターたちの感情も等しく丁寧に扱い、誰ひとり置き去りにしない姿勢が全編を通じて貫かれています。

「For Good」へと向かうラストシーンのカメラワークには特別な思いが込められており、ふたりの女性を軸に回り続けるカメラが最終的にふたりをフレームの外へ解き放つ演出は、監督の意図が色濃く反映されています。別れを告げるシーンであると同時に、ふたりをオズという世界から解放するという意味も重ねた、格調高い幕引きでした。

友情の継承から亀裂、そして最後の決断まで――物語全体を通じて

映画ミュージカル・ファンタジー『ウィキッド 永遠の約束』は、前作『ウィキッド ふたりの魔女』(2024年)の続編にして最終章です。

前作はブロードウェイミュージカル映画化作品として全米歴代最高のオープニングを記録し、第97回アカデミー賞では作品賞を含む10部門にノミネートされ、衣装デザイン賞と美術賞を受賞しました。本作もその勢いを引き継ぎ、全米初登場No.1・週末3日間で1億4700万ドルという驚異的な数字を叩き出しています。

前作ラストで「Defying Gravity」を高らかに歌い上げたエルファバ(シンシア・エリヴォ)とグリンダ(アリアナ・グランデ)の姿は、きっと鑑賞したものなら記憶に深く刻まれていたはずです。

本作はその直後から始まるような感覚で幕を開け、エルファバが「西の悪い魔女」として権力の標的にされ、グリンダが「善い魔女」の仮面を被りながらも内なる葛藤に揺れる様子を描き出します。

本作が最も鮮やかに機能するのは、「プロパガンダと真実」というテーマを描く前半部分です。エルファバは「ウィキッド・ウィッチ(邪悪な魔女)」という名称を強制され、本名すら呼ばれることを禁じられます。権力が言葉を支配し、レッテルを繰り返し貼り続けることで民衆の認識を操る――この描写はファンタジー世界に留まらず、現代社会に生きる私たちの目にも痛々しいほどリアルに映りました。

前作ではエルファバが物語の中心でしたが、本作はむしろグリンダの成長物語といえるでしょう。名声と人気に溺れながら道徳的羅針盤を少しずつ狂わせていく姿は、「愛されること」への渇望と自己欺瞞という人間の弱さを正直に映し出しています。アリアナ・グランデはその期待に応え、喜劇的なテンションと深い悲しみを見事に両立させていました。

クライマックスに向けて、映画ミュージカル・ファンタジー『ウィキッド 永遠の約束』は「オズの魔法使い」という誰もが知る名作の”もうひとつの真実”を提示することです。ブリキの木こり、かかし、臆病なライオンといったキャラクターが実はエルファバの周囲の人物たちであったという設定は、知る人には大きな興奮をもたらします。

しかしながら後半に進むにつれ、この設定がかえって物語の足枷にもなっている印象でした。「オズの魔法使い」の出来事と整合性を取るために詰め込まれた展開の多さは物語のテンポを崩し、各キャラクターの感情的な結末が急いで処理されていく慌ただしさがあります。

舞台ミュージカル版がウィンクとユーモアで乗り越えていた問題を、映画は”実際にあった出来事”として誠実に描こうとするがゆえに、筋書きの綻びが目立ってしまうのです。

ストーリー重視で観ると、もうひとつ気になる点があります。エルファバが「悪い魔女」として民衆に恐れられる姿と、信念のために戦い続ける姿の間で、その行動や選択に揺れが生じているように感じました。正義のために立ち上がる場面と、傷つき逃げ込む場面が交互に繰り返され、キャラクターの軸がつかみにくいという印象を受けたのは事実です。これはエルファバの人間らしさとも解釈できますが、物語の牽引力という観点からは一貫性に欠ける側面があったように思いました。

そして「For Good」へと収束するふたりの最後の別れは、2部作全体の重みを背負って胸に迫るものがありました。鑑賞後の反応が二極化するのも頷けます。ミュージカル原作ファンや前作から深く感情移入してきた方々は、クライマックスで感無量の涙を流される方も多い一方、物語の論理構造やエルファバの行動原理に物足りなさを感じる方にとっては少し距離が生まれる作品とも感じました。作品への愛着の深さが、そのまま評価の分かれ目になっているのかもしれません。

知れば知るほど面白い、制作の舞台裏を覗けるメイキング映像

映画ミュージカル・ファンタジー『ウィキッド 永遠の約束』は公開にあわせて、多彩なメイキング映像と深掘りインタビューを公開しています。本編を観たあとにこれらを追いかけると、スクリーンの向こうにある職人たちの執念と情熱がいっそう鮮やかに浮かび上がります。

メイキングで明かされた4つの驚き

  • 「For Good」はもともとエルファバのソロだった
  • エリヴォが「新曲を撮影したとき、クルー全員が泣いていた」
  • グリンダの孤独——アリアナ・グランデが語った華やかさの裏側
  • デジタル版に収録された「幻の削除シーン」

本作はエルファバとグリンダがそれぞれの運命を歩み出す、より成熟した感情の旅を描きます。立場や距離に阻まれながらも、二人の絆がいかに深く、互いの人生を「永遠に(For Good)」変えたのかが物語の核となります。また『オズの魔法使い』へと繋がる、かかしやブリキの木こり達の知られざる誕生秘話も必見。自分を信じて戦い抜く二人の姿が、壮大なスケールで完結を迎える感動のオリジンストーリーです。

単なる台詞だけでなく全楽曲のボーカルを撮影現場で生録音することにこだわり、スタジオ級の設備で臨んでいます。俳優の感情に合わせた歌唱の変化を逃さず、カメラワークも生の歌声に合わせて柔軟に調整されました。また、魔法の世界「オズ」らしさを追求し、機械の作動音を劇伴のテンポに同期させるなど、細部まで音楽と融合した没入感のある音響体験を創り上げています。

本作では、学生時代を描いた前編から一転し、大人になったエルファバとグリンダが一生を左右する選択を迫られる姿が描かれます。二人の複雑で繊細な友情(シスターフッド)が物語の核となり、喜びも悲しみも分かち合う「愛よりも難しい関係性」を追求。セットや世界観のスケールも大幅に拡大され、愛や運命、正義といった壮大なテーマが結実する感動の完結編となっています。

オズを現実に刻んだ職人たちの情熱

1億本の花と6000枚のタイルが支えた世界観

プロダクションデザイナーのネイサン・クロウリーは、前作でアカデミー賞を受賞した世界観を継承しつつ、さらなる拡張を試みました。「オズの大地にはいまどう、広い世界を探求するのが今回の課題でした」とクロウリーは語っており、1作目からつながりを感じさせながらも、対立と矛盾の時代としての色彩を新たに加えています。

それは冒頭から始まる黄色いレンガの道には、1億本の黄色いチューリップが使われているという設定が込められています。その道を敷く作業を強いられているのがオズの動物たちという事実は、この世界の権力構造の歪みをさりげなく告発しているようでした。またエメラルドシティには3本の塔がそびえ立ち、上に行くほど対称的にねじれていくアールデコとモダニズムを融合させたデザインが、住人たちの性格を建築として表現しています。

そしてグリンダの結婚式の舞台となる大広間は奥行き約45メートル・幅約15メートルという圧倒的なスケールで建設されました。エメラルドシティを覆う6000枚を超えるタイルは、フランク・ロイド・ライトやカルロ・スカルパにインスピレーションを得た6種類の独自パターンで制作されており、同じ模様が被ることなく一貫した世界観を生み出しています。

エルファバが身を隠すキアモ・コ城は、オズ最古の建造物としてフィエロの一族が代々治めてきた設定。「立派な印象を与えるキアモ・コ城は、まさに悪役が潜む要塞です。しかしその歴史がひもとかれるにつれ、複雑な流れを孕んでいるのがわかってきます」とクロウリーは語ります。迷路状の石の通路とアーチ型の開口部が、幽玄にして地に足のつかない浮遊感を生んでいました。

エルファバの隠れ家は古大樹の梢に設けられた空間です。建てられたというより自然に育ったような佇まいで、大木の枝がベッドの枠を形成し、機能的でありながら独自の温かさを持ちます。「ただ身を隠すという目的を超えて、彼女が自由の象徴を見つけた場所」というクロウリーの言葉通り、抵抗のシンボルとしての深みが宿っていました。

1000人以上が挑んだ視覚効果の極致、そして俳優の肉体的挑戦

本作は視覚効果スーパーバイザーのパブロ・ヘルマンの指揮のもと、1000人を超えるアーティストが2700カットを超える視覚効果ショットを手がけました。しかしこの映画が真に驚異的なのは、デジタルの壁の向こう側だけではありません。

「No Good Deed」でエルファバが炎と空飛ぶ猿の軍団の中を飛翔するシーンを、シンシア・エリヴォは実際にハーネスで空中に吊られ、本物の炎に囲まれながら、地面から約5.5メートル(18フィート)の高さで生歌を披露しました。うつ伏せの状態で空中を「飛行」しながら歌うという、人間の限界に挑む身体的挑戦です。Hollywood Reporterのメイキングレポートによれば、エリヴォはこのシーンのために事前に専用装備での反復訓練を重ね、急上昇と緩降下の感覚を体に染み込ませてから本番に臨んだとのことです。CGが溢れる映画の時代にあって、この種の生身の演技は映像に確かな重力と魂を宿らせていました。

エルファバの飛翔シーンでは、ホウキが彼女の意思のままに動くよう独自のデザインが施されています。魔法の書グリマリーはアニメーション化され、現実の書物が持つ質感を通じてリアリティを演出しました。グリンダのバブルは「The Girl in the Bubble」のシーンで、コンピューターによるモーションコントロールなしで実際のカメラが通過するように錯覚させる長回しで撮影されています。「No Good Deed」では空飛ぶ猿たちの軍団をデジタルで丸ごと生成し、キアモ・コ城を360度にわたって滝もろとも見せつける圧倒的なスケールを実現しました。マダム・モリブルが起こす竜巻は強い魔力と破壊力を持ちながら超自然的な感覚もあわせ持ち、視覚的な衝撃と物語の恐怖が見事に一致していました。

前作から継承された映像美と、125人が奏でる音楽の壮麗さ

前後編を同時撮影したことで、衣装・美術・CGのクオリティは完全に引き継がれています。オズの世界を彩る原色の鮮やかさ、緻密に作り込まれたセットの質感は、前作でアカデミー賞(衣装デザイン賞・美術賞)を受賞した水準をそのままに、後編の暗みと緊張感へとシームレスに接続されています。

音楽面では、スティーヴン・シュワルツの楽曲群が125人編成のオーケストラによって壮麗に甦りました。ただし批評家の多くが指摘するように、本作で追加された新楽曲は前作の「Defying Gravity」「Popular」「What Is This Feeling?」といった名曲群と比べると、初見のインパクトはやや控えめという印象は否めませんでした。それでもクライマックスへ向けて積み上げられる「No Good Deed」から「For Good」への流れは、2部作全体を通じて最も胸を打つ場面です。エリヴォとグランデの声がひとつに重なる瞬間の感情のうねりは、画面越しにも確かに届いてきました。

2部作同時撮影という前代未聞の製作規模

調べてみると前後編合わせて160日以上に及ぶ撮影、3億ドルとも伝えられる合計製作費。これほどの規模の2部作を並行制作するにあたり、チュウ監督は両作品の全シーンを横断的に管理する「戦略室(war room)」を設置しました。厳重なセキュリティで守られたその部屋には、壁一面にシーンごとのドローイングと精巧なセットモデル、各シーンの色彩グラデーションが並べられました。前作の最後の40分が長い夕暮れの光のなかで展開するのに対し、後作のほぼ全編が暗闇に包まれるという対比も、この戦略室で一元管理されたものです。「それはまるで頭が狂いそうな作業だった」と監督自身が語るほどの複雑さを、この緻密なシステムが支えていました。

感情そのものを動きに変えた振付とスタントの詩学

振付を担当したクリストファー・スコットは、「動きで全てを伝える」という信念のもと、キャラクターの感情的核心と身体的表現を一致させることに挑みました。「No Good Deed」でエルファバが燃えるような動作で巨大な柱を飛び跳ねるシーンについて、スコットは「美しく街を舞う姿ではなく、燃えたぎった怒りでした」と語っています。

クライマックスの「For Good」での振付は対照的に、ふたりの身体はほとんど動きません。さよならを告げる人と人が踊るイメージを意識し、「じっとしているのも振付なんです。ほんの些細な動作が、ものを言う」というスコットの言葉には、映画音楽・ミュージカルの文法を超えた身体表現への深い洞察が宿っています。ちょっとした傾き方や振り向き方が、思いきりソフトなバレエのように感じられる——その研ぎ澄まされた静けさが、2部作の最後にふさわしい余韻を生み出していました。

ジェフ・ゴールドブラムが歌う「Wonderful」では、ケレン味なめらかなジャズを融合させた独特の振付が構築されています。「ジェフの動作には固有の遊びと意外性があって、ジャズがそのまま人間になったような感じです」とスコットが称えるように、ゴールドブラムの個性を最大限に生かした、ほかの誰にも真似できない場面となっていました。

まとめ:20年の歴史を背負った2部作が、ついに幕を閉じた

映画ミュージカル・ファンタジー『ウィキッド 永遠の約束』は、ブロードウェイ・ミュージカル『ウィキッド』の映画化2部作の完結編です。

2部作として通して評価するならば、これは世界的名作ミュージカルの映画化として十分でした。なぜなら圧倒的なプロダクションデザイン、シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデの類稀な歌唱、1000人超の視覚効果チームが生み出した映像美——それらは2部作を通じて揺るぎない水準を保ち続けました。物語構造の綻びや、エルファバのキャラクターとしての一貫性への疑問は残るものの、「For Good」のクライマックスが持つ感情的な強度は、あらゆる批判を超えてくるものがあります。

視聴後の感想は二極化するかもしれません。前作から深く感情移入してきたファンにとっては、感無量の涙とともに迎える完璧なフィナーレとなるでしょう。一方でストーリーの論理的な整合性を重視する方には、もどかしさが残る部分もあるかもしれません。それでもこの乖離こそが、映画ミュージカル・ファンタジー『ウィキッド 永遠の約束』という作品の正直な姿です。

「悪い魔女」として歴史に刻まれたエルファバが、本当は何を信じ、何のために戦っていたのか。「For Good(永遠に)」という言葉の重さとともに、その問いをぜひご自身で確かめてみてください。


ミュージカル『ウィキッド』について

映画の原点であるブロードウェイ・ミュージカル『ウィキッド(Wicked)』は、2003年10月8日にニューヨーク・ゲルシュウィン劇場で開幕しました。作曲・作詞はスティーヴン・シュワルツ、脚本はウィニー・ホルツマン。2025年現在もブロードウェイで上演が続いており、20年以上にわたってロングランを継続する伝説的な作品です。

🎭 2027年 劇団四季 東京公演が決定

映画『ウィキッド 永遠の約束』の公開と呼応するように、ミュージカル『ウィキッド』が2027年初夏に東京・JR東日本四季劇場[春]で上演されることが決定しました。

2007年に劇団四季で日本初演されて以来、劇団四季のレパートリー作品として上演が重ねられてきた本作。映画で初めてこの世界を知った方にとっては、舞台版ならではの臨場感と生の歌声を体験できる絶好の機会です。公演スケジュールなど詳細は劇団四季公式サイトで随時発表されます。

日本公演情報詳細
公演時期2027年初夏
会場JR東日本四季劇場[春](東京)
上演団体劇団四季

各サイトのレビュースコア

批評家スコアは前作の88%から大きく下がり、物語の完成度に対する批判も散見されました。一方で観客スコアは97%という驚異的な数値を記録しており、ファンの熱狂と批評的評価の間に大きな乖離が生じています。「批評家はやや辛口、ファンは大熱狂」という構図は、本作の性格をよく表しているといえるでしょう。

本ページの情報は 時点のものです。
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ウィキッド 永遠の約束を執筆しました。

時点では劇場公開が終了しております。

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