映画『REBEL MOON』は、主人公コラと銀河のはぐれ者たちが巨大帝国に立ち向かう姿を描くSFアクション。過去を捨てたコラが村を守るため、仲間たちを集めて不可能な戦いに挑む姿が見どころです。パート1 炎の子では、二部作の序章として、ザック・スナイダー監督特有の映像美とアクションが描かれるSF超大作となっています。
- 原題
- Rebel Moon - Part One: A Child of Fire
- 公式サイト
- https://www.netflix.com/jp/title/81759172
- 監督
- 登場人物
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- コラ
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Actor: ソフィア・ブテラ
元帝国軍の兵士で、現在は辺境の農村で静かに暮らしている。過去に大きな過ちを犯し、それを悔いて平穏を望んでいたが、村が母星帝国「マザーワールド」の支配下に置かれたことで再び戦いに巻き込まれる。
- ノーブル提督
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Actor: エド・スクライン
マザーワールドの軍人で、冷酷かつ暴力的な性格の指揮官。住民に無慈悲な支配を強いる。かつての戦争で功績を上げたが、残虐さと権力への執着で恐れられている。
- ガンナー
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Actor: ミキール・ハースマン
農村の青年で、帝国の圧政に恐怖しながらも、コラの決意に感化され反乱に加わる。戦闘経験は乏しいが、誠実で勇気ある性格。
- タイタス将軍
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Actor: ジャイモン・フンスー
かつてマザーワールドに仕えた名将だったが、理不尽な命令に背き失脚。現在は酒に溺れ堕落していたが、コラに説得され再び剣を取る。
- ネメシス
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Actor: ペ・ドゥナ
義手と義足を持ち、赤く光るエネルギーソードを使うサイボーグ剣士。孤高の存在だが、戦う理由を持つ者としてコラの仲間に加わる。
- ダーリアン・ブラッドアックス
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Actor: レイ・フィッシャー
マザーワールドに対して反乱を起こしたレジスタンスの一員。
- デヴラ・ブラッドアックス
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Actor: クレオパトラ・コールマン
コラにスカウトされる戦士でダリアンの姉。
- ジミー
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Actor: アンソニー・ホプキンス
かつての王を護衛する目的で設計された古代のロボット騎士。現在は機能を停止していたが、再び動き出す。哲学的で知的な性格を持ち、時折詩的な言葉を語る。
- 配給会社
ここがおすすめ!
- 圧倒的な映像美とザック・スナイダーの世界観
- 贖罪(しょくざい)をめぐる重厚な人間ドラマ
- 壮大なユニバースの始まりを告げる序章
あらすじ
全世界ランキング首位に輝いたSFファンタジー。「300<スリーハンドレッド>」「マン・オブ・スティール」「アーミー・オブ・ザ・デッド」の監督が、共に戦う仲間を求めて宇宙をかける戦士たちを描く。
公式ウェブサイト
ザック・スナイダー監督が手掛けたNetflixオリジナルアクション大作、『REBEL MOON ー パート1: 炎の子』は、そのスケールの大きさにまず圧倒されます。物語の壮大さ、多種多様な登場人物たち、そしてVFXに代表される映像美は、まさに「超大作」と呼ぶにふさわしい仕上がりです。
本作は二部構成の前編として、広大な宇宙を舞台にしたスペースオペラが描かれます。銀河全体を巻き込むような規模で、多数の惑星が登場し、巨大な国家や連合、そして多様な異星人たちが登場します。ドロイドのようなキャラクターも登場しており、この点も『スター・ウォーズ』を彷彿とさせますね。スペースオペラの代表作には『スター・ウォーズ』や『DUNE/デューン 砂の惑星』が挙げられますが、本作はやはり『スター・ウォーズ』に近い世界観でした。特定の惑星に縛られた運命に翻弄される主人公を描く『DUNE』に対し、『REBEL MOON』は自らの意思で仲間を集めて立ち向かうという点で、『スター・ウォーズ』の冒険活劇に近い印象を受けます。
物語の軸となるのは、平和な村に暮らす主人公が仲間を集め、迫りくる帝国に立ち向かうという構成です。この設定は、黒澤明監督の不朽の名作『七人の侍』を強く連想させます。登場人物たちのキャラクター造形にも、『七人の侍』に登場する侍たちの面影を色濃く感じました。彼ら一人ひとりが社会の枠からはみ出した「アウトロー」であり、何らかの理由で追われていたり、失意の中にいたりします。しかし、村の危機という共通の目的のために集結し、再び戦う道を選ぶのです。これは、『七人の侍』をオマージュした作品でもある西部劇の傑作『荒野の七人』にも通じる雰囲気がありますね。

特に、『七人の侍』との共通点は以下の通りです。
- コラと島田勘兵衛(『七人の侍』): 『七人の侍』では、経験豊富で冷静沈着なリーダーとして侍たちをまとめる島田勘兵衛が、まさにコラに通じるものがあります。コラもまた、過去に軍人としての経験を持ち、村を守るために仲間を集め、指揮を執る役割を担います。その背負った過去と、静かながらも強い決意を秘めた姿は、勘兵衛の「人を率いる」覚悟と重なります。
- 仲間たちの多様性とそれぞれの役割: 『七人の侍』では、それぞれ剣術の腕や性格が異なる侍たちが集まり、個性的なチームを形成します。たとえば、奔放な菊千代、義に厚い久蔵、真面目な勝四郎など、彼らがそれぞれの持ち場で村人たちと交流し、力を合わせて戦いました。『REBEL MOON』でも、コラが集める仲間たちは、元将軍、賞金稼ぎ、反乱軍の戦士、異星人など、出自もスキルもバラバラです。彼らが互いに協力し、それぞれの得意分野を活かして帝国軍に立ち向かう構図は、『七人の侍』の多様な侍たちの役割分担とシンクロする部分が多く見られました。
さらに、宇宙を舞台にした壮大なスペースオペラという点では、『スター・ウォーズ』からの影響を色濃く感じました。特に、「主人公がさまざまな惑星を冒険し、仲間を集める」という点で旧三部作の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』と共通する空気感を覚えます。
総じて言えるのは、『七人の侍』や『スター・ウォーズ』、そして他の未来SF作品の「いいとこ取り」を一気に煮詰めて料理したような作品だということです。そのため、確かに「既視感」は多数あります。悪く言えば「寄せ集め感」があり、オリジナル性という点では少々物足りなさを感じるかもしれません。
そしてこの壮大なスケールと映像美は、やはり大画面でこそ真価を発揮するものです。Netflixオリジナル作品であったため劇場公開されなかったのは残念でなりません。ぜひIMAXなどで体験したかった作品ですね。
構想20年、「スター・ウォーズ」から生まれた新たな物語
『REBEL MOON』は、ザック・スナイダー監督が20年以上も前に、有名な『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ作品としてルーカスフィルムに提案したものが元になっています。採用こそされませんでしたが、監督は構想を長年温め続け、今回Netflixという強力な後ろ盾を得て、全く新しいオリジナル作品として世に送り出しました。
TIME誌に「スナイダー監督はこのプロジェクトを『スター・ウォーズ』シリーズの1本として再構築することを検討していた。しかし、ディズニーが2012年にルーカスフィルムを買収したことを受け、スナイダーは最終的にオリジナル・ユニバースで物語を展開することを決めた。」とあります。
At one point in time, Snyder considered re-engineering the project to become an entry in the Star Wars franchise. But following Disney’s 2012 acquisition of Lucasfilm, the filmmaker ultimately decided to set his story in an original universe.
Rebel Moon: What to Know About Zack Snyder’s Space Epic | TIME

こうした制作背景あり、「どこか『スター・ウォーズ』に似ている」という既視感の正体でした!しかし、本作は単なる模倣ではなく、むしろ「もしザック・スナイダーが『スター・ウォーズ』を監督したら?」というifの世界を形にした作品といえるでしょう。ジョージ・ルーカスが生み出した少年少女向けの冒険活劇とは対照的に、『REBEL MOON』はダークで重厚、かつ大人向けのシリアスな雰囲気で満ちています。このような作風は、スナイダー監督が一貫して描いてきた、神々や英雄たちの苦悩や葛藤に満ちた世界観の延長線上にあるものです。これはザック・スナイダー監督の「ジャスティス・リーグ ザック・スナイダーカット」に近いものを感じました。
コンセプトアートもどこかダークな雰囲気があります。


この感覚は2025年4月から公開された「もし庵野さんがガンダムを制作したら?」という作品である「機動戦士ガンダム ジークアクス」を観た感想に近いかもしれません。

壮大な宇宙の舞台美術とVFX
宇宙の舞台美術やVFX(視覚効果)においても圧倒的な存在感を放っており、「超大作」と呼ぶにふさわしい仕上がりで、観客を広大な銀河の旅へと誘います。
迫力のVFXとスナイダー監督の美学
本作のVFXのクオリティは非常に高く、宇宙船の戦闘シーンや、キャラクターの特殊能力、異星人の動きなどがリアルかつダイナミックに描かれています。ザック・スナイダー監督特有のスローモーションを多用したアクションシーンは健在で、一瞬の動きにも重厚感と美しさが加わり、戦闘の迫力を増幅させています。
また、本作は全体的にダークで重厚なトーンで統一されています。これは、監督の前作である『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』にも通じるもので、単なる明るい冒険活劇ではない、よりシリアスで深みのある世界観を視覚的に表現していました。
美術面で特に印象的だったのは、オリジナルの敵、中でも「クモ」のデザインです。その生物的な不気味さと、メタリックな構造が融合したSF的な造形は、見る者に異質な恐ろしさと同時に、ある種の美しさを感じさせます。
主人公コラの葛藤と、再生への道のり
本作『REBEL MOON』は、派手なSFアクションの陰で、主人公コラの「贖罪(しょくざい)」をめぐる重厚な人間ドラマを描いています。彼女は単なる正義のヒーローではありません。かつては侵略者である帝国「マザーワールド」の兵士として、その手で多くの命を奪い、物語の鍵となる王女を死に追いやったという、消せない過去を背負っています。
辺境の村での穏やかな暮らしは、そんな過去から逃れるための仮初めの平穏に過ぎません。彼女が命を懸けてまで村を守ろうとするのは、単なる善意からではなく、自らの罪を償い、汚された手で何か一つでも正しいことを成し遂げたいという、悲痛な願いからくる「贖罪」があるからです。
またこの物語は、コラが仲間を集める中で、自分と同じように過去に傷を持つ「はぐれ者」たちと出会うことで、より一層深みを増します。酒に溺れる元将軍、復讐心だけで剣を振るう剣士、目的を見失った荒くれ者。社会から弾き出され、それぞれが消せない傷を抱える彼らの中に、コラは自分と同じ「弱さ」や「痛み」を見出すのです。
そして彼らもまた、コラの葛藤に共感し、傷を寄せ合うことで「擬似家族」のような絆を育んでいきます。この仲間集めの旅は、コラが自身の過去と向き合い、他者との絆を通して再び生きる意味を見出していく「再生」の物語でもあるのです。
パート1では、まだその一端が描かれたに過ぎません。しかし、この「贖罪」と「再生」というテーマこそが、『REBEL MOON』という壮大な物語の心臓部であり、今後の展開における最大の見どころと言えるでしょう。
パート2で終わらない、ユニバースへの布石
本作『REBEL MOONー パート1: 炎の子』は、単なる二部作映画の前編というだけではありません。壮大な「ユニバース(※)」の始まりを告げる、重要な土台としての役割を担っています。
まず最も直接的なつながりは、続編である『パート2: 傷跡を刻む者』です。パート1の物語は、仲間を集め、最初の戦いを終えたところで幕を閉じます。多くの謎やキャラクターの過去は未解決のままであり、帝国との本格的な全面戦争はパート2で描かれることが明確に示唆されています。これは、物語の続きが約束された、分かりやすい関係性です。
しかし、このシリーズの本当の面白さは、さらにその先にあります。ザック・スナイダー監督は、Netflixで配信されている本編とは別に、より過激な暴力描写や深いキャラクター描写を含む、レーティングR指定の「ディレクターズカット版(監督が本来意図した形に再編集したバージョン)」の存在を公言しています。これは、かつて『ジャスティス・リーグ』でディレクターズカット版を渇望したファンに応えた監督ならではの試みです。本編と「完全版」を見比べることで、物語やキャラクターへの理解が全く異なるレベルに達するかもしれません。
『REBEL MOON — ディレクターズカット』R指定予告編 – Netflix
さらに、この世界の物語は映画だけに留まりません。各キャラクターの前日譚を描くコミックや、世界観の背景を語るアニメーション作品、さらには協力型のビデオゲームまで、様々なメディアで物語を補完し、世界を広げていく壮大な計画が発表されています。例えば、二刀流の剣士ネメシスの過去はコミックで、といった具合に、各メディアが有機的に連携しているのです。

REBEL MOON: NEMESIS will delve into the story of the Netflix films’ cyborg sword master Nemesis, played on-screen by Doona Bae.
これらの仕掛けは、『REBEL MOON』が単発の映画ではなく、マーベルのMCUのように、様々な物語が共存する巨大なフランチャイズの第一歩であることを示しています。映画本編を楽しみ、さらに深く知りたくなれば、別のメディアでキャラクターの過去を旅することもできる。こうした奥深い世界の構築こそが、本作が未来へ向けて仕掛けた、最大の魅力と言えるでしょう。
※ユニバースとは?
同じ世界や時間軸を舞台に、映画、コミック、ゲームなど、異なるメディアで複数の物語が展開される作品群のことです。
まとめ:壮大なユニバースの始まりを告げる序章
映画『REBEL MOON パート1』は、一つの物語を完結させるのではなく、これから始まる壮大な世界観と今後の展開への「期待感」を提示することに特化した、まさに「序章」と呼ぶべき作品でした。
ザック・スナイダー監督による唯一無二の映像美は観る者を圧倒しますが、その一方で物語の骨格には既視感を覚える部分も多く、評価が大きく分かれる要因となっています。そのため、本作単体での評価は難しく、むしろ続編やディレクターズカット版、コミックといった今後の展開を含めて初めて真価が問われる、壮大なプロジェクトへの「招待状」と言える作品となっていました。
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このページではNetflix Jpで配信中のREBEL MOON ー パート1: 炎の子から執筆しました。
Netflix Jpで配信されている「REBEL MOON ー パート1: 炎の子」のあらすじ、感想、評価を紹介しました。気になる方は、ぜひ下記URLのNetflix Jpからチェックしてみてください!

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