『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』は、2017年に第1期のTVシリーズから続くリコとレブ、そしてナナチの冒険を描いた映画となります。
原作コミックの第4巻途中から第5巻の内容をベースにしているが、単なる映像化にとどまらない。劇場版ならではのオリジナル演出が、随所に散りばめられている映画となっていました。
本作は主要キャラクターを主人公のリコとレグの二人に絞るという構成も、本作の大きな特徴でしたね。通常、登場人物が少ないとストーリーの展開が難しくなりがちですが、この作品はあえてその困難に挑み、二人の絆を深く掘り下げることに成功しました作品と言えるでしょう。
二人の間だけで物語が進むことで、観客は彼らの感情の変化、成長、そして試練をより密接に感じることができました。
TVアニメシリーズは2017年に放送開始
TVアニメ『メイドインアビス』は、2017年に第1期が放送されました。TVシリーズは物語の始まりから、主人公のリコとレグがアビスの深層を目指す過程を丁寧に描いており、アビスへの冒険のプロローグとした内容となっています。さらに、2022年には続編となる『メイドインアビス 烈日の黄金郷』が放送され、アビスのさらに深い階層での新たな物語が展開されました。
原作はWEBコミックから
本作の原作は、つくしあきひと先生による同名の漫画作品です。竹書房のWEBコミックサイト「コミックガンマ」で連載されており、緻密に描き込まれた世界観と、時に残酷なまでにリアルなストーリー展開が魅了的な作品となっています。そしてTVアニメや劇場版は、この原作の世界を忠実に、そして圧倒的なクオリティで映像化したものです。
原作と異なる意味深な演出
本作は、原作コミックの第4巻途中から第5巻の内容をベースにしているが、単なる映像化にとどまらない。劇場版ならではのオリジナル演出が、随所に散りばめられている。

- タイトル
- メイドインアビス 5巻
たとえば、ナナチとボンドルドが話すシーン。原作では他の白笛について言及されるが、映画では意図的にカットされています。これは、新シリーズで初めて登場する重要なキャラクターの情報を、あえて描かないという制作者の意図が感じられる演出でした。
また、ミーティの肉電球が再び点灯するシーンも、映画オリジナルの演出なのかな。この描写は、テレビシリーズを観ていると結構大きな衝撃です。その意味はまだ明かされておらず。これから新シリーズを観る際には、この謎を頭の片隅に置いておくと、さらなる驚きがあるかもしれませんね。
キャラクター苦痛にさせながら生命(いのち)を賛歌させる物語
多々ある冒険ファンタジーの漫画と「メイドインアビス」が一線を画しているのは、作中で描かれる過酷な描写(グロすぎる描写)が、単なるセンセーショナリズムに終わらない点にあることだと思います。それは主人公リコやレグ、ナナチたちがアビスで直面する「呪い」や、痛々しい描写は、一見すると目を背けたくなるかもしれません。
しかし、これらの苦痛は、キャラクターの成長や決意を際立たせるための重要な要素として機能しています。例えば、深い傷を負ったリコが、「まだ動く指がある。冒険は続けられる!」と前向きな姿勢を見せるシーンは、苦しみや悲しみをただ描くのではなく、それを乗り越えてなお生きて前に進む姿は「生命の力強さ」を感じられるシーンです。
アニメーションだからこそ可能な「美」の追求
原作漫画も素晴らしい作品ですが、アニメ版はなんといっても動く画である「アニメーション」というメディアの強みを最大限に活かしています。
これはひとえにインスパイアードの技術力の賜物だと思います。
緻密な背景描写: 光と影のコントラストはアビスの世界観を象徴するものであり、特に朝焼けの光が街を照らす様子は、希望に満ちた物語のテーマを象徴的に表現です。
徹底したディテール: 背景だけではなくメカニックの描写一つとっても、ワイヤーの動きや歯車の噛み合わせに至るまで、細部へのこだわりが尋常ではありません。こうした妥協のない作り込みが、作品全体に説得力とリアリティを与えています。
ボンドルドが示した“歪んだ愛”。
「劇場版メイドインアビス深き魂の黎明」には、観る人に衝撃を与えるトラウマシーンがいくつかあります。特にボンドルドは本作には欠かせないキャラクターです。ボンボルドはナナチだけでなく、本作で娘であるプルシュカが、アビスの呪いの探求という名目の下で、ボンドルドの非道な実験に巻き込まれるシーンが本当にトラウマです。純真な心を持つプルシュカの運命が、本当に心をえぐりました。

他にもボンドルドとの戦いは、リコとレグが心身ともに極限まで追い詰められる壮絶な描写が特徴です。物理的な戦闘だけでなく、ボンドルドの倫理観が崩壊した言動も、精神的な衝撃です。
プルシュカは娘か実験者か
ボンドルドが示した「歪んだ愛」は、まさに衝撃的な要素を詰め込んだものとなっています。プルシュカは、彼の実験の一環として登場しますが、その存在は単なる被験者とは言い切れない深い感情を抱えています。 このストーリーの展開は、観る者に強い印象を与えます。ボンドルドの冷酷な性格と、彼がプルシュカに対する愛情のようなものは、まさにグロでありつつも、どこか切ない部分を感じさせます。この作品では、ナナチやレグといった他のキャラクターも絡み合いながら、複雑な人間関係が描写されています。しかし、それが本作の魅力でもあります。
メイドインアビスの海外の反応と評価
「劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明」は、その衝撃的な内容にもかかわらず、海外でも高い評価を得ています。海外のファンコミュニティでも熱烈な議論を巻き起こしました。Reddit、IMDb、LetterboxdなどのSNSで交わされた、海外の熱いレビューや感想をまとめてご紹介します。
- Redditより:
- 「この上なく素晴らしい」「本当に見事」「最高の美しさ」といった表現で絶賛されています
- アニメ史上最高の劇場体験の一つと評する声もあります。
- ケビン・ペンキンが手掛ける音楽も高く評価されており、映像と音楽の融合が、作品の独特な雰囲気を形作っていることがうかがえます。
- 一方で、その映像と音楽が描く物語は、決して心地よいものだけではありません
- 「悲痛さ」「トラウマ」「残酷さ」があり、「感情的に消耗する」と警告しています。
- IMDB ユーザーより:
- 「かわいい」アートスタイルにもかかわらず、若い観客向けではないと指摘があります。
- 複数のレビュアーは「ジェットコースターのような作品」と呼んでいます。
- シーンが非常に感動的で、大人でも胸を打つと述べており、主要な悪役であるボンドレッドは、際立った存在として評価されており、不気味で複雑かつ記憶に残るキャラクターだとされています。
- ケビン・ペンキンの音楽と高品質なアニメーションは高く評価されています。
- キャラクターの成長に関する批判(特にサブキャラクターに関して)も一部見られますが、全体としてほとんどのユーザーが映画を推奨しており、特にオリジナルシリーズファンには特におすすめされています。
まとめ: 美しさと残酷さの真髄
『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』は、TVアニメシリーズから続くリコとレグの冒険を、劇場ならではの圧倒的クオリティで描いた作品です。
本作の最大の魅力は、その緻密な世界観と、単なる残酷描写に終わらない深いテーマ性にだと思います。アビスの呪いという過酷な試練に直面しながらも、キャラクターたちは「生命の力強さ」を見せてくれます。特に「まだ動く指がある、冒険は続けられる!」というセリフは、苦痛を乗り越えて前へ進む、作品の核となるメッセージを象徴しています。
そして本作は最小限の主要キャラクターに絞ることで、彼らの絆や感情の変化を濃密に描き出し、観客の没入感を高めていると思います。
この劇場版は、その強烈な描写から見る人を選ぶかもしれませんが、ボンドルドとの壮絶な戦いや、映像と音楽が織りなす芸術性は、国内外の多くのファンを熱狂させており、美しさと残酷さが共存するこの物語は、今後も語り継がれる傑作と言えるでしょう。