現実と虚構が互いに交錯する – ブラック・スワン

2か月 ago

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最初の清楚で可憐な主人公が、演技のために苦しみながら真逆のキャラクターになっていく様子がスゴイの一言です。 現実と虚構の狭間を場面場面ごとに見事に演出されいて、ラストの「白鳥の湖」に向けての引き込まれていきます。

原題
Black Swan
公式サイト
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/black-swan
監督
登場人物
ニナ・セイヤーズ

Actor: ナタリー・ポートマン

ザ・スワン・クイーン。ニューヨークの一流バレエ団に所属するバレリーナ。次回公演『白鳥の湖』のプリマ候補の一人。

トマ・ルロイ

Actor: ヴァンサン・カッセル

ザ・ジェントルマン。ニナの所属するバレエ団にやって来た、フランス人演出家。

リリー

Actor: ミラ・クニス

ザ・ブラック・スワン。ニナの所属するバレエ団の新人。新人ながらもプリマ候補に挙がる、ニナのライバル。

配給会社
制作会社

ここがおすすめ!

  • ナタリー・ポートマンの圧倒的な演技
  • ハラハラ度満点のスリリングな展開
  • 脇を支える役者陣の凄み

あらすじ

【第83回アカデミー賞(R)主演女優賞受賞:ナタリー・ポートマン】あなたの想像は100%覆される!人間の明と暗の二面性を“白鳥”と“黒鳥”のパートで演じわけ、次第に禁断の魔性へと変貌していくプリマドンナを描いた心理サスペンス。 ニューヨークのバレエ・カンパニーに所属するニナは、元ダンサーの母親の寵愛のもと、人生のすべてをバレエに捧げていた。そんな彼女に新作「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが訪れる。しかし純真な白鳥の女王だけでなく、邪悪で官能的な黒鳥も演じねばならないこの難役は、優等生タイプのニナにとって

公式ウェブサイト

2010年に公開された本作映画『ブラック・スワン』は、チャイコフスキーの名作バレエ『白鳥の湖』を題材とした作品で、批評家から大絶賛されて数多くの賞を受賞しました。アカデミー賞では作品賞を含む5部門でノミネートを果たし、主演のナタリー・ポートマンが最優秀主演女優賞を受賞しました。

ナタリー・ポートマンによる圧巻の演技

映画『ブラック・スワン』の特徴といえば、もうとにかく主演ナタリー・ポートマンによる圧巻の演技でしょう。本作の題材となっている『白鳥の湖』は、もともとは主演のバレリーナが清楚(せいそ)な白鳥オデットと妖艶な黒鳥オディールを一人二役で演じなければならないのが特徴で、その難易度の高さが良く知られています。これを本作では巧みに下敷きとして物語が展開していくのですが、ポートマン演じるニナがだんだんと白鳥から黒鳥へと変貌していく様を、見事に演じ切っています。

最初の清楚で可憐な主人公が、演技のために苦しみながら真逆のキャラクターになっていく様子がスゴイの一言です。
現実と虚構の狭間を場面場面ごとに見事に演出されいて、ラストの「白鳥の湖」に向けての引き込まれていきます。
作品をイメージしたAI画像

子役時代から活躍していたポートマンは、ある時から自らの意思でわざと「お堅い」「優等生」なイメージを意識的につけてきました。そのパブリック・イメージをも巧みに利用し、作品冒頭の弱気で純粋なニナのイメージを観客に印象付けていきます。それと同時に、ニナの精神的な不安定さ、揺らぎが恐ろしいほどに丁寧に表現されていきます。現実と厳格のはざまで倒錯しながらも最終的に黒鳥へと覚醒していく過程の演技のグラデーションは、本当に素晴らしかったです。ポートマンは、映画『ブーリン家の姉妹』でアン・ブーリン役も演じており、この作品で悪女的なイメージもついていたため、観客も受け入れやすい土壌があったように感じます。

ポートマンは、本作のバレエ部分の演技でも大きく称賛されました。一年の特訓を経て挑んだバレエシーンはまさに圧巻で、特に見せ場の一つである黒鳥の舞は、見ているこちらが食べられてしまうのではないかと思うほどに気迫に満ちていて、目を閉じればすぐに浮かぶほどの迫力がありました。バレエシーンについてはボディ・ダブルとのいざこざもありましたが、少なくともあの表情の演技の気迫はすべてポートマンの功績と言えます。

観客すらも騙されそうな、倒錯の世界

映画『ブラック・スワン』の鍵となっている設定の一つが、主人公ニナの抱える精神的な問題です。冒頭からニナが精神的にかなりギリギリの状況にあることは示唆されていますが、物語が進むにつれて彼女の妄想や幻覚症状は悪化の一途をたどっていきます。物語を紹介する立場にあるニナが信頼できないキャラクターになればなるほど、映画を観賞している私たちも何が真実で何が真実でないのか、どんどんと分からなくなり、倒錯の世界へと迷い込んでしまうことになります。

とくにそれが一番顕著だったのが、ニナとリリーが一晩を共に過ごしたシーンです。初めてこのシーンを見たとき、私自身もニナ同様に状況をすぐに飲み込むことはできませんでした。このように主人公を信頼できないキャラクターにすることで物語のサスペンス度が増し、スリリングな展開に皆が息を潜めて画面を注視するようになったと思われます。その嫌な緊張感が最高潮に達するのが、見せ場となる黒鳥のシーンで、非常に巧みな演出だと感じさせられました。見る人々がついつい物語にのめり込んでしまう環境を作る演出、そして脚本にはつい唸ってしまうほどで、数多くの賞で作品賞や脚本賞にノミネート及び受賞したのは、納得の結果だったと思います。

作品をイメージしたAI画像

脇役たちの放つ強烈なエネルギー

本作にてポートマン以外で一躍話題となった俳優と言えば、リリー役を演じたミラ・クニスです。妖艶でどこか奔放な野心家のリリー役を演じていて、含みを持った表情や視線で作品のスリリングな展開を際立たせていたように感じました。彼女がいたからこそニナの不安定さがより顕著に見えてきたと思います。それまでコメディ作品への出演が多かったクニスがこのような演技をしたのは少し意外で、素晴らしい才能だと感じました。

また、ニナの母親エリカを演じていたバーバラ・ハーシーの演技も際立っていたと思います。強烈なステージママのような側面もありつつ、束縛的で有無をも言わさない、含みのある演技は見ているだけで嫌な汗をかくような緊張感が漂っていました。娘の成功を願っているのか妬んでいるのか、おそらくその両方であることを体現していて、独特の真綿で首を締める感じが、ニナの精神的問題の原因になっていることがすぐに分かり、恐ろしかったです。

そして、フランス人演出家のトマ役を演じたヴァンサン・カッセルの怪しい存在感も本作では非常に重要だったと思います。ただ登場しただけで怪しい雰囲気を纏っていて、「ああ、ニナはこの人に狂わされていくんだろうな」というのが容易に分かり、物語に絶妙な影を落としていると感じました。

これらの嫌な空気を醸し出すことのできる、実力と存在感のある脇のキャラクターたちの存在が物語をさらに際立たせ、映画としての完成度を全体的に底上げしていたお思います。演出と脚本、そして主演と助演の役者たち、それからチャイコフスキーの素晴らしいバレエ音楽。『ブラック・スワン』はこれらが絶妙に混ざり合って作り上げられた傑作スリラーの一つです。体感する覚悟がある方は是非、黒鳥の覚醒を見届けてみてはいかがでしょうか。

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このページではDisneyPlus Jpで配信中のブラック・スワンから執筆しました。

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