母と娘の愛と痛み―。- 母性

2週間 ago

3.2

いびつな娘から母親への愛情と母親からの娘への愛情のお話でした。 母からの視点と娘からの視点とあったので、どんな「どんでん返し」があるのかと思っていたらそんなサスペンスなお話ではなかったです。

原題
Motherhood
公式サイト
https://wwws.warnerbros.co.jp/bosei/index.html
監督
登場人物
田所ルミ子

Actor: 戸田恵梨香

自分の母を愛しており、母に喜んでもらい、褒めてもらえることを幸せに思っている。

田所清佳

Actor: 永野芽郁

母の愛情が自分に向いていないことを感じており、母からの愛を求め、愛されたいと願っている。

配給会社

ここがおすすめ!

  • 豪華キャストの迫真の演技に思わず見入る母と娘のドラマ
  • 映像の美しさと音楽が創り出す独特の世界と演出
  • 母性とは何かを深く考えさせるテーマ

あらすじ

愛せない母と愛されたい娘の「母性」を巡る衝撃の物語 女子高生が自ら命を絶った。その真相は不明。事件は、なぜ起きたのか? 普通に見えた日常に、静かに刻み込まれた傷跡。愛せない母と、愛されたい娘。 同じ時・同じ出来事を回想しているはずなのに、ふたりの話は次第に食い違っていく…

ワーナー ブラザース ジャパン

本作のレビューに関しましては、筆者が男性であり娘もいないため女性の方にもレビューを頂いております。

映画「母性」は、読後に嫌な気持ちになるミステリー「イヤミス」で知られる湊かなえの原作小説を実写化した作品です。物語は自分は愛されたにもかかわらず娘を愛することができない母親と、母親からの愛を切望する娘との複雑な関係性が描かれています。


どこか息が詰まるような緊張感に満ち、閉鎖的な家庭で繰り広げられる愛情とすれ違いは決して他人事ではありません。作品を見た人ひとりひとりの心に、母性とは何か?そんな疑問を投げかけてくれる作品となっておりました。

豊かな演技と映像技法がリアルな感情を表現

本作である映画「母性」で特に目を引くのは、やはり母親役の戸田恵梨香と娘役の永野芽郁の演技でしょう。戸田氏が演じる母・ルミ子は、感情をあらわにせずともどこか不安定な印象を放ち、自身の心の闇と葛藤する複雑なキャラクターを演じています。無表情で何を考えているのかわからない不穏な存在感に怖さを感じました。

一方で永野氏が演じる娘・清佳は、母親への愛憎が入り混じる苦悩を繊細に演じています。特に母親との関係が徐々に悪化していく中での戸惑いや怒り、そして孤独感を見事に体現しています。彼女の演技には、10代中盤の思春期特有の不安定さや感情の揺れ動きがリアルに反映されており、強い共感を覚えると同時に、もどかしさからイライラさせられるほどでした。

また小説と映画の大きな違いとして、映画では視覚的な演出が加わることで、過去と現在が交差する複雑な時間軸をよりダイレクトに感じられました。文字である小説では想像するしかなかった母と娘の記憶の曖昧さやすれ違いが、映画では独特のカメラワークや編集技法によって視覚的な不安感や違和感として表現されており、とても印象的でした。

映像美と音楽が生み出す映画の感情的トーン

本作の大きな魅力として、映像の美しさと音楽によって作り出される独特の感情表現があると思います。物語全体を通しては、暗いフィルターを通したような色調や陰影が多く使われ、母と娘の間に漂う緊張感や不安がより強調されています。閉ざされた家庭の雰囲気が映像に投影されており、まるでその場にいるかのような息苦しさを感じました。

AIを使用したイメージ画像

音楽も控えめながら効果的に使用されており、盛り上がるシーンではむしろ静かなピアノの音色や低音の不協和音が母と娘のすれ違いや不安を際立たせています。しかし感情を過剰に煽ることなく、映像とのバランスを保ちながら余韻を残していく―。

女性であれば母娘の複雑な感情に寄り添いながら、始終不安定な気持ちで物語を見守っているように感じるかもしれません。音楽と映像の相乗効果によって、映画全体に緊張感と感情的な深みが与えられているように思いました。

私たちの知る母性とは何か?

作品のテーマは「母親の母性とは何か?」という普遍的な問いです。

社会や文化的な役割として”母親にもともと備わっているもの”という思い込みによって定義されたような母性が、時に重荷となり、家族とのすれ違いを生むのではないでしょうか。母性のあるなしを自分に問うのではなく、目の前の子供と真摯に向き合おうという気持ちこそが、母性や愛情と呼ばれるようなものだと感じました。

ただ、一方的な愛情や理解は存在せず、母性に正解も不正解もありません。母親の愛は必ずしも無条件ではなく、ある時は毒親のようであり、娘にとっては重荷でしかないこともあるでしょう。作中でも、母親の行動や言動が娘の心にじわじわと影響を与え、関係が悪化していく様子が克明に描かれています。多くの人が自分の経験と重ね合わせてしまうようなリアリティが印象的でした。

例えば、母・ルミ子が娘に冷たく接するシーン。ルミ子自身の育った家庭環境や抱える心の問題が暗示されており、単にひどいと感じる行動にも、彼女なりの理由や背景が存在していることがわかります。また、母と娘の記憶が食い違うシーンではどちらが本当なのかと頭を悩ませる反面、それぞれの立場で”正しい”と思える視点がいろいろな考察を与えてくれます。

母と娘の不安定な関係と愛情が揺らぐ様子を目の当たりにするほど、私たちが思い込んでいた母性の曖昧さや多面性を再確認するかもしれません。家族の絆が強調されがちな昨今の風潮とは一線を画す、深い問いが心に残ります。

映画『母性』は、母娘の複雑な感情や家族の愛憎を色濃く描いた作品です。母・ルミ子役の戸田恵梨香と娘・清佳役の永野芽郁が繰り広げる迫真の演技は、観る人の心を強く揺さぶります。視覚的に美しくも不安を煽る映像美、そして控えめながらも効果的な音楽が一体となり、作品全体の世界観を豊かにしています。湊かなえの原作小説を愛するファンも映画ならではの映像表現や時間軸の演出を通じて、新たな発見や感動を得ることができるでしょう。あなた自身の家族関係や、母親・娘という立場から愛情について考察したくなる作品です。作品を通して「母性とは何か?」と考える作品となっていました。

各サイトのレビューサイトのスコア

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このページではNetflix Jpで配信中の母性から執筆しました。

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