アベンジャーズ・エイジオブウルトロンでのトニー・スタークの身勝手さであまり好きになれなかったアイアンマンが今作では苦悩する様子が意外や意外でした。
キャップは常に己の行動に自信をもっており、トニーは己の行いにより敵を生み出し自分に自信を失っているようでした。
アクションシーン映画として戦闘シーン、変身シーン、アクションシーンが満載で爽快感がありました。しかしながら本作は喧嘩のあとに手を取り合うことはなく悲壮でした。ド派手な喧嘩バトルではなく、本当にアベンジャーズの分裂でした。

派手なお祭りに騒ぎなスッキリと正義とはの重い話をうまい具合に組み合わさった映画でした。
キャプテン・アメリカシリーズの正統な続編
2011年公開の『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』から始まった「キャプテン・アメリカ」シリーズの第三弾にして、「アベンジャーズ」シリーズに匹敵する大規模映画が本作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』です。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のフェーズ3の幕開けとなる一作で、ここから一気にインフィニティ・サーガのクライマックスまで盛り上がる足がかりとなる作品です。
本作の特筆すべき点は、やはりその豪華なキャラクター陣でしょう。事実上「アベンジャーズ」シリーズの第3作目ともいえる本作には、「キャプテン・アメリカ」シリーズでおなじみのメンバーに加えて、アイアンマンやブラック・ウィドウ、ホークアイなどといったアベンジャーズの面々も多数出演しています。物語の舞台となるのは、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』から約1年後。強大な力を持つアベンジャーズを国際連合の管理下に置くべきという主張に後押しされた「ソコヴィア協定」を受け入れるか否かが本作の主な争点です。
ソコヴィア協定
アベンジャーズをはじめとした超人たちを国連の管理下に置く取り決め。
署名した超人は国連が認めた時のみその活動が許可され、署名を拒否して活動を続けた場合、それに協力した人物も含めて違反者と識別される。
コミック版『シビルウォー』における「超人登録法(Superhuman Registration Act)」に相当するが、本作ではアメリカ政府が運用している。
アベンジャーズの分裂
ポスターなどで分かる通り、この作品では「アベンジャーズの分裂」が前面に押し出されています。ソコヴィア協定に反対するキャプテン・アメリカと賛成するアイアンマン、その両者のどちらに味方するかでアベンジャーズの面々が分裂します。これに伴い、観客たちもキャプテン・アメリカ派とアイアンマン派に分かれるのが、非常に興味深いところだと思いました。
キャプテン・アメリカ派 | アイアンマン派 |
---|---|
キャプテン・アメリカ | アイアンマン |
ファルコン | ブラック・ウィドウ |
スカーレット・ウィッチ | ウォーマシン |
ウィンター・ソルジャー | ヴィジョン |
ホークアイ | ブラックパンサー |

本作はあくまでも「キャプテン・アメリカ」シリーズの一作なので、アイアンマンはその敵対勢力、いわばヴィランのような立ち位置です。自身の過去のヒーロー活動で一般市民に犠牲が出たのであれば、いっそのこと国際連合のようなより大きな、より正義を遂行できるはずの組織に管理してもらい、責任を負ってもらった方が良いのではないか、というのがアイアンマンの主張です。率直に、非常に彼らしい考えだなと感じました。そもそも彼がヒーローになったのも、自身が世界平和のために作り出した兵器が、全く逆の現実を作り上げてしまったことへの贖罪の意識からでしたし、根の部分が変わっていないことがよくわかります。アイアンマンと同様、自身の過去に罪の意識を持ったブラック・ウィドウが当初は彼の側についたのも納得できます。ですが、私が驚いたのは多くのファンがアイアンマン側についた点です。特に、日本ではその傾向が強かったのが特徴的だなと感じました。アイアンマンの持つ人間味と、自分のアーマーを自ら作る職人気質な部分に惹かれる人が多いのかもしれません。
新スパイダーマンの登場
本作では初登場となるヒーローがいます。それがアイアンマンが味方に引き入れた、スパイダーマンです。スパイダーマンは過去に何度も映像化されている人気キャラクターですが、トム・ホランド演じるMCU版スパイダーマンは本作にてお披露目です。予告編の段階から大きな話題を呼び、その人気と注目度の高さは圧倒的でした。今回のスパイダーマンは過去作と比較すると子供っぽい印象がありますが、原作漫画のキャラクターにより近いようにも感じました。「キャプテン・アメリカが危険なことをしようとしている」と嘘にもなりかねない状況説明をして未成年の少年を戦闘に引き込むアイアンマンのやり方は大いに疑問ですが、戦闘経験がないとは思えない頭の回転の速さでチームに貢献したのは、さすがスパイダーマンと感心しました。戦闘シーンでは見ごたえのあるアクションだけでなく着実に笑いも取っていて、まさに本作のMVPと言える活躍です。
キャプテン・アメリカにとっての正義
キャプテン・アメリカはMCU作品では一貫して正義の人として描かれる存在となっていました。「友人」であるバッキーをただ救おうとしているように捉えられてしまうこともあるかもしれませんが、仮にバッキーが自らの意志で犯罪に手を染めていたならば彼は味方しなかったでしょう。

もともと『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』で軍人であり隊長として世界大戦を経験したキャプテン・アメリカは、自身の言動によって引き起こされる負の状況についても理解しており、その責任を負うことも覚悟ができています。軍人になったのも純粋に国の役に立ちたいという思いであり、自分に自身に力がなく、そこでスーパーソルジャーになる道を選んだ人物です。強大な力が武器として悪用される懸念も十分に理解しており、それが誰かの管理下に置かれれば悪用されるという危険性も理解しており、だからこそ己の言動の責任は己で取るべき、というのが彼の変わらないスタンスです。個人的な感情ではなく、ただ正義を貫くことこそが彼にとっての正義なのだと思います。
これはシリーズ2作目のキャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャーで、自身が所属していた国際平和維持組織「シールド」がヒュドラに染まっていた反省からかもしれません。
「復讐」か「報復」か
本作での大きなテーマは「復讐とその連鎖をいかに止めるか?」だと考えています。本作でキャプテン・アメリカ以上の正義を貫いたのが、初登場のブラック・パンサーです。復讐は個人的な感情に基づいて行われますが、それは連鎖しやすいものです。本作ではアイアンマン自らもその連鎖にはまってしまいました。一方で、この負の連鎖に気づき、自らその連鎖を食い止めるという崇高な決断をブラック・パンサーは下しました。

個人的な感情で悪者に復讐することは、ヒーローが取るべき正義とは言えないと筆者は考えております。ヒーローが行うのは、「報復」、つまり「Avenge」であり、それこそがアベンジャーズの意味することころです。アベンジャーズの分裂ばかりが注目されがちな本作ですが、「アベンジャーズ」の意味を改めて観客に問い直しているという点において、フェーズ3の幕開けにこれ以上にふさわしい一作はありません。インフィニティ・サーガのクライマックスの始まりを是非ご覧ください。