2012年公開の『アベンジャーズ』に合流するヒーローとして最後に紹介されたのが、キャプテン・アメリカでした。2014年に公開された本作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』は、2011年公開の『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』に次ぐ、キャプテン・アメリカシリーズとしては2作目となる作品です。そして多くのファンがMCU史上最高の出来栄えだと称する本作になります。筆者も「エンドゲーム」までのMCUの中で1、2位を争う作品になり、それにはどんな魅了があるのかを執筆しました。
ルッソ兄弟の強烈なMCUデビュー
映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』でメガホンを取ったのは、前作とは異なりアンソニー・ルッソとジョー・ルッソ監督です。(前作のファースト・アベンジャー(Captain America: The First Avenger)はジョー・ジョンストン監督です。)ルッソという名字が同じところから推測できるように、この二人は兄弟です。彼らは本作でMCU作品に仲間入りしましたが、このような大作映画の監督を務めること自体が初めてのようでした。それにもかかわらず、本作は出来が良いと大きな評判を呼んでいます。そしてルッソ兄弟はMCUフェーズ3までの作品で欠かすことのできない監督になります。

ルッソ兄弟の強みは、なんといっても抜群のアクションセンスとコメディです。MCUではこの二つが求められており、彼らの作風はそこに見事にフィットしたといえます。またルッソ兄弟はキャラクターを捌くのにも非常に長けています。本作には、既にMCUに登場済みのキャラクターとそうでないキャラクターが登場していますが、前者については新しい一面を引き出し、後者については短い時間で印象的な紹介をさせることで、それぞれの個性が際立つような演出がされているのが、巧みだと感じました。
彼らのこの手腕は、MCU内でもとても高く評価されています。最終的に、ルッソ兄弟は本作を皮切りに、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』、『アベンジャーズ/エンドゲーム』というMCUおよびインフィニティ・サーガの重要作品を手掛けることになったほどです。また、本作から『アベンジャーズ/エンドゲーム』までの4作でキャプテン・アメリカの物語がきれいにまとめあげられているのも、彼らの功績と言えるでしょう。MCU史上最も重要な監督である二人の、熱烈なデビューとなりました。
誰もがうなる最高のアクション
映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』はまさにアクションを極めた作品です。超人血清を打たれたことによって、超人兵士となったキャプテン・アメリカ。人間離れした能力と卓越した統率力でアベンジャーズのリーダーとして活躍しています。しかし血清はあくまでも人間としての能力を最大値まで引き上げるものであり、それ以上の能力を彼は備えていません。なので、空を飛んだり超能力を使ったりするようなことができず、それがアクションシーンにおいての一種の足かせになっています。
本作では彼の人間離れした部分と、足かせになっている部分の両方をうまく生かしたアクションシーンが複数登場しています。特に前半に登場するエレベーターのシーンは繊細に作り込まれていて、今でも伝説のシーンとしてファンの間で語られています。CGに頼ることなく、ほとんどを生身の肉体で表現する場面の数々は、多くの人々の心をわしづかみにしました。
さらに本作から最強の暗殺者ウィンター・ソルジャーも登場しています。彼もまた超人血清を打たれており、超人兵士同士のバトルシーンも圧巻でした。加えて、ブラック・ウィドウの身軽さを生かしガジェットを駆使した、訓練された生身の人間らしいアクションシーンも素晴らしいですし、ファルコンによる空を使ったアクションシーンが画面に奥行きを与え、さらなる興奮を人々に与えます。アクション映画にスーパーヒーローの要素が加わり、絶妙にリアルで絶妙に現実離れしたあんばいが、見事だと感じました。
力のないものが立ち上がる勇気
本作では前作のヒドラに乗っ取られたS.H.I.E.L.D.からスティーブが命を狙われつつ自らの正義を貫きます。そしてクライマックスのキャプテン・アメリカによるスピーチを聞いて、ラムロウの命令に反抗したエージェントや、少しでもヒドラの威力を削ごうと命がけで戦おうとしたエージェントたちの姿には、真の勇気と正義を感じました。
残念ながら彼らの名前は作中でほとんど言及されませんでしたが、一瞬しか映らないシーンでも正義の側として多くの人々が戦っている姿には、心が動かされます。キャプテン・アメリカのようなスーパーヒーローにはなれなくても、自身の信念に従い正義のために立ち上がろうとする彼らは、間違いなく英雄と呼べるでしょう。従来のスーパーヒーロー映画では軽視されがちな、スーパーヒーローの周囲で働く力無き人々の雄姿を描き出している点は本作の優れた点の1つであり、多くの支持を集める理由でもあると思います。本作から仲間となったファルコンも、特別な力を持たないただの元軍人ですしね。
ルッソ兄弟がMCUに仲間入りした最初の作品となった映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』。スーパーヒーローであるキャプテン・アメリカの素晴らしいアクションに加え、その他の人気キャラクターのアクションも拝むことのできる、素晴らしいアクション映画です。それと同時に、名前すら与えられないような、特別な力を持たない英雄たちの姿も描かれています。
本作はヒーローもヴィラン(敵と表現する方がしっくりくる)もシンプルであり、スーパーヒーローを前提としたミッションインポッシブルさながらであり、純粋なカッコイイ!アクション映画の要素が詰まっていおり、スーパーヒーロー映画としてではなく、アクション映画としても傑作映画でした。