戦後の世界に生きる人間ドラマ
今作はゴジラという特撮映画の金字塔であり世界的ブランドである怪獣を日本でVFXを駆使した映画を作るトップランナーの山崎貴監督が手掛けているので、怪獣アクション映画を想像すると思います。(筆者も鑑賞する前はそう考えておりました。)
ただ今作は「ALWAYS 三丁目の夕日」でも有名な山崎貴監督のヒューマンドラマに重点をおいていました。
第2次世界対戦中で生きたいと強く願うあまり、特攻から逃げてしまった主人公敷島(演:神木隆之介さん)。生きるためとはいえ逃げたという行為がトラウマとなり重荷になり戦争が終わったあとでも戦時中戦死した亡霊が夢に現れ、生きていることが実感できないでいます。そんな敷島のもとにひょんなことから同居することとなった典子(演:浜辺美波さん)とあきこ。疑似家族から一時の安らぎをえてた敷島だが、ゴジラが東京に上陸し典子を失ってしまったと絶望に打ちひしがれる。
そんな絶望を怒りに変え命と引き換えにゴジラと戦おうとします。この行動は生きるのではなく逆の死のうとします。これを戦後に出会った人々が生きろとくいとめます。
本作はこの敷島の生きることへの葛藤と共に過ごす仲間と隣人とのヒューマンドラマが中心だと思います。澄子さん(演:安藤サクラさん)と秋津さん(演:佐々木隆之介さん)が本当に良い味を出していました。

いままでのシリーズで最恐のゴジラ
2010年以降のゴジラシリーズは、2014年から始まったモンスターバースシリーズとシン・ゴジラがあります。この中で今回は本当に恐怖と絶望を人類に与える対象として一番だと思います!
モンスターバースシリーズは怪獣プロレスでありダークヒーロー感があり、圧倒的スケールで街の中を大暴れすることを楽しむ映画だと思いました。おそらくゴジラ-1.0と比較されるであろう庵野監督番シン・ゴジラはゴジラという巨大な災害に国家としてどのように向きあい対策するかに重点をおいた作品だと思いました。
本作のゴジラは本当に恐ろしいです。災害とは違う巨大な怪獣と対峙した時の恐怖と絶望。巨大な怪獣だけだと筆者が思い描くものとして巨大なサメのジョーンズやメガロドンを思い描きました。巨大で恐怖のモンスターという言葉だけだと近いかもしれません。が、今作のゴジラは全く違い恐怖プラス絶望の怪獣として象徴が強いです。それぐらいリアリティ。それくらい入り込める作品でした。
とくに木造船の新生丸とゴジラとの海上チェイスシーンとそのあとに続く、重巡洋艦「高雄」を放射線で撃沈させるのはど迫力であり今作の名シーンだと思います。

そして忘れてはいけないのがゴジラの放射熱線。今回の放射熱線は尻尾から背中の尾ひれにむかう演出で、一番近いのはモンスターヴァースのゴジラ キング・オブ・モンスターズと思いました。
ただ演出として放射するまでの絶望感と空気の重み、破壊力の伝え方は確実に今作が一番です。

良くも悪くも昭和の世界感
今作ゴジラ-1.0は、徹底的にリアルな終戦直後の日本を再現している作品であります。これは今作の山崎監督のこだわりを感じます。これはやはり「ALWAYS 三丁目の夕日」や「永遠の0」と「アルキメデスの大戦」といった昭和の町並みや戦時中の日本の戦闘機と戦艦をVFXで作成していたのだからと思います。
ただ登場人物については、ステレオタイプ的な昭和の価値観を持つ人たちやシチュエーションも少なくくありませんでした。今作の世界観が昭和の世界であるため当然と思い、昭和の世界を再現するためにはいたしかたないです。ただ特に劇中の女性の描き方に関しては、令和の観客に対して今これを見せるのかと疑問に感じるものがいくつかあり、正直海外でこれだとポリコレ活動家が騒ぎそうで心配になってしまいました。
