映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』は、冒頭から実際のYouTubeホラーレビュアーたちが前作を批評から始まります。
そして主人公アレックスもまた映画監督を目指す学生という設定で、彼が前作に対して「ありきたりなB級ホラー、星1つ」と酷評するシーンから物語は始まります。しかし謎のアカウント「デス・アウェイツ」から送られてくる不気味な映像により、彼は次第に前作が実話ではないかと信じ始めるのです。
前作のランス・プレストンの復活と狂気
本作の驚きは前作で精神病院に閉じ込められ、ロボトミー手術を受けて廃人となったかに見えたランス・プレストン(ショーン・ロジャーソン)が再登場することでしょう。
ランスの姿は、廃人と言ってもよくボロボロの服を着て、片目が白濁し、長い髪と髭を生やした彼の姿は、まるで『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムのようでした。ネズミを食べ、トイレの水を飲みながら生き延びてきた彼は、完全に正気を失っていました。

しかし同時に、ランスは病院の構造を誰よりも理解しているのです。壁が変化するタイミングを読み、通路の地図を作成し、病院を「都市よりも大きい」と表現します。彼は病院内のすべての扉を開けて調べましたが、ただ一つ、鎖で封じられた赤い扉だけは開けられませんでした。そしてランスは、その扉こそが出口だと信じていたのです。
ランスがトレバーを鉄パイプで殴り殺すシーンは、前作では見られなかった残酷な暴力でした。「やらされたんだ。許してくれ」と謝罪しながら友を殺す彼の姿に、私は複雑な感情を抱きました。ランスは被害者なのか、それとも加害者なのか。彼もまた、病院の霊に操られた犠牲者だったのです。
前作を超える恐怖演出と驚愕のクライマックス
より激しく、より直接的になった霊の攻撃
前作『グレイヴ・エンカウンターズ』は、閉ざされた精神病院という密室空間での心理的恐怖が中心でした。しかし映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』では、霊による攻撃がより直接的で激しくなっています。
特に印象的なのは、子供病棟でのシーンです。ベッドの上でブラシで髪を梳かす少女が「遊びましょうか?」と優しく語りかけますが、次の瞬間、その顔は悪魔のような恐ろしい姿へと歪み、アレックスたちを追いかけてきます。このシーンの恐怖は、前作の静かな不気味さとは異なり、より直接的で視覚的な衝撃を与えるものでした。このシーンは前作だと後半あたりの演出だったのが前半でこういった演出は構成の違いを感じられるところでしたね。

前作よりも予算が増えたのか、CGIを使った視覚効果も増量されています。
警備員が拷問用の電気ショック療法の椅子に縛り付けられ、最終的に焼死してしまうシーンも強烈です。前作では暗示的だった暴力が、今作ではより露骨に描かれています。
窓から突き落とされるクルーの一員と霧の中から現れる長身の霊であり、そして何よりも恐ろしいのは、壁が自在に変化して出口を塞ぐという超常現象です。またアレックスたちが一度は病院から脱出したと思った瞬間、ホテルのエレベーターを降りると再び病院の廊下に戻ってしまうという演出は、『シャイニング』や『1408号室』を彷彿とさせる絶望感を生み出していました。
霊たちの真の目的が明かされる衝撃の結末
映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』は、で明らかになるのは、霊たちの真の目的です。彼らは単に人間を殺したいのではなく、「観客」を求めていたのです。映画を完成させ、それを公開することで、より多くの犠牲者を病院へ誘い込む。前作のプロデューサーが映画として公開したことで、アレックスのような若者が次々と病院を訪れるようになった。つまり、霊たちは映画というメディアを利用して、自らの犠牲者を増やそうとしていたのです。
ラストシーンでは、アレックスはロサンゼルスのプロデューサー、ジェリー・ハットフィールドのもとを訪れます。そして二人は『グレイヴ・エンカウンターズ2』を映画として公開することに合意します。ただし今回は「これは完全なフィクションです。決して病院を探しに行かないでください」という但し書きを付けて。しかしアレックスの表情には、何か不気味なものが宿っていました。
前作との比較で見える続編の個性
前作『グレイヴ・エンカウンターズ』と映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』を比較すると、それぞれに長所と短所があります。
前作の最大の強みは、その「閉塞感」でした。冒頭から病院に入り、扉が閉ざされてからは、ひたすら逃げ場のない恐怖が続きます。時間の歪み、変化する廊下、そして次々と仲間が消えていく絶望感。前作は非常にシンプルな構造ながら、その単純さゆえに恐怖が際立っていました。
一方、映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』は、より複雑な構造を持っています。メタ・ホラーとしての仕掛け、ランス・プレストンの復活、そして霊たちの真の目的の解明。これらの要素は物語に深みを与えていますが、同時に前作のシンプルな恐怖を薄めてしまった側面もあります。
恐怖演出については、映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』の方がより派手で直接的です。前作が「何が起こるかわからない不安」を煽ったのに対し、今作は「確実に襲ってくる恐怖」を描いています。どちらが優れているかは好みの問題ですが、私個人としては、前作の静かな恐怖の方が効果的だったと感じました。
POVホラーの系譜における本作の立ち位置と演出の特徴
ファウンドフッテージ・ホラーの系譜を受け継ぐ
映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』は、ファウンドフッテージ・ホラー(POVホラー)というジャンルの系譜において、いくつかの先行作品から影響を受けています。
まず第一に挙げられるのは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)です。本物のドキュメンタリーと見紛うような演出、インターネットを利用したバイラル・マーケティング、そして「これは本当にあった話なのか?」という観客の疑念を煽る手法は、明らかに『ブレア・ウィッチ』の影響を受けています。
次に『パラノーマル・アクティビティ』シリーズとの共通点です。特に『パラノーマル・アクティビティ2』(2010年)が前作の真相を明かしながら新たな恐怖を提示したように、映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』も前作の謎を解明しつつ、さらなる恐怖の層を重ねています。
メタ・ホラーという観点では、ウェス・クレイヴン監督の『スクリーム』シリーズ(1996年-)が先駆けです。ホラー映画のお約束を登場人物が知っているという設定は、映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』でも採用されており、アレックスが前作を観ているからこそ、病院の危険性を理解している(はずだった)という皮肉な構造になっています。
B級ホラーの枠を超えられなかった演技の課題
演技については、正直なところ、前作同様にB級映画らしいぎこちなさが残っています。主演のリチャード・ハーモンは、自信過剰な映画学生というキャラクターを演じていますが、時折「演技している」ことが見えてしまい、没入感を損なう瞬間がありました。
友人役のディラン・プレイフェア(トレバー)やレアー・サロンガ(ジェニファー)も、悪くはないのですが、恐怖に直面したときのリアクションがやや大げさで、ファウンドフッテージ・ホラーに求められる「普通の人が体験する恐怖」という感覚からは少し離れていました。
ただし、ショーン・ロジャーソン演じるランス・プレストンだけは別格でした。彼の狂気に満ちた演技は、前作から格段に成長しており、9年間の孤独と恐怖を体現していました。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』が無名の俳優を起用することでリアリティを生み出したのに対し、映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』は若手俳優の演技力に頼る部分が大きく、この点が作品のリアリティを損なう要因となっていました。
まとめ:メタ・ホラーが問いかける映画体験の意味
映画『グレイヴ・エンカウンターズ2』は、前作のセルフパロディから始まり、メタ構造を駆使した意欲的な続編でした。YouTubeレビュアーが主人公という設定は、SNS時代ならではの発想であり、フィクションと現実の境界を曖昧にする手法は効果的でした。
前作よりも派手で直接的な恐怖演出は、ホラー映画ファンを満足させるでしょう。特に子供病棟での少女のシーンや、エレベーターから降りると再び病院に戻っているという絶望的な展開は、強く印象に残りました。ランス・プレストンの復活と狂気に満ちた演技も、続編ならではの見どころです。
しかし一方で、物語のペース配分の悪さ、設定の無理、そして必要以上に残酷な暴力描写など、改善の余地も多く残されています。前作のシンプルで研ぎ澄まされた恐怖と比較すると、やや散漫な印象を受けました。
ファウンドフッテージ・ホラーの可能性を広げた作品として、一定のおもしろさはあると思います。前作のファンはもちろん、ホラー映画というジャンルに興味がある方には、ぜひ鑑賞をお勧めしたい一作です。
ただし、鑑賞後に実際の廃墟を訪れることは、絶対にお勧めしません。それこそが、霊たちの思うツボなのですから。




