2014年に劇場公開された映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、そして2017年公開の続編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』を経て、ついにガーディアンズの旅は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』まで到達しました。2023年に珍しく本国アメリカより少し早くに日本で公開された本作は、近年のMCUフェーズ5のマーベル映画の中でも評価が高い一作です。
あのキャラクターが待望の初登場
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』を語る上で欠かせないのが、本作で新しく登場したキャラクターです。これまで活躍してきたキャラクターは観客にとても人気ですが、この新キャラクターは彼らと同じぐらいの人気を誇り、大きな話題となりました。それがアダム・ウォーロックです。全身金色という印象的なヴィジュアルで登場した彼ですが、実は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のポストクレジットシーンで、その登場が示唆されていました。コミックスではアベンジャーズとサノスの対決においてカギを握る人物だったため、『アベンジャーズ/エンドゲーム』への参加も期待されていたキャラクターでした。残念ながらアベンジャーズとの合流は見送られてしまったため、本作での初登場となりました。

アダム・ウォーロックはソヴリン人によって人工的に作られた“完璧な存在”です。彼の登場は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 2』のエンドクレジットで予告されていました。
物語の初めは母であるハイ・プリーステス・アイーシャの命令に忠実で未熟ですが、物語を通じて成長し、善悪の判断を学んでいきます。

身体能力が優れていて、殺しても死なないというなかなかな強さを見せるキャラクターである反面、まだ産まれたばかりのため物事の善悪が判別できず、間抜けな言動が目立つという、狡いキャラクターでもあります。「アベンジャーズ」シリーズでいうところのヴィジョンと被る部分はありますが、ガーディアンズとの相性も良く、本作では多くの人に愛されるキャラクターとなりました。
ついに明かされるロケットの過去
本作の実質的な主人公はファンのお気に入り、アライグマのロケットです。前作ではスター・ロードのオリジンが掘り下げられましたが、本作ではロケットの謎多きオリジンが明かされました。
本作は本編が2時間半越えと比較的長く、映画を2分割するか単発ドラマを作るかなどして、上映時間を短縮することもできたと思います。特にロケットのオリジン部分については話の密度も濃かったため、単独でも作品として成立するのでは、と思った側面もあります。しかし、結果的にはロケットの過去とガーディアンズのチームとしての未来を1本の映画にまとめたのは、良い決断だったと感じました。過去と未来、両方が一作にまとまったことで、作品に奥行きが出たと感じたからです。
ロケットの過去は悲劇的なものでした。実験のために悪用され、仲間も失ったという過去を考えると、これまでの旅路でロケットが必死に仲間を守り続けた理由がよく分かりました。また、彼がいかに優れたリーダーであるかも、本作では描かれていたように思います。彼の今後を考えても、必要なタイミングで語られた過去だったと思いました。
ただ注意して欲しいのは過去のロケットとその当時の仲間たちへの虐待とも言っていいほどシーンが多いです。

ガーディアンズたちのこれから
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』の続編でありつつも、間に見るべき作品がとても多い複雑な作品です。まず、ガモーラとガーディアンたちの関係性です。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』では仲間であったガモーラが本作では別組織の人物として登場します。それは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』を見なければなぜガモーラが本作でどのような経緯を辿ったのかが分かりません。また彼らが宇宙に戻った経緯は映画『ソー:ラブ&サンダー』で語られ、スター・ロードとマンティスの関係は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』で語られます。このように、2作目と3作目の間には経由しなければならない作品が4作品も挟み込まれています。これらを見ていなくても、単体の映画として多少は理解できるものの、クライマックスで感動しづらいのではないかと感じました。
これは近年のMCUシリーズに総じて言え映画単独で鑑賞する上での難点です。
しかしながら本作はあらゆる面で作品として成功しています。特にキャラクターたちがそれぞれ、過去を乗り越え、現在を受け入れ、未来に向かって進んでいくというメッセージが非常に分かりやすく示されています。それぞれのキャラクターはもともと強烈ですが、シリーズを重ねている分それぞれの個性がより光っていて、安心して見ることができます。キャストや監督を含め、制作陣の団結もとても強い作品なので、それがよく表れている一作だと感じました。
また、このシリーズでは音楽が非常に重要となっていますが、その力は本作でも健在でした。特に、エンドロールにつながる演出は巧みで、誰もがノスタルジーのようなものを感じられたのでは、と思います。製作が実現するまでにさまざまな困難があった作品でもあるため、よくぞここまでこぎつけたな、という気概も感じさせました。シリーズ3作の中で、最もまとまりの良い作品だったと言えるのではないでしょうか。
まとめ
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』では、ファンたちから愛される新キャラクターの登場に加えて、ロケットの過去やガーディアンズのこれからなどが描かれています。全体で2時間30分と長めな作品ではありますが、それぞれのパートがしっかりとしているため、飽きることなく、彼らの旅路を存分に味わうことができます。宇宙のならず者たちの旅の終着点を、ぜひともに過ごしてみてください。