劇場版 アニメ
ヒックとドラゴン2:成長の痛みと別れの涙

Score 4.2

人気シリーズとなり続編が制作され、この続編が前作を超えることは滅多にありません。しかし本作は、その稀有な例外でした。前作から5年後の世界を舞台に、少年ヒックとドラゴンのトゥースの絆をさらに深めながら、成長の痛み、家族の再会、そして避けられない別れという普遍的なテーマを描いた感動作となっています。前作が「少年と竜の友情物語」だったとすれば、本作は「大人になることの意味を問う成長譚」です。

原題
How to Train Your Dragon 2
公式サイト
https://www.dreamworks.com/movies/how-to-train-your-dragon-2

(C)2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

監督
登場人物
ヒック・ホラウズ・ハドック III(Hiccup Horrendous Haddock III)

Actor: 田谷隼

他の作品:

バーク島を統治する酋長の息子。ドラゴンと共存を続けながら未踏の空域を探検する中、ドラゴン捕獲を狙う敵や陰謀に直面する。

アスティ(Astrid Hofferson)

Actor: 寿美菜子

他の作品:

ヒックの婚約者にして優れたドラゴン戦士。彼女は理性的で勇敢、ヒックと共に困難に立ち向かう。

ヴァルカ(Valka)

Actor: 深見梨加(ふかみ りか)

他の作品:

ヒックの母親。ドラゴン保護者として長年、密かにドラゴンとともに生きてきた。物語後半でその再会がドラマを生む。

ストイック(Stoick the Vast)

Actor: 田中正彦

他の作品:

バーク島の統治者でありヒックの父。息子に期待をかけつつ、島とドラゴンとの関係に葛藤を抱える。

スノット(Snotlout / Snotlout Jorgenson)

Actor: 淺井孝行(あさい たかゆき)

他の作品:

ヒックの同胞の一人。活発で自信家だが、危機の中ではチームの一員として行動する。

配給会社
制作会社

ここがおすすめ!

  • 笑いと涙のバランスが絶妙で、大人も子供も心を揺さぶられる
  • 数千体のドラゴンが舞う壮大なスペクタクル
  • 少年が大人になる過程を丁寧に描いた普遍的テーマ

あらすじ

前作から5年──バーク島は人間とドラゴンが共存する平和な世界へと変貌を遂げていました。武器を作る代わりにドラゴンと共に暮らすための道具を作り、誰もがドラゴンをパートナーとして迎え入れています。 ヒックとトゥースは、世界の果てを地図に描く冒険の日々を送っていました。しかし父ストイックは、そろそろ族長の座を譲る時が来たと考え、ヒックに後継者になるよう迫ります。リーダーの器ではないと自信のないヒックは、父の申し出を断り、未知の海域へと飛び立ちます。 そこで彼が出会ったのは、ドラゴンを武器として使役する冷酷な征服者ドラゴ・ブラッドヴィスト。そして、もう一つの運命的な出会い──それは、死んだと思われていた母ヴァルカとの再会でした。

How to Train Your Dragon 2 | Official Site | DreamWorks

映画の続編が前作を超えることはほとんどありません。それがシリーズとして続けば続くもではないでしょうか。そんな中で「続編の方が良かった」のが、本作『ヒックとドラゴン2(原題:How To Train Your Dragon 2)』です。

2010年に公開された前作『ヒックとドラゴン』は、クレシッダ・コーウェルの児童文学を原作とした心温まる冒険譚でした。ドラゴンを憎むヴァイキングの少年ヒックが、傷ついたドラゴン・トゥースと出会い、理解し合い、やがて種族の壁を越えた友情を築く。そのシンプルで力強い物語は、多くの人々の心を掴みました。

本作はその4年後に製作され、物語内でも5年の月日が流れています。前作が『E.T.』や『ブラック・スタリオン』にインスパイアされた「少年と動物(異星人)の絆」を描いたのに対し、本作は『バンビ』や『ライオン・キング』のような「成長と喪失の物語」へと舵を切りました。

成長の痛みを描く勇気

本作の核心は、ヒックの「大人になること」への葛藤でしょう。父ストイックは族長の座を息子に譲ろうとしますが、ヒックは自分がリーダーには向いていないと感じています。彼は冒険家であり、探検家であり、地図を描く夢想家です。村を率いる重責など、彼の性格には合わないのです。

この「自分の居場所がわからない」という悩みは、思春期から青年期への移行期にある全ての人に共通するものです。前作では、ヒックは「弱虫」から「英雄」へと変わりました。しかし本作では、英雄であることと、リーダーであることは別だと気づかされます。

そして、この成長物語を加速させるのが、母ヴァルカとの再会です。死んだと思われていた母が、実はドラゴンと共に生きていた──この設定は、ヒックに「もう一つの生き方」を示します。ヴァルカは人間社会を捨て、ドラゴンの世界で生きることを選びました。それは自由で、美しく、しかし同時に孤独な選択でもありました。

AIで作成したイメージ画像

ヒックの母であるヴァルカは、ヒックの「未来の姿」かもしれない存在です。彼女との出会いを通じて、ヒックは自分の道を見つめ直すことになります。

避けられない別れと涙

本作を語る上で避けて通れないのが、ある主要キャラクターの「死」です。アニメーション映画で「死」を真正面から描くことは勇気のいる決断です。しかしディーン・デュボア監督は、そこから逃げませんでした。『ライオン・キング』でムファサが殺されたように、本作も「成長には喪失が伴う」という厳しい現実を描きます。

この喪失は、ヒックを決定的に変えます。彼はもはや、父の庇護の下で自由に冒険できる少年ではありません。責任を負い、決断を下し、人々を導かなければならない立場に立たされるのです。

この展開に対し、「子供向けアニメでやりすぎだ」という批判もありました。しかし私は、この勇気ある選択こそが本作を名作たらしめていると考えます。子供たちは、いつか必ず「別れ」を経験します。その時のために、物語を通じて疑似体験することには大きな意味があるのです。

キャラクターたちの成長と変化

主人公であるヒックは、前作から確実に成熟しています。冗談を言う余裕も出てきました。しかし同時に、重責に怯える脆さも残っています。この「完璧ではない英雄」としての描写が、ヒックを非常に人間的で共感しやすいキャラクターにしています。

アストリッドは、ヒックの恋人として、そして良き理解者として重要な役割を果たします。彼女は前作のような「気の強いヒロイン」から、一歩進んで「支える存在」へと成長しました。二人の関係性は、前作よりもさらに深まっています。

一方、サブキャラクターたちの出番が減ったのは残念な点です。スノットロウト、タフナット、ラフナット、フィッシュレッグスといった個性的な仲間たちは、前作では重要な役割を果たしましたが、本作ではほとんど背景に回っています。これは新キャラクター(ヴァルカ、ドラゴ、エレット)に尺を割いたためですが、ファンとしては少し寂しいところです。

トゥースに関しては、相変わらず愛らしく、勇敢で、ヒックの最良の友であり続けます。彼の表情の豊かさは前作以上で、時には猫のように、時には犬のように、そして時には誇り高きドラゴンとして振る舞います。ヒックとトゥースの絆は、言葉を超えた信頼関係として描かれ、本作の感情的な核となっています。

敵役ドラゴ・ブラッドヴィストの存在

ドラゴ・ブラッドヴィストは、本作最大の弱点であり、同時に必要悪でもあります。前作には明確な「悪役」がいませんでした。人間とドラゴンの対立は、無知と恐怖から生まれたものであり、理解し合えば解決できる問題でした。しかし本作では、あえて「純粋な悪」としてのドラゴを配置しています。

彼はドラゴンを憎み、支配し、武器として使役します。その動機は単純で、キャラクターとしての深みには欠けます。しかし、この「交渉不可能な敵」の存在が、ヒックの成長を促すのです。前作では「理解」で解決できましたが、今回はそうはいきません。時には戦わなければならない──その厳しい現実を、ドラゴは体現しています。

ドラゴの部下エレットは、より興味深いキャラクターです。当初は敵側にいる彼が、徐々にヒックたちに心を開いていく過程は、前作のテーマ「理解と共感」を引き継いでいます。

続編への期待と不安

本作のエンディングは、明らかに続編を意識したものです。ヒックは族長となり、バーク島は新たな時代を迎えます。しかし同時に、「ドラゴンたちはどこへ行ったのか?」という大きな謎が残されています。

原作者クレシッダ・コーウェルは、「ドラゴンの消滅」を物語の結末に据えることを考えていたと言います。ディーン・デュボア監督もこのアイデアを引き継ぎ、三部作を通じてその答えを描くことを目指しました。

本作を観終えた後、私たちは次作を待ち望む気持ちと、同時に終わってほしくないという矛盾した感情を抱きます。それは、このシリーズがいかに愛されているかの証でもあります。

実際、5年後の2019年に公開された『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』は、このシリーズに美しい決着をつけました。しかし本作『ヒックとドラゴン2』は、単独で観ても十分に素晴らしく、同時に続きを切望させる力を持っています。

唯一の不満点

一つだけ不満を述べるとすれば、それは「一本で完結していない」ことです。本作は三部作の中盤として見事に機能していますが、単独の映画としてはやや物足りなさが残ります。大きな喪失の後、すぐに次の戦いへの準備が始まるため、感情の余韻に浸る時間がありません。

理想を言えば、本作と次作『聖地への冒険』を一日で連続鑑賞することをお勧めします。そうすることで、物語の流れが途切れず、感情の連続性が保たれます。

まとめ:涙の先に見える成長の光

アニメ映画『ヒックとドラゴン2』は、続編が前作を超える稀有な例であり、アニメーション映画の金字塔の一つです。物語の深化と感情の豊かさのすべてが前作を上回っていました。

本作が何より素晴らしいのは、この映画が「成長には痛みが伴う」という厳しい真実から逃げなかったことです。大切な人との別れ、重すぎる責任、自分の限界との直面──これらは誰もが通る道です。本作は、それを美しく、悲しく、そして希望を持って描き切りました。

そしてヒックとトゥースの物語は、まだ終わっていません。ヒックとドラゴン 聖地への冒険 があなたを待っています。

各サイトのレビュースコア

『ヒックとドラゴン』シリーズ第2作は、前作の成功に安住せず、少年の冒険譚を世代交代と責任の物語へと大胆に拡張した続編だ。
スケールアップした映像とドラマ性の深化が同時に成立している点で、アニメーション続編の理想形のひとつといえる。

批評家評価と観客評価の乖離

批評家評価

  • Rotten Tomatoes(Critics):92%
  • Metacritic:70点台後半
    批評家は一貫して、
    「続編でありながらテーマを成熟させた構成」
    「アニメーション表現の飛躍」
    を高く評価している。
    特に“親から子へ託される役割”という普遍的主題が、ファミリー映画の枠を越えて語られている点が支持された。

観客評価

  • IMDb:7.8 / 10
  • Filmarks:4.0 / 5
  • 映画.com:4.0 / 5
  • Rotten Tomatoes(Audience):90%

全体として非常に高水準。ただし一部では「前作の軽快さが後退した」「物語がやや重い」という声も見られる。

乖離の有無と理由

本作は批評家・観客ともに高評価で、乖離はほとんど見られない稀有なケースだ。
ただし、

  • 批評家:構造・テーマ・演出の成熟を評価
  • 観客:感情的カタルシスとキャラクターへの愛着を評価

と、評価の“焦点”には違いがある。

プラットフォーム別傾向とレビューコメント

IMDb(7.8 / 10)

  • 「前作よりもドラマが深い」
  • 「アクションと感情描写のバランスが秀逸」
  • 「子ども向けと思って観ると意外に重い」

シリーズ全体を俯瞰した評価が目立つ。

Rotten Tomatoes

  • Critics:92 / 100
    • 「成熟した続編。感情とスペクタクルの両立」
  • Audience:90 / 100
    • 「胸に残る展開」「シリーズ最高傑作」との声も多い

珍しく両スコアがほぼ一致し、作品の完成度が幅広く支持されていることを示す。

Filmarks / 映画.com(各 4.0 / 5)

  • 「映像美と音楽が圧倒的」
  • 「親子関係の描写が刺さる」
  • 「子ども向けと思って油断すると泣かされる」

日本では感情面への言及が特に強く、物語の“切なさ”が評価に直結している。

あにこれ(64.9 / 100)

  • 「アニメファン目線ではやや王道すぎる」
  • 「ドラゴン描写は素晴らしいが、物語は予測可能」

アニメ専門層からは、ハリウッド的構成への物足りなさも一部で指摘される。

主なノミネート・受賞関連

第87回 アカデミー賞

  • 長編アニメーション賞:ノミネート

ゴールデングローブ賞

  •  長編アニメーション映画賞:ノミネート

アニー賞(Annie Awards)

  •   作品賞(長編アニメーション)
  •   監督賞
  •   音楽賞(ジョン・パウエル)
  •   ストーリーボード/演出関連部門

  ※ 複数部門でノミネートおよび受賞

英国アカデミー賞(BAFTA)

  •   長編アニメーション映画賞:ノミネート

総合的な立ち位置

『ヒックとドラゴン2』は、観客向けでありながら、批評家の要求水準にも応えた国際的成功作だ。

娯楽性に寄りかかるのではなく、“成長とは何か”“受け継ぐとはどういうことか”を正面から描く姿勢が、
シリーズを単なる人気作から長く語られる作品群へと押し上げた。

前作の爽快感を期待した一部観客には重く映るが、その選択こそが本作を
「子ども向けアニメ」から「世代を超える物語」へと進化させた核心である。

ドラゴンと共に空を飛ぶ自由はそのままに、物語は確かに大人の高度へと到達している。

本ページの情報は 時点のものです。
各サイトの最新スコアは各々のサイトにてご確認ください。

このページではU-NEXTで配信中のヒックとドラゴン2から執筆しました。

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このページは 時点のものです。
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