貧富の差を時間という通貨で表れる社会 – TIME タイム

3か月 ago

3.7

時間が通貨の代わりになっている設定が面白い。 1分1秒を必死に生きるスラムの人々と時間の無駄に使う富裕層。資本主義社会への抵抗が分かりやすく描かれていると思う。

原題
In Time
公式サイト
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/time
監督
登場人物
ウィル・サラス

Actor: ジャスティン・ティンバーレイク

主人公。スラム街で母親と二人暮らし。マフィア集団から富裕層の男性を救ったことをきっかけに、117年という莫大な時間を手にする。

シルヴィア・ワイス

Actor: アマンダ・サイフリッド

富裕層の娘。父親フィリップによる締め付けの強い世界で暮らしてきた。ウィルとの出会いが彼女の人生を大きく変えることとなる。

タイムキーパー・レイモンド・レオン

Actor: キリアン・マーフィー

タイムキーパー。怪しい時間の流れがあればすぐに駆け付ける。突然莫大な時間を手にしたウィルを追う。

レイチェル・サラス

Actor: オリヴィア・ワイルド

ウィルの母親。スラム街で暮らしている。不平等な社会の仕組みの中、常に時間切れと隣り合わせの生活を送ってきた。

ヘンリー・ハミルトン

Actor: マット・ボマー

富裕層の男性。あまりにも莫大な時間を所持しており、それを持て余している。自分を救ったウィルに、時間を託す。

フォーティス

Actor: アレックス・ペティファー

スラム街を中心に時間を奪うことで生活をしているマフィア集団のボス。他人から時間を奪いつつもタイムキーパーの監視の目をかいくぐる。

配給会社

ここがおすすめ!

  • とにかく設定が面白い
  • 豪華なキャスティング
  • ディストピアと不老不死についての問い

あらすじ

時間=通貨!?これまでの常識を覆す衝撃のタイムリミットSFアクション!! 全ての人類は25歳で成長が止まる 科学の進化により老化を克服した近未来、そこでは“時間”が“通貨”となり世界を支配していた。人間の成長は25歳で止まり、余命(時間)は労働により稼がなければならなかった。

公式ウェブサイト

「時は金なり」、“Time is Money”とはよく耳にします。本作はまさにこの言葉を映画にした作品となっています。本作の監督は映画『トゥルーマン・ショー』などで知られるアンドリュー・ニコルが監督を務め、歌手としても活躍する俳優のジャスティン・ティンバーレイクが主演したことでも、大きな注目を集めました。そして予告編が公開されるや否や、一躍話題作となり、予算が4千万ドルの制作費に対して、興行収入が1億7千万ドルとなり世界中で人気を集め、ヒット作品となりました。

「時は金なり」な設定が面白い

映画『TIME/タイム』が人々の関心を引き付けた理由は、ひとえに「通貨が時間となった近未来」という設定だといえます。その斬新な設定は予告編が公開された時から話題となりました。実際に作品を見てみても、この設定の斬新さは抜きんでて目を引くものだと感じます。「時は金なり」は世界中で通用する概念でありつつも、それを実現させた設定の物語はあまり多くないため、この設定が大きな注目を集めたのも納得です。

映画の冒頭ではこの設定に基づいた本作の世界観が説明されていますが、このシーンも非常にアイコニックだと思いました。特に、コーヒー屋での「コーヒーが一杯4分」「昨日は3分だったじゃないか!」という客とのやり取りはとてもアイコニックでした。他にも、交通運賃や日当が時間で支払われることを説明する場面は他にはないシーンで、この作品の設定を説明するのにとてもうまいシーンだな、と感じました。他にも主人公であるウィルは冒頭で工場で働くときの給料が1日分の時間であり、働くことができなくなると時間がなくなり、イコール死ということも逼迫した生活であることを垣間見えました。

ただ残念なのは、作品が進むにつれてこの設定が生かしきれていないと思える場面が増えていくことです。設定を突き詰めると矛盾が複数発生し、展開としてもありきたりになってしまい、せっかくの設定がもったいないな、という印象を抱かざるを得ませんでした。世界観の設定だけで引き付けられる人は多いはずなので、設定をフックとしつながらもよりオリジナリティのある展開があると良いと感じました。

今となっては豪華なキャスティング

映画『TIME/タイム』は、大人気スターのティンバーレイクがウィル役で主演することで、公開前から話題となっていました。しかしながら、本作公開後に出演した他の作品で知名度を上げたり実力を認められたりしたキャストも多く、今となっては豪華なキャスティングだったといえます。

例えば、ヒロイン・シルヴィアを演じたアマンダ・サイフリッドは、当時も若手の女優として大きな注目を集めましたが、その後に2012年公開された映画『レ・ミゼラブル』にコゼット役で出演し世界的に実力が認められています。さらに、2020年の映画『Mank/マンク』への出演で数々の賞へのノミネートを果たしました。

また本作でヴィランのタイムキーパー役だったキリアン・マーフィーは数々の映画で光る演技力を見せた名脇役として知られていましたが、2023年の映画『オッペンハイマー』で主演し、アカデミー主演男優賞をはじめとした数々の賞を総なめにしました。

ウィルの母親役のオリヴィア・ワイルドは俳優としてだけでなく、監督としても活躍しています。初監督作品『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』は批評家からの高評価を受け、多くの賞にノミネートおよび受賞を果たしています。ウィルに自身の時間を託したヘンリー役のマット・ボマーも、当時は主演ドラマ『ホワイトカラー』で人気を博していましたが、その後に出演した『ノーマル・ハート』や『フェロー・トラベラーズ』などといった作品でさまざまな賞へのノミネートおよび受賞を果たしています。

このように、映画『TIME/タイム』にはその後、目覚ましい活躍をした俳優陣がたくさん出演しています。彼らの若かりし日の演技を存分に楽しむことができるのもまた、本作の大きな見どころの一つと言えるでしょう。

ディストピアと不老不死

映画『TIME/タイム』のニコル監督の特徴と言えば、ディストピアな世界を生み出すことのうまさが挙げられるでしょう。現在でも高く評価されている映画『トゥルーマン・ショー』をはじめとして、さまざまなタイプのディストピア作品を世に送り出しており、本作もその一作だといえます。ディストピアとして描かれる世界は常に、現実世界で起きている社会的な問題を問いかける特別な力を持っています。映画『TIME/タイム』でもまた、作品の設定が社会問題への問いかけとして機能しています。

本作ではお金がそのまま時間に置き換えられた世界が作られています。富裕層とスラム街を生きる人々の格差は、ダイレクトに現実世界の金銭に絡んだ格差社会を風刺しています。そこにひねりとして加えられたのが、不老社会における不死への問いかけです。

人間の不老不死に関する問いは、古代から長らく繰り返されてきた論題です。現在では医学などの科学的方面での研究が盛んですが、中世時代までには錬金術と重ねた研究も盛んで、エリクサーや賢者の石などといったファンタジーの世界に登場するようなアイテムとの関連性も高いです。錬金術では金の精錬だけでなく人間の肉体や魂にもまつわる研究がなされており、既に「金」と人間の「時」が同じテーブルで語られていました。このテーマは本作においてもまさに心臓部として機能しそうな気配がありました。それをまさに体現したのが、ヘンリーでした。

ニコル氏が作り上げたこの時が金となるユニークなディストピアと、作品の根底にあるテーマとなる不老不死についての人類の問いかけの組み合わせは、とても壮大な物語になりそうな気配を纏っていました。しかしながら、難解な作品にはしたくないという気持ちが働いたのか、本作ではそこまで話を広げることはできず、ある程度ありきたりな着地点で終わってしまった印象です。

しかしながら世界観のオリジナリティや根底を流れるテーマには興味深いものがあります。これらを楽しむだけでも見ごたえはある作品になっていくと感じる作品でした。

各サイトのレビューサイトのスコア

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