猿の惑星/キングダム – 新しい猿(エイプ)のサーガーが始まりました。

3.5

SF金字塔「猿の惑星」シリーズ最新作『キングダム』は必見!リブート三部作から300年後の世界で、猿と人間の立場が逆転した新秩序を描きます。 Weta FXによる圧巻の映像美で、エイプたちの感情豊かな表情や毛並みまでリアルに再現。まるでオープンワールドゲームのような壮大な冒険は、ノアの成長と共に「支配」「自由」「共存」のテーマを深く問いかけます。 複雑な人間と猿の描写、そして今後の展開に繋がる伏線も満載であり、新しいシリーズが始まったと感じさせる作品です!

原題
Kingdom of the Planet of the Apes
公式サイト
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/kingdom-apes
配給会社
制作会社

ここがおすすめ!

  • 圧巻の映像美と進化したエイプの表現
  • オープンワールドゲームをプレイしているかのような冒険
  • 単純ではない「敵」と多層的な人間描写

あらすじ

人類は野生化し、猿たちが支配者として君臨していた300年後の地球。巨大な王国を築く独裁者プロキシマス・シーザーによって村と家族を奪われた若き猿ノアは、人間の女性ノヴァと共にプロキシマスの絶対的支配に立ち向かう。

猿の惑星/キングダム|20世紀スタジオ公式

SF映画の金字塔「猿の惑星」。2011年から2017年にかけてリブートされ2024年に続編となる『猿の惑星/キングダム』が公開されました。リブートは過去作とは異なる時間軸と新たなキャラクターで描かれる壮大な物語となっており、そんな時間軸の主人公であったシーザーがリブート最終章で役目を終えるかたちで亡くなります。そしてシーザー亡き後の新たな世界を舞台に、人間と猿の立場が完全に逆転した新たな秩序が描かれた世界となっています。

「猿の惑星」シリーズの歴史と「キングダム」が描く世界

「猿の惑星」の物語は、1960年代にフランスの作家ピエール・ブールによる小説『猿の惑星』が原作です。特に有名なのは、1968年から公開されたオリジナル三部作でしょう。1960年代から2024年と長い歴史を持つシリーズですが、今回の『キングダム』は、リブート三部作から約300年後の世界を舞台にしています。

リブート三部作で猿インフルエンザの変異種により知能が退化し、言葉を話す能力も失い始めていました。リブート1作目のラストでインフルエンザが世界に蔓延して以降、人類文明は崩壊寸前であり、まさに絶滅への道を歩んでいる最中でした。一方で猿たちはシーザーのもと知性を持つ種として社会を確立し、人類との共存を模索しつつも、生存と自由のために戦い続けていました。この時点では、人類はまだわずかながら文明を維持し、シーザーたち猿と対等、あるいはそれ以上の力を持つ「支配する種族」としての側面を残していました。

AIで作成したイメージ画像

そして『聖戦記』のラストで、シーザーの理念が猿たちに伝わり300年が流れた『キングダム』の世界では、状況は一変します。

人類は完全に文明を失い知性もさらに退化し、もはや言葉を発せずにいます。それはより動物に近い野生の存在として描かれます。猿たちからは「エコーズ(こだま)」と呼ばれ、道具も使えず言葉も話せない、まさに「野生動物」のような姿になっています。ごく一部の(メイを含めた)人間だけが、言葉を話し過去の知識や文明の痕跡をわずかに保持しているにすぎません。

AIで作成したイメージ画像

対照的に、猿たちはこの世界の新たな「支配種」として君臨しています。各地に独自の部族社会を築き、文化や掟、信仰を発展させているのです。廃墟となった人類の建造物を自分たちの生活空間として利用し、シーザーの教えは伝説として語り継がれていますが、その解釈は部族によって様々に歪められている場合もあります。もはや人類は猿にとって脅威ではなく、むしろ彼らの捕食の対象になったり、従属させる存在として扱われるようになりました。

この300年たった『猿の惑星/キングダム』の世界観は、まさにこのリブートシリーズとは打って変わり、人類と猿の立場が完全に逆転した世界は、どこか旧作で主人公が宇宙船から降り立った世界観に近い印象を受けまず。

そしてシリーズを長く見ている人からすれば、「ここで繋がるのか!」という驚きを感じるはずです。

新たな猿の惑星のサーガの始まり

まず冒頭のシーザーの埋葬シーンは、過去シリーズのファンにとって特別な意味を持ち、新しいシリーズの始まりを予感させる掴みとなっています。300年が経過し、エイプたちは文化・知性的に進化しており、自然に配慮した掟や部族名、成人となるための試練などが描かれています。

そして物語は、若き猿・ノアが旅を通じて世界の広さや複雑さを知り、自分の信じる「正しさ」を模索するという成長譚の側面も持っています。彼の視点を通じて、「支配」「自由」「共存」といったテーマが浮かび上がります。ここで興味深いのは、主人公の名前が旧約聖書で方舟を作り種を保存し導く「ノア」と同じである点です。

ノアは旧約聖書「創世記」の6章から9章に登場する人物です。

神は悪に満ちた地上を滅ぼすため大洪水を計画しますが、義しいノアを選び、方舟の建造を命じます。ノアは神の指示に忠実に従い、家族と動物たちと共に方舟に乗り込み、大洪水を生き延びました。洪水後、ノアは神に感謝の献げ物をし、神は二度と大洪水で世界を滅ぼさないという契約のしるしとして虹を与えました。ノアは新たな人類の祖先となり、信仰と服従の象徴とされています。

新しい登場たちが織りなす物語

本作で特に印象的だったのは、猿と人間のキャラクター描写の深さです。

主人公ノアをはじめ、オラウータンのラカや、メスのチンパンジーアヤ、そしてノアの仲間であるスーナなど、登場するエイプたちの表情や顔の模様、形が非常に豊かに表現されています。俳優たちが「エイプスクール」で動きを学び、個性的で感情豊かなエイプたちが描かれている点が特に心に残りました。

敵役のプロキシマ・シーザーも、力任せではなく、知的な探求心を持ち、猿たちの未来や惑星全体の支配権を考えて行動する、奥行きのあるキャラクターとして描かれています。プロキシマは、人間を支配しないために彼なりの考えを持ち、シーザーの教えを都合よく歪めて猿たちを従わせる姿は、人類が過去に歩んだ道に似ていると指摘されており、このようなキャラクター描写は単純な悪役ではなく知識をもった悪役でした。

一方で、人間の描写も非常に興味深いものでした。人間は圧倒的な弱者として描かれ、隠れて生き残り、時には暴力も辞さない姿がショッキングに表現されています。特に、これまでのシリーズで「ノバ」と呼ばれていた少女が、実際にはメイという名前を持っていたことも明かされます。人間は他者を信じることができない臆病な生命体として描かれており、過去作よりも弱者としての側面が強調されています。ラストシーンでメイが銃を隠し持っていたことや、ノアがラカからもらったシーザーのマークをメイに渡すシーンは、今後の展開に繋がりを持つエモーショナルな瞬間として描かれています。

まるでオープンワールドゲーム!進化する映像美とWeta FXの力

『猿の惑星/キングダム』は、これまでのシリーズとは異なり、新たな主人公「ノア」の物語となっています。ノアは、とある村の若者。彼は三部作の主人公であるシーザーのような伝説的な存在として描かれていますが、同時に人間という存在を知らず、あくまで自由なエイプの世界の中で生きています。

エイプたちが生きる世界は、崩壊した人間社会に近い文明が森に覆われた廃墟を舞台としており、まるでオープンワールドゲームをプレイしているような感覚を覚えました。特に、朽ちたビルに登るシーンや、敵と対峙し倒さなければならない展開は、近年のゲーム作品、例えば「The Last of Us」のような世界観にも通じるものがあります。140分という長尺の映画ながらも、ゲームの世界に入り込んだような没入感を味わえる作品でした。

この壮大な世界観とリアルなキャラクター表現を支えているのが、ピーター・ジャクソン監督率いるWeta FX(旧WETAデジタル)の卓越した技術です。彼らは、キャラクターのモーションキャプチャーにおいて世界をリードしており、本作でもその真価を発揮しています。CGによる長回しのシーンや、水中でのエイプたちの毛並みの細かな表現、そして感情豊かな表情は、Weta FXが『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』で培ったシステムも活用しているとのこと。もはや俳優が演じていることを忘れてしまうほど自然で、圧巻の映像美でした。

ただノアの友人?であるアナヤスーナ の違いは分かりづらかったです。チンパンジーであるノアとオラウータンであるラカははっきりと分かるのですが、冒頭のノアの部族間でのシーンは正直いうと誰が誰だかわからないという印象です。父親と母親の違いなど歳の差は判断できこれはWeta FXの技術力の高さが伺えるのですが、アナヤスーナといった年代が近いキャラクター同士が並ぶとわかりづらいです。

これはまず顔の構造や体色の類似性が挙げられるでしょう。人間キャラクターはメイを含めて髪型、服装など多様な特徴を持っていますが、ノアを含めてのチンパンジーは、毛皮の色がほとんどが濃い茶色か黒であり、そして最小限の衣装の違いしかありません。このため、特に薄暗いシーンでは、誰が誰なのか難しかったです。また本作ではモーションキャプチャーを通して描かれる猿たちの演技は非常に細かく、微妙なニュアンスまで表現されています。しかし、アニメーションや漫画のように感情が誇張されてはいなく、より人に近い感情表現に近づけたのかもしれません。ただこれが一目見ただけでは彼らの感情を「読み取る」のが難しいです。

これは実写映画「ライオン・キング (2019年)」にも言えることですが、VFXで表現された主役と敵は分かるのですがどう種族での友人関係となると判断がつきにくいです。

まとめ:これからのサーガへの期待

「猿の惑星/キングダム」ではほとんどの猿が流暢に喋れるようになっていたり、人間的な表情をするようになっていたりと、時間経過の要素がたくさん盛り込まれており新しい時代が始まったと感じさせえる映画でした。そして猿と人間の立場が完全に逆になっていて、メイが喋った時の猿の反応が1968年版の1作目の人間の反応と同じあることが興味深いです。

そして人間の存在は完全な「敵」でも「希望」でもあり得るという哲学的な問いは、シリーズの持つ深いテーマ性を感じさせます。またいくつかの謎が残る展開や、言葉を持つ人間といった新たな伏線や設定が多く、”これから”を期待させる映画となっていました。

各サイトのレビューサイトのスコア

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このページではDisneyPlus Jpで配信中の猿の惑星/キングダムから執筆しました。

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人間と知的な猿が支配権をめぐって衝突する世界を描く。原作はフランスの作家ピエール・ブールが1963年に発表した小説『猿の惑星(La Planète des singes)