2015年に公開され、人気を集めた映画『キングスマン』。スパイアクションと英国のジェントルマン文化を織り交ぜたコンセプトが話題となり、シリーズ化が決定しました。そんな『キングスマン』の続編として2018年に日本で公開されたのが、映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』です。初作ファンを満足させたこの続編はどのような点が魅力なのかを執筆しました。
おなじみのキャラクターの復活
映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』では、初作で登場したキャラクターの中でも、意外な人々が顔を見せてファンを驚かせました。一番大きなサプライズは、前作で死んでしまったはずのハリー・ハートの復活でしょう。演じるコリン・ファースは続編に出演しない、という報道も一時期はあったためファンは心配していましたが、最終的には見事な完全復活を迎えました。また前作で主人公エグジーと敵対していたチャーリーが、本作では本格的にヴィランの一味となって登場したのも、驚きだったと言えます。またティルデ王女の復活ではないでしょうか。前作では、エグジーが救出する人質として少し登場しただけでしたが、本作ではエグジーの恋人としてヒロイン枠で再登場。これは予想外な再登場でした。

もちろん、主人公であるエグジー、そしてなんだかんだエグジーの善き仲間となったマーリンの再登場は、ファンを安心させました。反対に、今後も活躍すると思われていたランスロットが短い出番しかなく、これにもまた驚かされました。キャラクターという側面で見ると、非常に驚きの多い続編だったな、と思います。
英国紳士とアメリカン・カウボーイ
『キングスマン』といえば、英国紳士文化の使い方が多くのファンを惹きつけました。特に、ウィカムのウィリアムの名言を引用した「礼儀が紳士を作る(Manners maketh man)」のセリフは、たくさんの人々の心の響き、ついついまねしてしまう人もいたのではないでしょうか。
そんな英国のジェントルマン文化と対比するかのように、映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』で新たに登場したのがアメリカの諜報組織・ステイツマンです。キングスマンのコードネームがアーサー王と円卓の騎士団の伝説に基づいていたのに対し、ステイツマンのコードネームは酒の名前に基づいています。お酒のコードネームだと日本人はついつい『名探偵コナン』の黒の組織を思い出してしまうかもしれませんね。アメリカンウィスキーだとバーボン Bourbon(バーボン・ウィスキー) 本名は降谷零(安室透)、公安警察のスパイがいます。そんなステイツマンはスーツを基本とするキングスマンと違ってブーツを履き、テンガロンハットをかぶっているなど、見るからに西部劇から出てきた様相です。武器も投げ縄や銃など、分かりやすくアメリカらしさを表現していて、その対比がとても面白かったです。思いのほか、テキーラの出番が少なかったのには驚きましたが。これは海外の人が日本といえば日本刀を持っているみたいな感じでしょうか。

英国の紳士文化と米西部のカウボーイ文化が対比されているのは、非常に興味深かったのですが、ステイツマンのガジェットは残念ながらキングスマンほど興味をそそられませんでした。というのもキングスマンは暴力とはかけ離れた紳士然とした見た目の小道具が、意外な形で武器になっている、というのが魅力だったと思います。その一方で、ステイツマンの場合は見るからに武器になり得そうなものが比較的多かったように思いました。そういう意味では、続編から登場する、というのがステイツマンには合っていたのかなと改めて思いました。
ユーモア、ヴァイオレンス、そして豪華ゲスト
映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』は、前作同様にユーモアやヴァイオレンスなシーンがたくさん登場します。アクションシーンのスケール自体は、前作よりも大きくなっていたように感じました。そしてなんと言っても本作で大活躍していたのが、歌手のエルトン・ジョンではないでしょうか。ご本人が本人役で出演しており、おそらくゲストなのでしょうが、カメオ出演ではなくそこそこ長い時間出演しています。英国を代表するレジェンドなので、このシリーズにはぴったりだと思いました。ちなみに、エグジー役のタロン・エジャトンは後にエルトン・ジョンの伝記映画で彼の役を演じています。
また本作では前作よりも女性の存在感があったように思います。特に本作のヴィランである、ジュリアン・ムーア演じるポピーは、アメリカの家庭的な女性のような見せかけをしていて、英子紳士やアメリカのカウボーイと対比的に演出していたのも面白く、クスリと来るポイントでした。
総評
映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』は約2時間半と眺めの映画ではあるものの、飽きることなく最後まで楽しめる作品です。本作から新たに紳士とカウボーイの違いにまつわるユーモアがちりばめられているのは見どころです。それに加えて、前作から引き継がれているユーモラスな部分とヴァイオレンスなアクションが、見ている人をハラハラとさせます。意外なキャラクターの活躍や、キャラクターとの別れなど、予想のつかない展開も見どころの一つです。ぜひ、前作と合わせて楽しんでいただきたい一作でした。