ディズニー映画『くるみ割り人形と秘密の王国』は、興行的・批評的には苦戦したものの、魅力も持ち合わせています。クリスマス映画として、ヴィクトリア朝のロンドンを舞台にした家族の物語は、ゴーストストーリー的な要素も交えつつ、クリスマスムードを盛り上げます。チャイコフスキーの楽曲は現代風にアレンジされ、ラン・ランのピアノソロが彩りを添えています。また、圧倒的な美しさで描かれる雪景色は、クラシカルな衣装や鮮やかなキャラクターの色合いを引き立て、視覚的な魅力を生み出しています。ストーリーに物足りなさはあるものの、クリスマス気分を味わうには十分な一作でした。
- 原題
- The Nutcracker and the Four Realms
- 公式サイト
- https://www.disney.co.jp/movie/kurumiwari
- 監督
- 登場人物
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- クララ・シュタールバウム
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Actor: マッケンジー・フォイ
本作の主人公。母親を亡くし、ひどく悲しんでいる。聡明で手先が器用。亡き母の影を追い、秘密の王国へ迷い込む。
- シュガー・プラム
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Actor: キーラ・ナイトレイ
お菓子の国の摂政。妖精のような存在。秘密の王国に迷い込んだクララを快く出迎え案内役を務める。
- キャプテン・フィリップ
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Actor: ジェイデン・フォウォラ=ナイト
秘密の王国の、忠誠心溢れる兵士。王国で唯一のくるみ割り人形。クララの王国での冒険を支えるキャラクター。
- マザー・ジンジャー
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Actor: ヘレン・ミレン
第4の国の摂政。秘密の王国の住人たちから、とても恐れられている。クララの母親とは良好な関係を築いていた。
- ドロッセルマイヤー
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Actor: モーガン・フリーマン
クララの名付け親。発明家で、クララの母親とも親しくしていた。自身の屋敷で、ユニークなクリスマス・パーティーを催す。
- 配給会社
ここがおすすめ!
- クリスマスにぴったりな家族向け映画
- チャイコフスキーの美しい音楽
- 圧倒的な雪景色の映像美
あらすじ
愛する母を亡くし心を閉ざした少女クララは、“くるみ割り人形”によって<秘密の王国>にいざなわれる。それは、亡き母に隠された真実を知る驚くべき冒険の始まりだった…。 主人公クララには、今注目の美少女マッケンジー・フォイが抜擢され、キーラ・ナイトレイ、モーガン・フリーマン、ヘレン・ミレンら豪華キャストたちが共演。チャイコフスキーの永遠の名曲が全編を彩り、バレエ界からはミスティ・コープランドとセルゲイ・ポルーニンが特別出演するほか、音楽界からはピアニストのラン・ランやアンドレア・ボチェッリ&マッテオ・ボチェッリ等
公式ウェブサイト
名作と呼ばれる作品は、その時代を反映した新しい作品としての作り直しを試みられることが多々あります。その代表例の一つが、『くるみ割り人形』といえるでしょう。クリスマスの定番となっている本作は、クリスマス時期のバレエの舞台の題材としてもよく選ばれますが、複数回にわたって映像化がなされています。その反面、『くるみ割り人形』の実写版作品は近年、成功させるのが難しい題材ともなっています。2018年に劇場公開された映画『くるみ割り人形と秘密の王国』も、興行的にも批評的にも苦戦した一作です。その反面、一定の魅力を持った作品でもありました。
『くるみ割り人形』ってどんな話?
クリスマスの夜、少女クララがもらったくるみ割り人形。
夜中になると人形が王子に変わり、クララをお菓子の国へ連れて行く──
「くるみ割り人形(Щелкунчик(ロシア語)/The Nutcracker(英語))」は、チャイコフスキーが作曲したバレエ作品で、クラシック・バレエの中でも特に有名な演目の一つであり、夢か現実か分からない、幻想的な冒険物語となっています。
1892年に初上演されて以降は『白鳥の湖』『眠れる森の美女』と共に「3大バレエ」とも呼ばれているほどバレエとしても有名あり、とくに音楽がとても美しく「花のワルツ」「金平糖の踊り」「行進曲」などは、学校の授業などで耳にしたことのある名曲ではないでしょうか。
日本でも『くるみ割り人形』はクリスマスシーズン(11月〜12月)に全国各地のバレエ団がこぞって公演を行っているようです。有名な新国立劇場バレエ団でも毎年のように上演されています。
クリスマスの家族向け映画としての魅力
映画『くるみ割り人形と秘密の王国』の最大の魅力の一つは、クリスマス映画の家族向け映画として機能している点です。12月に入りクリスマスの季節となると、クリスマスムードに浸りたくなる方は多いのではないでしょうか。その定番作品の1つが、『くるみ割り人形』です。一番大切な役割は、クリスマスの雰囲気を感じさせることです。

映画『くるみ割り人形と秘密の王国』は、その点においては成功しているといえると思われます。本作で展開されているクリスマスを舞台とした家族の物語は、クリスマスの雰囲気を醸し出すのに十分な要素を兼ね備えているからです。本作ではヒロインのクララが亡き母親の影を追うようなストーリー展開となっています。本作の舞台であるロンドンのある英国では、クリスマスにはゴーストストーリーを楽しむことが定番となっていて、母の足跡をたどるクララの冒険は、一種のゴーストストーリー的な要素も持ち合わせているように感じます。また、時代設定がヴィクトリア朝になっているのも、クリスマス向けのゴーストストーリーとしては良い材料になっています。
ゴーストストーリー
幽霊や心霊現象が登場する物語で、単に怖がらせるだけでなく、古い屋敷や霧深い風景が織りなす不気味な雰囲気が特徴です。昔のクリスマスは、死者の魂と生者の世界が近づく時期だと考えられていました。暖炉のそばで怖い話を語り合うことで、外の寒さや暗闇から身を守り、家族や友人との絆を深める役割もあったんです。チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』も、実はこの伝統から生まれたゴーストストーリーの一つ。
全体的なプロット面ではやや物足りなさを感じる部分もあるかもしれませんが、家族全員でクリスマス気分に浸る映画としては、十分な力を発揮しているのではないでしょうか。
チャイコフスキーの音楽の魅力
映画『くるみ割り人形と秘密の王国』は、やはり音楽も大きな魅力を放っています。『くるみ割り人形』といえば、前述にも述べた通り有名音楽家であるチャイコフスキーの手掛けたバレエ音楽が最も有名です。本作では、その楽曲たちが本編で余すことなく使用されています。単純に彼の音楽をそのまま使用するのではなく、現代風のアレンジも取り入れていて、聞く人々に新鮮さを与えています。物語自体は『くるみ割り人形』と大きく異なっていますが、チャイコフスキーのなじみの音楽を聴くと、一気に『くるみ割り人形』の世界に溶け込んだ気持ちになれます。そして本作ではチャイコフスキー以外の新たな楽曲も追加されています。
本作の魅力となる音楽をより一層引き立てているのが、ピアノの音色ではないでしょうか。本作におけるピアノソロを担当しているのは、有名なピアニストであるラン・ランさんです。日本では、映画『のだめカンタービレ 最終楽章』の主人公のピアノ演奏を担当したことでも話題となった人物です。表情豊かな彼のピアノの音色は、チャイコフスキーの楽曲の魅力をより一層引き立てていたように思います。
ストーリー面での物足りなさが引き合いに出されがちな本作ですが、音楽ひとつをとっても独自の世界観を持っていますし、楽しむ要素は十分にあったように感じました。
雪景色の映像美の魅力
映画『くるみ割り人形と秘密の王国』で主役とも言えそうなほどに目を引くのが、やはり雪景色の映像美です。クララが迷い込んだ先は、辺り一面が雪景色の秘密の王国、というくだりはどこか映画『ナルニア国物語/第1章: ライオンと魔女』を彷彿(ほうふつ)とさせてしまって既視感があるかもしれません。しかし、映画界における技術は確実に向上しているため、他の作品と比較しても圧倒的な美しさを誇る雪景色を楽しむことができます。あの雪景色を見ただけで、クリスマスがやって来たんだな、と胸を躍らせること間違いありません。

また、この雪景色は他の色合いを上手に引き立たせる役割を担っていたとも感じました。秘密の王国のクラシカルな色合いや、くるみ割り人形をはじめとした兵士の格好は、雪景色の中で良く生えます。また、お菓子の国の摂政であるシュガー・プラムのピンクがかったビジュアルも、真っ白の雪景色の映像のおかげで際立っていたように思います。第4の国の摂政マザー・ジンジャーのビビッドな色合いもまた、雪景色と上手な対比になっていました。
まとめ:クリスマスムード満載の映像と音楽は必見!
圧倒的な美しさを放つ雪景色と、それが引き立てる他の色合いとのバランスが絶妙で、視覚的には非常に楽しめる要素が多かったと思います。 映画『くるみ割り人形と秘密の王国』は、決して成功した作品ではありませんでした。多くの指摘が上がっている通り、物語の面で足りない部分が多かったかもしれません。しかしながら、設定やチャイコフスキーの素晴らしい音楽、そして美しい雪景色など、クリスマス映画に求められている要素はクリアしている作品だとも感じました。クリスマス気分に浸りたいときに、選択肢に加えていただきたいと思える一作でした。
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