映画 ノルウェー
Netflix『トロール』:ノルウェーの山が目覚めるとき、神話は現実になる

Score 3.2

ノルウェーの山脈の奥深く、千年の眠りを破って巨人が動き出す。その映像が画面に現れた瞬間、これはただの怪獣映画ではないと直感するでしょう。 霧に沈むフィヨルド。岩と土でできた巨人の輪郭。 そして、父から娘へと受け継がれた「目ではなく心で見なさい」という言葉。 2022年12月、Netflixに静かに現れた一本のノルウェー映画は、 配信からわずか3か月で1億300万回視聴を記録し、 非英語映画として史上最多視聴の座に就きました。 世界が熱狂した理由は、スケールではありません。 この怪物が、孤独だったからです。

原題
Troll
公式サイト
https://www.netflix.com/title/81245455

© 2022 Netflix, Inc.

監督
登場人物
ノラ・ティーデマン

Actor: アイネ・マリー・ウィルマン

政府に召集された古生物学者。幼少期に父からトロール伝承を教わり、心の奥で信じ続けてきた存在が現実となる

アンドレアス・イサクセン

Actor: キム・ファルク

首相直属の補佐官として、当初はノラの「監視役」として派遣される。

クリストファー・ホルム大尉

Actor: マッツ・ショーガード・ペッテルセン

ノルウェー軍特殊部隊FSKの大尉として調査チームに同行する。

配給会社

ここがおすすめ!

  • 怪獣映画が好きで、ゴジラやキング・コングを観尽くした人。
  • 極端なグロ描写がなく、13歳以上推奨の安心設定。リビングでの週末鑑賞に最適
  • 脳を休めながら観られる王道モンスターパニックとして、VOD視聴に最適な101分です。

あらすじ

ノルウェーの山岳地帯で起きた爆発が、古代のトロールを目覚めさせる。政府は気鋭の古生物学者を派遣し、この巨大な脅威を食い止めようとする。

Netflix公式ページ

2022年12月1日、Netflixに一本のノルウェー映画が静かに登場しました。タイトルはシンプルに『トロール』。

公開直後から急速に視聴数を伸ばした本作は、配信開始から最初の3か月間で1億300万回視聴を記録し、Netflix史上最も再生された非英語映画の座に就きました。93か国でトップ10入りを果たし、ノルウェー・アメリカ・イギリスでも首位を獲得しました。

なお公開からわずか2週間の時点で、すでに総視聴時間1億2800万時間を記録し、非英語作品のNetflixトップ10で首位に立っていたという事実も、この快進撃の初速を物語っています。

映画「トロール 2022」のメガホンを握ったのはローアル・ユートハウグ監督です。 ローアル・ユートハウグ監督は『トゥームレイダー ファースト・ミッション』(2018)を手がけた実力者です。

ノルウェーにおけるトロールの文化的地位

「トロール」という存在はノルウェーに限らず北欧神話全般に登場しますが、 特にノルウェーでは国民的シンボルのひとつとして今も生活に根ざしています。

本作を語る上で欠かせない参照点が、2010年のモキュメンタリー映画『トロールハンター』です。 予算規模では本作に遠く及ばないものの、独自の雰囲気とリアリズムで 世界的に高い評価を獲得した「ノルウェー版トロール映画」として比較される一作です。 本作はその系譜に連なりながら、ジャンルのアプローチを大きく刷新した作品でしたね。

ノルウェーにおけるトロールの文化的地位

「トロール」という存在はノルウェーに限らず北欧神話全般に登場しますが、 特にノルウェーでは国民的シンボルのひとつとして今も生活に根ざしています。 キャスト・スタッフの一人は「トロールはノルウェーで育つ上で当然の存在で、 サンタクロースと同じくらい親しみ深い」と語っています。

撮影地のひとつフンダーフォッセンには、世界で最も写真に撮られるトロール像があり、 ノルウェー映画史においても名高いアニメ監督イヴォ・カプリーノが手がけた 大規模なトロール人形展示施設が存在します。

本作を語る上で欠かせない参照点が、2010年のモキュメンタリー映画『トロールハンター』です。 予算規模では本作に遠く及ばないものの、独自の雰囲気とリアリズムで 世界的に高い評価を獲得した「ノルウェー版トロール映画」として比較される一作です。 本作はその系譜に連なりながら、ジャンルのアプローチを大きく刷新した作品と 位置づけるのが適切といえるでしょう。

「怪物」ではなく「遺された王」

本作が単なるパニック映画に留まらないのは、トロールに「理由」があるからでしょう。

トビアスの研究と王宮地下の秘密が明かされることで、 このトロールが実はキリスト教の到来とともに家族を殺され、 洞窟に封じ込められたトロール王だったことが判明します。 彼の孤独な歩みは復讐ではなく、失われた家族の骸がある王宮へと向かう、 悲しみの帰路だった——この設定の重みは、物語後半に確かな感情的共鳴をもたらすでしょう。

ゴジラやキング・コングが積み上げてきた「怪物の悲劇性」という伝統を 正しく継承した設定といえます。 太陽の光を浴びて石に還っていくトロールの姿には予想を超えた切なさが宿っており、 峻烈とも形容すべきその最期のシーンは、本作でもっとも印象に刻まれる場面でした。

AIで作成したイメージ画像

怪獣映画の金字塔「ゴジラ」の方程式にトロールを代入する

物語の構造を端的に言えば、「眠れる巨人が目覚め、人類がそれを食い止めようとする」 というモンスターパニック映画の王道そのものです。

ノルウェーのドブレ山脈を貫く大規模な鉄道工事が引き金となり、 千年以上眠り続けていたトロールが目覚め、現代文明へと歩み始める。政府は古生物学者のノラ・ティーデマンを招集し、 軍と科学者がその巨大な脅威に対峙していくという流れです。

謎の揺れと破壊の痕跡から始まり、足跡の発見、トロールとの遭遇という 段階的な「見せ方」が序盤に丁寧に設計されています。『ジュラシック・パーク』へのオマージュとも取れる 「コップの水の波紋」を想起させるショットも挿入されており、 怪獣映画の様式美を意識的に継承している点が見受けられるでしょう。

AIで作成したイメージ画像

中盤以降は軍の攻撃が悉く空振りに終わり、 ノラが父・トビアスの研究ノートを頼りに弱点を探るという構造へと移行します。 終盤、王宮地下に隠された「トロールと人類の歴史的な秘密」が明かされる場面は、 物語に思いがけない深みを与えてくれるでしょう。看過できないのは、この物語構造の問題点です。 ゴジラもキング・コングも観てきた視聴者にとっては、展開がほぼ予測通りに進みます。

「政府は軍事力を優先し、主人公の意見を無視する」 「軍事作戦は失敗する」「主人公だけが真実を知っている」—— このジャンルのテンプレートを、本作はほぼ忠実に踏んでいるのです。

なぜ『トロール』の映像は世界を圧倒したのか

本作の白眉は、映像美と怪獣デザインの質の高さにほかなりません。

雪を纏う山岳、霧に包まれる渓谷、午後の陽光が差し込むフィヨルド。 これらの実景の中に、岩と土で形成された巨大なトロールのCGIが 極めて自然に溶け込んでいます。 「実際に生きた生物がそこにいるかのように見える」 そのクリーチャーデザインの精度は、驚嘆に値するでしょう。

アクション撮影においても、カメラアングルの巧みな活用によって 迫力と臨場感が丁寧に演出されています。 トロールが民家を踏み潰し、オスロへと迫る場面では、 高低差と速度感を駆使したカット割りが圧倒的なスケール感を生み出していました。 怪獣映画として評価するならば、映像クオリティは Netflixオリジナルの水準を大きく超えるハリウッド級といえるでしょう。

照明設計にも際立った意図が見受けられます。 日常シーンでは穏やかな自然光が人物の脆弱さを浮かび上がらせ、 トロールが登場するシーンでは霧と逆光が巨人に神話的な荘厳さをもたらす。 この光の対比が、静かに物語の緊張を高めているといえるでしょう。

父と娘の物語——人間ドラマの可能性と、惜しまれる類型性

映画「トロール」は主人公ノラと父トビアスの関係性が重要となってきます。幼い頃、トビアスはノラにトロールの伝承を語り聞かせ、「目ではなく心で見なさい」と教えていました。しかし成長したノラは科学者として父の主張を否定し、二人の間には深い溝が生じています。この断絶の構造は、北欧神話と現代科学という二項対立を人物関係に落とし込んだ、脚本上の誠実な選択といえるでしょう。

しかし、二人の和解には惜しむらくの急ぎ足が残ります。もう少し対話の時間が与えられていれば、クライマックスの悲劇が視聴者の胸により深く刻まれたはずです。父娘の軌跡はドラマの核として機能し得るものでしたが、それを十分に掘り下げる前に物語は次のアクションへと走り出してしまいます。

登場人物の造形全体を俯瞰すると、この問題はより鮮明になるでしょう。「主人公の意見を無視する頭の固い軍高官」「のんびりした善人の副官」「データより武力優先の政府」——このジャンルを何作も観てきた視聴者には既視感しかない配役が並んでいます。北欧神話という豊かな素材を扱いながら、そのポテンシャルを深掘りせず次のアクションへと切り替えてしまう場面が多く、「トロール神話の世界観にもっと踏み込んでほしかった」という印象は拭えないでしょう。

まとめ:神話の孤独は、画面の向こうにも届いてくる

Netflixオリジナル映画『トロール』は、王道の怪獣映画として申し分のない完成度を持っています。

ノルウェーの絶景とトロールのCGIが生み出す映像的な豊かさ、 そして「ただの怪物ではなく、孤独な遺物」として描かれるトロール像は、 単なるモンスターパニック以上のものを視聴者に手渡してくれるでしょう。

ストーリーの予測可能さや登場人物の類型性は、否定しようのない事実です。 しかしそれを承知した上でも、ノルウェーの霧の中から岩山のように立ち上がる 巨人の姿を目にした瞬間、そういった批判は少し遠のいていく気がします。

続編『トロール2』(Troll 2)は2025年12月1日よりNetflixで配信中です。 本作を観てからの視聴を推奨します。

各サイトのレビュースコア

ドーヴレ山脈の爆破工事が眠れる巨人を呼び覚ます──批評家は熱狂し、一般観客は半数が失望した異例の乖離が、この作品の本質を物語っている。

プラットフォーム別スコアとレビュー

IMDb(5.8 / 10)

国際的な観客が集まるIMDbでは5.8という平均を下回るスコアに留まり、熱烈な支持と強い反発が真っ二つに割れた珍しい評価分布を示している。北欧神話やスカンジナビア映画に親しみのあるユーザーほど評価が高く、そうでない層との温度差が顕著だ。

  • “An ancient and humongous creature, looking & sounding exactly like you have always imagined it from stories and drawings in children’s books, exploding — literally — out of a picturesque mountain landscape and promptly pursuing its way to the capital of Oslo. Awoken due to mankind’s inability to leave Mother Nature intact and at peace.”
    • 「子どもの頃の絵本でずっと想像してきた通りの姿の古代巨人が、絵画のような山岳風景から文字通り爆発するように現れ、オスロへと向かっていく。人類が大自然を開発しようとした代償として目覚めた存在だ」
  • “While the movie doesn’t reinvent the monster movie genre, I do like the more grounded approach to the story. The CGI for the giant troll looks really good and is some of the better looking CGI I’ve seen in a modern day movie.”
    • 「モンスター映画のジャンルを刷新するわけではないが、地に足のついたアプローチが好ましい。CGIのトロールはクオリティが高く、近年の映画の中でも出色の仕上がり」
  • “It’s like they are trying to make it more American. I was expecting something like the typical Norwegian movie. But I’m glad Netflix took it.”
    • 「まるでアメリカ映画にしようとしているかのようだ。典型的なノルウェー映画を期待していたが、Netflixが手がけたことには意義がある」
  • “Troll entertains, has good effects, destruction, lots of clichés, stupid humor, a frenetic pace, mythology, and stupidity in equal measure. A perfect film for anyone who just wants to have a good time.”
    • 「エンタメ性・特殊効果・破壊・陳腐なギャグ・疾走感・神話・バカさが均等に詰まっている。純粋に楽しみたい人には完璧な映画だ」

Rotten Tomatoes

Critics(批評家):90 / 100

批評家の間では高い支持を集め、「神話素材の活かし方」と「視覚的スペクタクル」への評価が軸となっている。一方で、ハリウッド大作の換骨奪胎にすぎないという批判的意見も存在し、スコアの高さに反して全会一致ではない。

  • Bloody Disgusting(Meagan Navarro):
    • “What Troll lacks in originality, it makes up for in fresh mythology. It’s fun enough and does deliver on spectacle, but most of all, it leaves you rooting for its magnificent creature.”
      • 「独創性の不足を新鮮な神話素材で補っている。十分に楽しめるスペクタクルを備え、何より壮大なクリーチャーを応援したくなる」
  • Screen Anarchy(Peter Martin):
    • “The movie feels faintly familiar, while refreshingly different, featuring new wrinkles that are well-considered and profoundly satisfying.”
      • 「どことなく既視感があるが、同時に清々しいほど異質。よく練られた新しい要素が深い満足感をもたらす」
  • South China Morning Post(James Marsh):
    • “The effects work is first-rate and the action efficiently handled, yet there is a frustrating lack of Scandinavian specificity — Uthaug more eager to emulate Jurassic Park and Godzilla than introduce viewers to his homeland’s unique folkloric threats.”
      • 「映像効果は一流でアクションの処理も的確。しかしスカンジナビアらしさが薄く、故郷固有の怪物伝承を掘り下げるよりも『ジュラシック・パーク』や『ゴジラ』の模倣に傾いているのは惜しい」

Audience(観客):51 / 100(Popcornmeter)

批評家スコアとの乖離は驚異的な39ポイント。これはRTが記録した「批評家/観客乖離」の中でも際立つ数値であり、Netflix主導のグローバルマーケティングが期待値を過剰に押し上げた結果と分析できる。

  • “It was cool to see a modern take on Nordic mythology! The story is interesting how it crosses government drama with fairy tales. Plus, the troll looks incredible!!”
    • 「北欧神話の現代的解釈が新鮮で、政府のドラマとお伽噺が交差する構成が面白い。トロールのビジュアルは圧巻」
  • “Troll’s decent visual effects aren’t enough of a reason to sit through its predictable story, cheesy dialogue, and uneven acting.”
    • 「まずまずの視覚効果も、予測可能なストーリー・陳腐な台詞・ばらつきのある演技を乗り越えさせてくれるほどではない」
  • “Dumb as f**k. Story and dialogue could be written by a ten-year-old.”
    • 「驚くほど頭が悪い。脚本と台詞は10歳の子どもでも書けそうだ」

Filmarks(3.1 / 5)

7,022件のレビューが集まり、辛口傾向のFilmarksにおいて3.1という数字は「可もなく不可もなく」の水準。批評家評とは反対に、「王道すぎて物足りない」という声が多数を占めた。

  • ノルウェー版のシン・ゴジラという感覚で、全体的に先が読めるベタな展開。でも大きなトロールが出てきて戦うという点では”まぁこれはこれで”と思える雰囲気がある。
  • トロールの見た目が年老いたおじいちゃんみたいで親しみやすい一方、もっとパニック映画らしい派手さを期待していたので盛り上がりには欠けた。ちょっぴり悲しいラストは予想外だった。
  • 地味。ゴジラのように光線を吐くわけでもなく、岩のような巨大な人型が歩き回るだけ。人間側から先に攻撃しておいてトロールが怒るのは当然では、という気持ちになった。
  • ストーリーはありきたり過ぎるし終わりは悲しすぎるが、迫力あるスケール感と主人公の父娘関係のドラマ部分は好感が持てる。王道のモンスター映画として観れば十分楽しめる。

映画.com(2.6 / 5)

映画.comでの評価は辛口で、日本の映画ファンが怪獣映画に求めるカタルシスや感情的決着への不満が集中した。「ゴジラ」「キングコング」などの参照軸で比較すると物足りなさが強調される傾向にある。

  • 怪獣映画の王道として観やすく、トロールの謎がノルウェーの民話と結びつく設定は斬新だった。ただ結末が悲しすぎる。人間の傲慢さの犠牲者であるトロールがなぜ死ななければならないのかを考えさせられ、「国が違っても怪獣が背負わされるものは変わらない」と感じた。
  • 父は娘を信じ続け、娘は父の研究を通じてトロールと向き合う構造は良いが、肝心の人間ドラマが薄い。トロールの悲しい最期を目撃した直後に主人公が晴れやかな表情を見せるのが解せず、感情移入の余韻が断ち切られた。
  • 映像やトロールのデザインはなかなか良いが、ストーリーはもろにB級。主人公たちの作戦がガバガバ過ぎてリアリティや緊張感を削いでいる。北欧神話やトロールに興味がある人なら楽しめると思う。

総評

批評家スコア90%と観客スコア51%という39ポイントの乖離──本作を語るうえで最も重要な数字はここに集約される。批評家たちが評価したのは「北欧神話という固有素材の活用」と「非ハリウッドの文脈で成立した大作的スペクタクル」という二点だ。確かに、ゴジラでもキングコングでもない独自の怪獣文化圏を世界規模の配信で可視化した功績は小さくない。

本ページの情報は 時点のものです。
各サイトの最新スコアは各々のサイトにてご確認ください。

このページではNetflix Jpで配信中のトロールから執筆しました。

Netflix Jpで配信されている「トロール」のあらすじ、感想、評価を紹介しました。気になる方は、ぜひ下記URLのNetflix Jpからチェックしてみてください!

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このページは 時点のものです。
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