Netflixオリジナル映画 モンスターアクション「トロール2」を語る前に、その出発点となった前作について触れておきます。
2022年12月1日にNetflixで配信された「トロール」は、Netflixにおける非英語映画史上最多の視聴記録を誇る作品です。全世界で累計1億300万回以上視聴されたとされ、その数字は今なお破られていません。
前作の魅力は「シンプルさの勝利」にあったと思います。ノルウェー・ドブレ山脈の爆破工事によって目覚めた古代のトロールが首都オスロへと向かう。
この一本道の筋書きに、古生物学者ノーラと偏屈な父トビアスの葛藤を絡め、ノルウェーの雄大な自然を背景に怪獣映画の王道を丁寧になぞった作品でした。
オーソドックスながら完成度の高い一作として好評を得ており、「Netflixオリジナルでは珍しいノルウェー産の実写怪獣映画で、神話のトロールとは違い生物として描いていたのが特徴」という声も多く、作り込まれたCGIと北欧の大自然の融合が視聴者の心をつかみました。このシンプルな驚きと爽快感こそが前作の財産であり、続編が引き継ぐべきバトンでもあります。
前作を知らなければ、半分しか楽しめない作品
Netflixオリジナル映画 モンスターアクション「トロール2」は、前作から3年後を舞台に始まります。
主人公のノーラ・ティットマンは前作の出来事を経て孤立した生活を送っており、失意の中で旧友のアンドレアスから奇妙な知らせを受け取ります。研究拠点の地下には、巨大なトロールがまだ冬眠したまま眠っていた。そして当然のように、人間の制御は及びません。
序盤は前作のキャラクターを知っていることを前提に進むため、初見の視聴者には少し置いてきぼりの感覚があるかもしれません。前作未視聴の方はまず1作目から視聴することをお勧めします。

霧に沈むフィヨルド。岩と土でできた巨人の輪郭。
そして、父から娘へと受け継がれた「目ではなく心で見なさい」という言葉。
2022年12月、Netflixに静かに現れた一本のノルウェー映画は、
配信からわずか3か月で1億300万回視聴を記録し、
非英語映画として史上最多視聴の座に就きました。
世界が熱狂した理由は、スケールではありません。
この怪物が、孤独だったからです。
「もっと大きく、もっと多く」という罠と、帰ってきた仲間たち
これまで多くの映画を鑑賞してきて、続編映画が陥りやすいパターンのひとつは、「前作を超えようとして膨らみすぎる」ことだと考えています。Netflixオリジナル映画 モンスターアクション「トロール2」も、この呪縛から完全には逃れられていないように思いました。
今回は二頭のトロールが登場します。一頭は凶暴で人類への敵意をあらわにする「ヨトゥン(Jotun)」、もう一頭は前作のトロールの子どもとされる「美しいトロール」です。この設定自体は面白く、怪獣映画としての発展性を感じさせます。しかし二頭が直接対峙するシーンは実質1分程度と驚くほど短く、宣伝が示唆した「トロール対トロール」の対決は期待値を大幅に下回るものでした。
また物語の大半は「どこへ向かうかを突き止める」という追いかけっことキャラクターたちの会議で構成されています。「ジュラシック・パーク」や「インディ・ジョーンズ」的なスリルへの憧れは随所に感じられ、大聖堂の尖塔がそびえる美しいロケーションでの謎解きシーンは、その意欲が一瞬だけ花開く場面でした。しかしその種を育てるだけの時間は、残念ながら用意されていないようでした。
一方で、帰ってきたキャラクターたちの存在は続編としての連続性を確かに担保しています。ノーラ、アンドレアス、クリストファー少佐のトリオが揃って戻り、物語の軸として機能しています。注目すべきは、前作の仲間だったシグリとアンドレアスがカップルとなり、妊娠中であるという設定が加わった点です。この「命が生まれる」という要素は終盤への感情的な伏線として機能しており、クライマックスでは予期せぬほどの衝撃を視聴者に与えます。
反面、今作初登場の新キャラクターたちにはほとんど個性が与えられておらず、強引に差し込まれるラブロマンスの芽も物語に溶け込まないまま浮いています。それでも、前作の老夫婦が念願のリフォームを完成させた家に住んでいるという小さな継続性のサービスは、ちょっとした笑顔を生む佳品な演出でした。
薄いキングコングと、それでも白眉なCGI映像の力
視聴前、まずサムネイルやパッケージビジュアルに目が留まりました。二頭のトロールが対峙する構図は、「ゴジラ×コング 新たなる帝国」のポスターを強く想起させるものでした。制作サイドがモンスターバースを意識していることは明らかで、「怪獣対怪獣」という見せ場への期待感を視聴前から高めてくれます。しかし実際に映像を観ると、その期待に対して迫力は物足りないという印象を受けました。

そしてNetflixオリジナル映画 モンスターアクション「トロール2」が最も惜しい点のひとつが、「美しいトロール」と人間との関係性の描き方です。このトロールは人間に対して敵意を持たず、構造上は「キングコング」や「ゴジラ×コング」におけるコングのポジション——「理解し合える怪獣」として物語に絡んできます。しかし、その内面や感情は数行のセリフで示唆されるにとどまり、映像として深く掘り下げられることがありません。
古典的な怪獣映画の文脈で言えば、初代「ゴジラ」(1954年)が描いた「怪獣は人類文明への自然の復讐者である」というテーゼも、Netflixオリジナル映画 モンスターアクション「トロール2」の二頭のトロールの対比に重なって見えます。それだけに、「美しいトロール」が単なる「道具」として終わってしまい、怪獣としての神話性を獲得できないまま幕を閉じることには、強い物足りなさを感じました。フラッシュバックひとつ、台詞の積み重ねひとつで大きく変わっていたはずです。
しかし、映像技術については改めて称賛すべきでしょう。二頭のトロールのCGIは前作から進化を遂げており、岩盤のような皮膚の質感、そこに絡み付く植物の根や苔の表現が圧倒的なリアリティを持っています。単なる「岩の塊が歩いている」のではなく、地の底から生まれ出た生命体として説得力ある存在感を放っています。
ノルウェーの雄大な自然——雪に覆われた峡谷、凍てつく森林、夜空にそびえる尖塔の大聖堂——との合成も見事で、画面から生まれる「スケール感」は小規模な製作予算を感じさせません。スキーリゾートのナイトクラブにトロールが乱入するシーンでは、若者たちがスマートフォンを向けながら逃げ惑う光景が映し出され、笑いと恐怖が同時に押し寄せる巧みな演出に思わず唸りました。限られた予算で最大限の視覚的迫力を生み出す技術力——それがロア・ウトホーグ監督の最大の武器でしょう。
ウトホーグ監督が語る「トロロジー」への野望
ロア・ウトホーグ監督がこのシリーズを単なる怪獣映画2本として位置づけていないことは、複数のインタビューから明らかです。
Variety誌のインタビューによれば、監督は1990年代の「アルマゲドン」「インディペンデンス・デイ」「ジュラシック・パーク」といったディザスター映画に触発され、「ノルウェーでこういう映画を作ったらどうなるだろう」と考えたのが原点だったといいます。その後、ノルウェーの画家テオドール・キッテルセンが100年以上前に描いたオスロの大通りをトロールが歩く絵を偶然目にし、構想が結晶化しました。
GamesRadar+のインタビューでは「第1作の編集中に続編のアイデアが浮かんできた。続けるとしたらどこへ行けるか、どう世界を広げられるかを考え始めた」と語っており、続編は偶然の産物ではなく、意図的なフランチャイズ設計の一環であることがわかります。
また撮影手法についても、「グリーンスクリーンを使ったのは1日だけで、あとはすべて俳優とともに雪の中、風の中、実際のロケ地で撮影した」と明かしています。トロールとの対峙シーンでは、30メートル上空を飛ぶドローンを俳優たちが見上げることで、巨大な生物との感情的なやりとりを演じたといいます。SciFiNow誌では「”トロロジー(trollogy)”という言葉の響きはとても良い」と笑いながら3部作への可能性を示唆しました。
参考インタビュー
まとめ:続編の呪いを超えた先に、北の大地の未来がある
Netflixオリジナル映画 モンスターアクション「トロール2」は、「続編映画あるある」の多くを踏んでしまった作品です。しかし同時に、監督ロア・ウトホーグのノルウェー怪獣フランチャイズへの真摯な情熱と、この土地が持つ神話的なスケール感は、確かに画面から伝わってきました。
「美しいトロール」が感情的な深みを持てなかったこと、新キャラクターに息吹が感じられなかったこと、二頭の対決が驚くほど短かったこと——これらは惜しまれます。しかし終盤の感情的な一撃と、エンドクレジット後の次作への伏線は、「続きを観たい」という気持ちを十分に芽吹かせてくれます。
前作が好きな方なら、ぜひ視聴してほしい一作です。そして、いつかノルウェーが本当の意味で「ゴジラ」と肩を並べる日が来るのか——そんな問いを胸に抱きながら、画面を閉じていただければと思います。




