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ブルービートル:特撮魂とラテン文化が融合した痛快アクション

Score 3

『ブルービートル』は、DCコミックスの中でも知名度の低いヒーローを主人公にした実写映画でありながら、家族愛を中核に据えた温かみのある作品に仕上がっています。アイアンマンやスパイダーマンといった先行作品との類似点は否めないものの、メキシコ系アメリカ人の家族を描いたラテン文化の豊かさと、特撮的な無骨さを兼ね備えたスーツデザインが独自の魅力を生み出しているヒーローの誕生でした。

原題
Blue Beetle
公式サイト
https://www.warnerbros.co.jp/home_entertainment/pq1gpcry0dk/

DC LOGO, BLUE BEETLE and all related characters and elements © & ™ DC. Blue Beetle © 2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

監督
登場人物
ハイメ・レイエス / ブルービートル

Actor: ショロ・マリデュエニャ

主人公。大学を出たばかりで、スカラベと呼ばれる古代の異星兵器と共生することによりアーマースーツの力を得る青年。家族を大切にする。

ジェニー・コード

Actor: ブルーナ・マルケジーニ

コード産業の創業者一族の娘。物語における重要なヒロイン

ビクトリア・コード

Actor: スーザン・サランドン

大企業コード産業の現CEO。

イグナシオ・カラパックス / OMAC

Actor: ラオール・マックス・トルヒージョ

ビクトリアのボディーガード。

配給会社

ここがおすすめ!

  • 予想を上回る家族愛に満ちた物語
  • キャラクター性と文化的背景
  • SFとスーツヒーローのビジュアルデザインに見るマーベルとの差別化

あらすじ

ハイメ・レイエスは大学を卒業し、将来への希望を胸に故郷パルメラ・シティに戻る青年。自分の目的を模索する日々の中、偶然「スカラベ」と呼ばれる古代異星人の遺物を手にしてしまう。スカラベは彼を共生宿主として選び、驚異的かつ予測不能な力を持つアーマースーツを授ける。ハイメはこの力によって、スーパーヒーロー「ブルービートル」として運命を変えられ、家族を守り、自身の目的を見つけるために立ち上がる。

ブルービートル | ワーナー・ブラザース公式サイト

2023年にDCエクステンデッドユニバースの転換期に公開された『ブルービートル』は、多くの観客にとって馴染みの薄いヒーローを主人公としたかなりの挑戦的な作品でした。マーベル映画の隆盛とDC映画の迷走が続く中、果たしてマイナーヒーローは観客の心を掴むことができるのか。そんな疑問を抱きながら劇場に足を運んだ観客を待っていたのは、予想を上回る家族愛に満ちた物語でした。

『コブラ会』で注目を集めたショロ・マリドゥエニャが主演を務め、アンヘル・マヌエル・ソト監督がメガホンを取った本作は、既存のヒーロー映画の枠組みを借りながらも、ラテン系家族の絆という新鮮な視点で描かれています。

物語構造と演出の巧みさ

物語は、大学を卒業したハイメ・レイエスが故郷に戻り就職活動に苦戦するところから始まります。巨大軍事企業コード社が支配する格差社会の中で、偶然手にした古代の宇宙生命体「スカラベ」と融合し、ブルービートルとして覚醒する過程が丁寧で美しく描かれます。

AIで生成したイメージ画像

序盤は残念ながら既視感のあるオリジンストーリーの定型に沿って進みますが、中盤以降は家族全員が物語に関わってくる構成が実に巧みです。ヒーロー一人の戦いではなく、家族総出でピンチを乗り越える展開は、『ワイルド・スピード』シリーズを彷彿とさせる迫力ある痛快さがあります。特におばあちゃんの戦闘シーンは、観客に強烈で可愛らしいインパクトでしたね。

キャラクター性と文化的背景

ショロ・マリドゥエニャの主人公ハイメは、等身大の青年として魅力的に描かれている。超人的な能力を得ても驕ることなく、家族を大切にする姿勢は好感が持てる。脇を固める家族キャラクターも個性豊かで、特に革命経験のあるおばあちゃんの存在感は圧倒的だ。

本作の最大の特色は、メキシコ系アメリカ人家族の文化的アイデンティティを丁寧に描いている点だ。家族の結束、移民としての誇り、貧困と格差への向き合い方など、社会的なメッセージも込められているが、説教臭くならない絶妙なバランスが保たれている。

SFとスーツヒーローのビジュアルデザインに見るマーベルとの差別化

映画『ブルービートル』を語る上で避けて通れないのが、マーベル作品との比較でしょう。テクノロジー系スーツを身に纏うヒーローという設定は、どうしてもアイアンマンやアントマンを連想させます。物語構造においても、企業との対立、成長する若きヒーロー、テック系スーツの習得といった要素は、残念ながら既視感を否めません。

しかし、本作が真に輝いているのは、これらの馴染みある要素をラテン文化というフィルターを通して再構築している点です。特に映像面での差別化は見事で、アイアンマンのスーツがCGで身体にフィットした滑らかで美しい質感を持つのに対し、ブルービートルのメタリックブルーの甲冑は明確に「着用している」重厚感があります。

マーベル作品がCGで作り上げる完璧なスーツとは異なり、どこか仮面ライダーや特撮ヒーローを思わせる無骨で親しみやすいデザインが、かえって新鮮に映ります。戦闘シーンでも、アイアンマンが予めプログラムされた兵器を展開するのに対し、ブルービートルは主人公の想像力次第で何でも作り出せるという設定が可愛らしく、子どもの頃の「ごっこ遊び」を思い起こさせる純粋な楽しさがあります。

物語のスケールにおいても、近年のMCU作品が多元宇宙や壮大な規模に向かう中、家族を救うという身近な動機に立ち返った点は実に新鮮です。小規模ながら心に響く物語は、初期の『アントマン』シリーズが持っていた温かみを思い起こさせます。CGクオリティは残念ながら最高水準とは言えませんが、むしろその特撮的な手作り感が作品の温かみを美しく演出し、マーベル作品にはない独特の魅力を生み出しています。この「不完璧さ」こそが、本作の最大の武器なのかもしれません。

課題と今後への期待

本作は課題が多々存在も見受けられました。まず敵役の描写が類型的で、特にヴィクトリア・コードの悪役ぶりは残念ながら分かりやすすぎる面があります。また、スカラベとの精神的な交流がもう少し深く描かれていれば、主人公の内面的成長がより美しく際立ったでしょう。

制作費の制約からか、一部のCGや戦闘シーンに物足りなさを感じる瞬間もありました。特に限られた宣伝予算のためか知名度不足となり、劇場での興行成績が伸び悩んだことも残念な点です(興行収入は330万ドル)。家族総出で活躍する構成は魅力的である一方、時として家族キャラクターが騒がしく感じられ、主人公ハイメの個人的な成長が埋もれてしまう瞬間もありました。

さらに、トーンの一貫性にも課題があります。シリアスなボディホラー的な変身シーンと、その直後のコメディタッチな家族の反応が噛み合わない場面があり、もう少し音楽や演出で統一感を持たせることができたでしょう。アクションシーンでも、マスクを着用した戦闘では既視感が強く、人間の表情が見える場面の方が魅力的に映るという皮肉な結果になっています。

しかし、これらの課題は作品の本質的な魅力を損なうものではありません。むしろ、こうした「粗削りさ」が本作の手作り感や温かみに繋がっている面もあり、完璧すぎるマーベル作品とは一線を画す個性として機能しています。

まとめ:新時代DCの希望の光

『ブルービートル』は完璧な作品ではないが、家族愛という普遍的なテーマを軸にラテン文化の豊かさと特撮的な楽しさを融合させた作品でした。

ジェームズ・ガンが手がける今後のDCU展開において、ブルービートルがどのような活躍を見せるのか。この青き甲冑の戦士が、暗くなりがちなスーパーヒーロー映画界に新たな光をもたらしてくれることを期待したい。時として、最も身近な愛こそが、世界を救う最大の力になるのかもしれない。

各サイトのレビュースコア

 

各レビューサイトのスコア概要

プラットフォーム スコア 100点換算
Rotten Tomatoes(批評家) 78/100 78点
Rotten Tomatoes(観客) 90/100 90点
Filmarks 3.6/5 72点
映画com 3.1/5 62点
IMDb 5.9/10 59点

この数値から見えてくるのは、批評家評価(78点)よりも観客評価(90点)が12ポイント高いという明確な乖離です。

また、日本のプラットフォーム(Filmarks: 72点、映画com: 62点)は海外の観客評価より低く、IMDbは最も厳しい評価となっています。

批評家評価と観客評価の乖離分析

批評家たちは本作を「家族を中心とした心温まる物語」として評価し、ラテン系文化の描写、Xolo Maridueñaの魅力的な演技、ユーモアと心を持つリフレッシングなスーパーヒーロー映画として認めています。初見の反応では「大いに楽しい時間」「家族を基盤としたラテン文化へのラブレター」「素晴らしいビジュアルエフェクト」などと称賛されました。

観客、特にラテン系コミュニティからの支持が高く、オープニング週末の観客の39%がヒスパニック系でした。映画館で上映された際、スペイン語のフレーズや文化的な言及が出るたびに、ラテン系観客から歓声が上がったという報告もあります。

批評家が指摘した弱点

一方で、多くの批評家とIMDbユーザーは、ストーリーが「基本的すぎる」「予測可能」「アイアンマンとスパイダーマンの組み合わせにすぎない」と指摘しています。ヴィランが弱く、ジョークが幼稚すぎて笑えなかった、全体的に陳腐で記憶に残るものがないという声も多数ありました。

各プラットフォームのレビュー抜粋

Rotten Tomatoes – 批評家の声

肯定的な意見:

  • 「Xolo Maridueñaの磁力的な演技に導かれ、『ブルービートル』は家族に焦点を当てたリフレッシングなスーパーヒーロー映画で、たっぷりのユーモアと心がある」
  • 「『ブルービートル』は驚くほど政治的に機敏で、家族に縛られた物語は衝撃的に純粋であり、コメディは低俗なミーム化から離れている」
  • 「DCEUの非常に優れた作品の一つ。自己完結型で巧みに作られた映画」

批判的な意見:

  • 「スーパーヒーロー製造ラインから出てきた最新製品で、退屈なほど馴染みがある。このカブトムシにはあまり活力がない」
  • 「新しい要素もあるが、フランチャイズはすでに疲弊しており、最近のDCの取り組みである『ブラックアダム』や『ザ・フラッシュ』よりも有望ではない」

Rotten Tomatoes – 観客の声

  • 「この映画は劇場で観るべきだった!すべてが面白く、正直なところ、ワーナー・ブラザースはプロモーションが下手だった。ヘイターが何と言おうと気にしない、続編を作ってほしい」
  • 「DCで最高の作品。家族、立ち退き、責任、文化をテーマにしており、本当にラテン系で、観客は爆笑する」
  • 「それなりに良かった。家庭的な映画で、楽しいキャラクターたちが美しい文化を表現していた」

IMDb – ユーザーレビュー

低評価の意見:

  • 「映画はベーシックな10代のスーパーヒーロー誕生物語で、もはや特別ではなく、全く印象に残らなかった。このタイプの物語にすでに慣れすぎていて、予測可能で文字通り新しいものは何もなく、退屈で、アクションもつまらなかった」
  • 「ヴィランはB級スーパーヒーロー映画で期待できるすべての要素を持っている。動機、戦闘、結論のどれも特に記憶に残らない。ジョークはたくさんあるが、ほとんどが着地しない。幼稚すぎる。若い観客は大笑いするだろうが、私と映画館の観客はほとんど沈黙していた」
  • 「空っぽで、クリシェだらけ、我慢できない。人生で見た最悪の作品の一つ。時間の無駄。近寄るな!キャストは悪く、脚本はもっと悪い」

肯定的な意見:

  • 「Xolo MaridueñaのハイメとGeorge Lopezは間違いなく傑出している。家族のダイナミクスは確かに存在し、家族自体も十分に良かった」

Filmarks – 日本のユーザーレビュー

肯定的な意見:

  • 「全く知らなかったDCヒーローで、DCEUの終演と共に劇場公開がされなかった作品。確かに日本ではマイナーなヒーローだし、公開してもお客が入ったとは思わないけど、それとは別に作品としては面白かった。ストーリーは単純明快だが、ヒーローの誕生譚としては良く出来てるし、何と言っても、キャラクターが総じて魅力的だ。おばあちゃんなんて素晴らしい」
  • 「家族は終わらないという言葉が響きました。造形は賛否分かれそうですが私は好きです。舞台のノリも軽くスッキリ見れます」
  • 「ショロ君がトムホスパイダーマンのようなテンプレ通りのキャラでしてあまつさえアイアンマンとスパイダーマンのいいとこ取りで作ったようなブルービートルとくれば私なんかは否が応でも食いついてしまうんですよ。アイアンスパイダーのグレードアップ版ですよそりゃテンション上がるでしょ」

批判的な意見:

  • 「アイアンマンとかスパイダーマンを見たこと無かったら面白かったかも。あと家族全員ウザすぎる。まぁ主人公もウザいんだが」
  • 「どう見てもブルービートルがアイアンマン+スパイダーマンで、内容もまんま。DCよりマーベル色が強い。ばあちゃんが最強なので、別にブルービートルいらなくね?ヒーロー映画というよりメキシコの家族ドラマ」
  • 「明るくてわかりやすくてシンプル。でも独創性に欠ける上にテンポが悪い。我々は『ザ・フラッシュ』を観た後なんだよ…。予告映像ほどコメディ色の強い作品でもなく、ヒーローの活躍シーンもな…」

映画com – 日本のユーザーレビュー

肯定的な意見:

  • 「Aクラスの超大作なのに、B級80年代ポップに徹してる!ところどころ、サマーウォーズ、アイアンイーグル、リメンバーミーを彷彿させ、楽しい楽しい作品でした。理屈抜きで気持ちいい作品でした。社会背景が暗いから、これくらいハジケてくんなきゃ。娯楽映画、ここにあり!荒唐無稽バンザイ!」
  • 「スパイダーマン、からのアイアンマン。それをリメンバーミーで包み込み、ラストはワイルドスピードでハッピーエンド。おばあちゃんの戦いが素晴らしかった(笑)」

批判的な意見:

  • 「ヒーローもの映画として、王道のストーリー展開です。ただ、なんかダサい感じが否めないです。主人公の武器や味方の武器についても、なんとなく日本の戦隊もののように見えてしまって」
  • 「CGと美術は神がかってるけど、脚本は…スーパーヒーロー映画の王道を行き過ぎじゃない?主人公ハイメの問題が『家賃滞納』って、スーパーヒーロー映画の主人公にしてはスケールが小さすぎない?ゴッサムシティのダークな世界に慣れてるDCEUファンとしては、ちょっと拍子抜け」

映画のジャンル・公開時期の影響

ジャンルの影響: アクション/スーパーヒーロー映画

アクション映画は通常観客評価が高くなりやすいジャンルですが、2023年時点では「スーパーヒーロー疲れ」が顕著でした。本作はDCEUで最も興行収入が低い作品(全世界で1億3,080万ドル、制作費1億400万~1億2,500万ドル)となりました。

公開時期の不運

2023年8月18日公開で、『バービー』と『オッペンハイマー』という文化的巨大作品の直後だったことが大きく影響しました。さらに、SAG-AFTRAストライキ中だったため、キャストによるプロモーションが一切できず、サンディエゴ・コミコンでの宣伝も見送られました。公開週末にはハリケーン・ヒラリーが南カリフォルニアを襲い、興行にさらなる打撃を与えました。

しかし、本作は配信サービスMaxで米国で最も視聴された映画となり、劇場では苦戦しても配信で成功を収めました。

結論

「ブルービートル」は、ラテン系コミュニティと家族志向の観客には高く評価されたが、独創性を求める批評家やベテランのスーパーヒーロー映画ファンからは「既視感がある」と評価された作品です。

公開時期の不運(バービー/オッペンハイマーの直後、ストライキ、ハリケーン)、DCEU終焉のタイミング、日本での劇場未公開など、外的要因が興行成績に大きく影響しました。しかし、配信では大成功を収め、文化的表現としては重要な一歩を踏み出した作品と言えるでしょう。

スコアの乖離の核心: 批評家は「映画としての革新性」を評価軸とし、観客は「エンターテインメント価値と文化的共感」を評価軸としたため、12ポイントの差が生まれたのです。

本ページの情報は 時点のものです。
各サイトの最新スコアは各々のサイトにてご確認ください。

このページではAmazon Prime Video Jpで配信中のブルービートルから執筆しました。

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このページは 時点のものです。
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