2024年4月25日にNetflix独占で全世界配信が開始された実写映画「シティーハンター」は、原作ファンにとっても、初めてシティーハンターに触れる方にとっても、アクション映画として完成度が高く日本映画の新しい一面が垣間見えた作品でした。
北条司先生の名作漫画が日本で初めて実写化されるという重責を、これほど見事に全うした作品に出会えるとは、と感動した方も多いのではないでしょうか。
「シティーハンター」の原作者は北条司先生
「シティーハンター」の生みの親は、漫画家である北条司(ほうじょう つかさ)先生です。1985年から1991年まで週刊少年ジャンプで連載され、そのスタイリッシュなアクションと魅力的なキャラクター、そしてユーモアあふれるストーリーで絶大な人気を博しました。累計発行部数は5000万部を超え、アニメ化、劇場版アニメ化もされ、日本のみならず世界中で愛され続けている不朽の名作です。
シティーハンターの簡単なあらすじ
物語の舞台は現代(1990年頃)の東京。主人公は、裏社会で働く通称シティーハンターと呼ばれる冴羽獠(さえば りょう)です。彼は、新宿を拠点に、警察では解決できないような依頼を請け負い、法では裁けない悪を討つプロフェッショナルです。
普段は女好きでとぼけた一面を見せる獠ですが、ひとたび依頼を受ければ、その超人的な身体能力と射撃の腕前、そして優れた頭脳でどんな困難な任務も遂行します。そして相棒として、亡き親友の妹である槇村香(まきむら かおり)と共に任務にあたります。香は獠の行動に振り回されながらも、時に彼を支え、時にはハンマーを食らわせるなどを食らわせるなどをしながら、唯一無二のパートナーとして彼と共に依頼を解決していきます。
シリアスな事件の裏に隠された人間ドラマや、獠と香のコミカルな掛け合い、そして彼らを取り巻く個性豊かなキャラクターたちが織りなすストーリーが、「シティーハンター」の大きな魅力です。
始まりの物語としての秀逸な構成
映画「シティーハンター(2024)」の物語構成は、原作の「始まりの物語」として、獠と香がコンビを組むまでの経緯を描いている点が非常に秀逸でした。この獠と香のコンビ結成の物語は原作ファンにとっては既知の設定でありながらも、映画独自の解釈と演出によって、新鮮な気持ちで観ることができました。
特に、舞台を現代の新宿にしたことで、1990年代の原作とは異なる現代性を持ちながらも、『シティーハンター』ならではの世界観を損なわない絶妙なバランスが保たれていると思えます(原作コミック内で固定電話のダイヤル式の音から相手先の電話番号を探ろうとして、今は固定電話プッシュホン式が主流と時代の変化を感じる場面があります。ただ2020年はスマホが一般で固定電話などありませんし)。過去の作品を知る人も、初めて触れる人も楽しめる、まさに最高の「始まり」を描いた作品だったと言えるでしょう。
原作への深い理解と現代的解釈
本作映画のの主人公である冴羽獠を演じる鈴木亮平さんは、「原作から飛び出してきた」という言葉ピッタリと当てはまるくらいの完成度でした!
冴羽獠の魅力といえば、やはり彼の「時にはすけべな一面と時には一流のスイーパという極端なギャップ」でしょう。
普段の彼は、美しい女性を見るとすぐに「もっこり」して、スケベで軽薄な一面が際立ちます。これはコミカルで憎めないキャラクターとして描かれるこの部分は、シティーハンターのコメディ要素を担う重要な要素です。彼のふざけた言動に、思わず笑みがこぼれてしまう人も多いのではないでしょうか。
しかしひとたび銃を手にし、依頼を遂行するプロフェッショナルな顔を見せた時の彼は、まさに別人です。冷静沈着で、どんな状況でも圧倒的な強さを発揮する一流のスイーパー(始末屋)へと変貌します。この切り替わりの鮮やかさが、私たちを強く惹きつけるのです。
魅力的なキャラクターと物語構成
鈴木亮平さんが体現した「冴羽獠」の真髄
今回の実写版で冴羽獠を演じた鈴木亮平さんは、この極端なギャップを本当に見事に演じ分けていました!冒頭などのコメディパートでは、原作そのままの軽薄さやコミカルさを表現し、一方で、アクションシーンはまさに圧巻の一言です。
息を呑むようなカッコよさで、プロフェッショナルとしての冴羽獠を完璧に体現していました。特に、銃器のハンドリングは特筆すべき点です。リロードアクションひとつとっても惚れ惚れするような美しさがあり、まさに一流のスイーパーそのもの。長年のファンも納得のクオリティだったのではないでしょうか。
このギャップがあるからこそ、冴羽獠は単なるスケベな男でも、単なる強い男でもなく、唯一無二の魅力を持ったキャラクターとして多くの人に愛され続けているのだと感じます。
新たな魅力を見せた槇村香
森田望智さんが演じた槇村香(まきむら かおり)は、原作とは異なるアプローチながらも、非常に魅力的なキャラクターに仕上がっていました。原作の香はもう少し強気で毒舌なイメージが強いですが、映画版の香は、初々しさと芯の強さを併せ持った現代的な女性として描かれています。この新しい解釈が、観る側に新鮮な好感を与えてくれましたね。
獠とのやり取りも非常に自然で、二人の関係性が丁寧に描写されているため、物語が進むにつれて深まっていく絆を感じられました。香が獠の唯一無二のパートナーとして成長していく過程も、本作の見どころの一つと言えるでしょう。
脇を固めるキャラクターたち

安藤政信さん演じる槇村秀幸(まきむら ひでゆき)、そして木村文乃さん演じる野上冴子(のがみ さえこ)も、それぞれが持つキャラクターの重要性をしっかりと表現していました。
特に安藤さんは、限られた出番の中で、獠との深い信頼関係や槇村兄妹の絆を見事に演じ切っていました。彼の退場シーンは、多くの観客の心に深く響いたのではないでしょうか。短い登場時間ながらも、物語に重厚感と感動を与えてくれました。
妥協なきアクションと心揺さぶる舞台と演出
本作はアクションシーンの演出も見どころのひとつです。佐藤祐市監督は、派手なVFXに頼るのではなく、実際の銃器アクションと身体を使ったアクションを重視した演出を選択しており、これが作品全体にリアリティと迫力をもたらしています。
特に、獠が複数の敵を相手にするシーンでの立ち回りは、ジョン・ウィックシリーズを彷彿とさせる洗練されたアクションとなっており、日本映画のアクションシーンとしては非常に高いレベルに達していると思います。
撮影・美術面では、現代の新宿を舞台にしながらも、原作の持つ懐かしい雰囲気を随所に感じさせる工夫が施されていました。特に、伝言板のXYZメッセージという原作の重要な要素を、現代でも違和感なく組み込んだのは見事だと思います。
そしてキャスティング全体を通して感じるのは、演出陣が原作に対して深い愛情と理解を持っていることです。単に有名な俳優を集めたのではなく、それぞれのキャラクターに最も適した俳優を選んでいることが伝わってきます。特に鈴木亮平さんの起用は、この映画の成功において最も重要な要素だったと思います。
あらためて感じるNetflixでの世界配信が証明する質の高さ
これまで数多くの漫画・アニメの実写化が行われてきましたが、その多くが原作ファンからの厳しい評価を受けているといえるでしょう。しかし、この「シティーハンター」は、原作ファンも納得できる仕上がりになっていると断言できます。それは、制作陣が原作の表面的な要素だけでなく、その本質的な魅力を理解し、実写映画という媒体で最大限に表現しようとしていることが伝わってくるからです。
Netflixでの配信という形態も、この作品には適していると思います。劇場公開だけでは限られた観客にしか届かなかったかもしれませんが、世界配信によって多くの人にこの素晴らしい作品が届いたことは、ファンとしても嬉しい限りです。実際に、配信開始直後からNetflixの週間グローバルTOP10で1位を獲得し、世界32の国と地域で週間TOP10入りを果たしたというのも、作品の質の高さを証明していると思います。
まとめ:実写化の新たな金字塔として歴史に名を刻む傑作
今まで様々な漫画・アニメの実写化作品を鑑賞してきた中で映画「シティーハンター」は屈指の出来栄えだと言えました。原作ファンはもちろん、シティーハンターを知らない世代の観客にも、この作品の魅力は十分に伝わるはずです。
原作に対する深い愛情と理解、そして実写映画としての完成度の両方が必要だということです。「シティーハンター」は、その両方を高いレベルで実現した、近年稀に見る優秀な実写化作品として、映画史に記録されるべき作品だと思います。
最後にやっぱりシティーハンターのエンディングにGet Wildが流れると鳥肌が立ちます!