「アイ・フランケンシュタイン」は、ケヴィン・グレヴィオーによる同名グラフィックノベルを映画化した作品です。グレヴィオーは大ヒットシリーズ「アンダーワールド」の原案・脚本を手がけたクリエイターであり、その世界観を受け継ぐかのように、ダークなゴシック美学と人外の存在たちの抗争を描いています。
主演は「ダークナイト」でハービー・デント / トゥーフェイスを演じたアーロン・エッカートです。原作と変わらず孤独な怪物であるフランケンシュタインに人間性を見出そうとする姿が、アクションと共に力強く描かれます。
そして悪魔の王を演じるビル・ナイ、科学者テラを演じるイヴォンヌ・ストラホフスキー、ガーゴイルの女王を演じるミランダ・オットーなど、実力派キャストが物語を支えます。
ダークな雰囲気でありながらホラーではなく、アクションとファンタジーの中でフランケンシュタインという怪物をダークヒーローとして再生させた本作でありますが、決して良い評価ではありません。
ただ筆者は「アンダーワールド」のスタイリッシュな世界観が好きなので、このダークでスタイリッシュな本作についての魅力を執筆しました。
メアリー・シェリーによって科学へ警告
『フランケンシュタイン』というキャラクターはメアリー・シェリーによって1818年に発表された『フランケンシュタイン』という物語となっています。ヴィクター・フランケンシュタイン博士が人間の死体から人造人間を創造するという物語であり、科学の限界を超えた行為がもたらす結末を描き、人間の存在を深く考察しているのが特徴です。
そして映画やドラマシリーズで、この「フランケンシュタイン」という創造物はさまざまな形で描かれています。そのため、本作は現代のエンターテインメントに大きな影響を与え続けているといってよいでしょう。
フランケンシュタインは単なる恐怖の物語にとどまらず、人間の感情や倫理についても問いかける深いテーマを持っています。近年の翻案作品でも、このテーマは重要視され、常に新たな視点が提供されています。さまざまな作品を楽しむことで、フランケンシュタインが持つ奥深いメッセージに触れることができます。

- タイトル
- フランケンシュタイン (新潮文庫 新潮文庫) メアリー・シェリー
怪物たちが新たな英雄に
ハリウッドには、ヴァンパイアや狼男などの古典的な怪物を現代の感覚で蘇らせる潮流があります。その中で独自の存在感を放ってきたのが、制作会社 レイクショア・エンターテインメントでしょう。
代表作はご存じ 「アンダーワールド」シリーズ(2003–)」です。この映画はヴァンパイアとライカン(狼男)の数百年に及ぶ抗争を、黒革に身を包んだ戦士セリーン(ケイト・ベッキンセイル)を軸に描き、ゴシックホラーをSFアクションへと転化した作品です。その美学は、地下都市の闇や古城の荘厳さといった伝統的なホラーの質感を活かしながらも、スローモーションやガンアクションを融合させ、ジャンルの垣根を軽やかに飛び越えていきました。そんな怪物同士の戦いは、怪物をただの恐怖の対象ではなく、スタイリッシュなアクションと人間ドラマの中に置き直すことで、新しい魅力を提示してきました。
そして、その系譜に連なるのが本作である 「アイ・フランケンシュタイン」です。原作は「アンダーワールド」の原案者でもある ケヴィン・グレヴィオー のグラフィックノベルで、200年生き続けるフランケンシュタインの怪物アダムをダークヒーローとして描き出します。物語の舞台となるのは、人知れず続く天使と悪魔の戦争。人間には理解できないスケールの戦いの中で、アダムは自らの存在意義と向き合うことになります。
ホラーとファンタジー、そしてアクションを大胆に横断し、モンスターを「恐怖の対象」から「憧憬」へと転化する手腕だと思います。

「アンダーワールド」のダークでスタイリッシュな世界観に心を奪われたなら、「アイ・フランケンシュタイン」はまさにその延長線上で楽しめる一作でした。
厳しいファンからの意見
フランケンシュタインの怪物が現代に蘇り、ガーゴイルと悪魔の壮絶な戦いに巻き込まれるという異色の設定で、公開前から話題を呼んだ映画『アイ, フランケンシュタイン』。しかし、いざ蓋を開けてみると、批評家からも観客からも厳しい評価が下されました(Rotten TomatoesだとTomatometerが5%、Popcornmeterが38%Popcornmeter)。一体なぜ、この作品はここまで評価が低くなってしまったのでしょうか。
物語は、どこかで見た設定の寄せ集め?
本作の最大の弱点として、まず挙げられるのがストーリーとキャラクターの不備との意見が多いです。フランケンシュタインの怪物が主役という設定は魅力的ですが、物語の骨格はダークな雰囲気を持つ「アンダーワールド」や「ブレイド」といった既存のダークファンタジー作品をなぞっている箇所が多々あります。
本作ではヴァンパイアではなくフランケンシュタインというオリジナル性を打ち出そうとする意図は感じられるものの、その試みは成功したとは言えないのかもしれません。

また主人公アダムを始めとする登場人物たちの動機や感情が描ききれていない印象もありました。物語の鍵を握るキャラクターの行動原理が不明瞭では、観客は物語に深く入り込むことができません。
騒がしいだけで心に残らないアクション
そしてアクションシーンの不評も大きな要因でしょう。派手な戦闘は「騒々しく、まとまりがない」とも感じられ、また当時映画「アバター」で流行した過剰な3D演出は、アクション映画としての見せ場であるはずの戦闘シーンが、かえって鑑賞体験を阻害してしまっている印象でした。
まとめ:スタイリッシュなダークヒーロー!その評価はなぜ分かれたのか
『アイ・フランケンシュタイン』は、ケヴィン・グレヴィオーが手掛けたグラフィックノベルを原作とする映画です。「アンダーワールド」の原案者が描くダークなゴシック美学と、怪物たちの壮絶な戦いに、多くのファンが期待を寄せました。しかし、批評家と観客の評価は真っ二つに分かれ、作品の持つ魅力と欠点が浮き彫りになりました。
おそらくそれは独自性の物足りなさでしょう。「アンダーワールド」や「ブレイド」といった先行作品の要素を寄せ集めたようなプロットは、斬新さに欠ける印象でした。また、主人公アダムの心情や行動が十分に描かれていないため、観客が物語に感情移入するのを妨げてしまったのです。
しかし、筆者を含めたダークファンタジーやアクション映画のファンからは、単純に楽しめる娯楽映画であり、映画の尺も90分程度と複雑な物語を期待せず、スタイリッシュな映像と戦闘シーンを楽しむことができる映画でした。