1990年代のハリウッドは、今や伝説となったハリウッド映画が複数製作されました。1996年に公開された映画『インデペンデンス・デイ』は、そんな伝説的映画の一つです。1996年の年間興行成績でも堂々のトップとなり、今もなお傑作のひとつと言われる本作には、一体どのような魅力が詰まっているのでしょうか。
90年代SF映画の金字塔
映画『インデペンデンス・デイ』は、90年代に公開されたSF映画の中でも、特に人気の一作です。「ジュラシック・パーク」シリーズや『スターゲイト』のように古代文明との接触を図るSF作品や、「ターミネーター」シリーズのように近未来とのつながりを強く持とうとする映画とは異なり、「当時の文明で外敵と向き合う」作品だったのが本作の特色の一つと言えるのではないでしょうか。本作は幅広い層から大きな支持を得て、現在に至るまでさまざまな作品に影響を与え続けている作品の1つです。
本作が成功した大きなポイントは、タイトルと公開日のもあると言えます。タイトルにもなっている「インデペンデンス・デイ」は7月4日のアメリカ独立記念日を指しています。7月4日をクライマックスに据えるため、物語は7月2日に始まるのですが、本作の劇場公開日も7月2日だったといいます。公開日と物語の舞台をそろえることで、「もしかしたらこの映画を見終わったら本当にエイリアンが攻めてくるのかもしれない」と人々に思わせる効果があったのではないでしょうか。そのためか、映画本編も「もしかしたら」と思わせるようなリアリティを感じられる一作に仕上がっていたと感じます。現代のような情報化社会とは異なっていたため、相乗効果もあり、素晴らしい映画体験になったのではないでしょうか。結果的に本作はこの年に最も高額な興行収入を稼ぐ作品となったので、総じて大成功だったといえるでしょう。

最新のCGと模型を組み合わせた撮影技法
映画『インデペンデンス・デイ』のなかでも、多くの人々の印象に残るのが、象徴的な建造物が宇宙人によって次々に破壊されていく様ではないでしょう。ホワイトハウスが崩れ落ちていく瞬間は、大きな絶望を感じさせました。これを可能にしたのが、当時最新だったCG技術と、ミニチュア模型を組み合わせた撮影技法です。ミニチュア模型を使用してSF作品を撮影する、という方法は、日本では「ウルトラマン」シリーズのような特撮ものでおなじみですよね。これを最新のCGと組み合わせて巧みな一作へと作り上げたのが、本作だったといえるでしょう。

現代ではすべてをCGで撮影する映像が非常に増えています。CG技術の向上と、スーパーヒーローものの映画の人気が、よりその傾向に拍車をかけている気がします。その反動からか、CGとミニチュアを組み合わせた本作の撮影技法は、現代の観客にとっては新鮮に映る部分もあるらしく、再評価の傾向にあります。この技法は近年の人気作だと「スター・ウォーズ」の続3部作でも用いられています。すべてをCGに多様るわけではなく、実際にミニチュアを破壊するからこそ、練りに練られたであろうアングルやカメラマンの息遣いなどが感じられて、より緊迫して作品にマッチしたシーンが作り上げられたように感じます。

古いながらも魅了する映像と音響
巨大なUFOが空を覆い、ホワイトハウスやエンパイアステートビルが爆発するシーンは、今見ても迫力満点です。CG技術が今ほど発達していなかった時代に、これほど圧倒的なスケールと破壊の映像を作り上げたことに驚かされます。
そして、宇宙からの侵略者に対し、人類が一致団結して立ち向かうというストーリーは、何度観ても胸が熱くなります。特に、苦悩しながらも戦う大統領や、エイリアンのカウントダウンを見抜く変わり者の科学者など、登場人物が個性豊かで魅力的。この映画で初めてウィル・スミスを知ったという方も多いのではないでしょうか。彼の代表作であることは間違いないでしょう。
これぞ「アメリカ」がつまった作品
映画『インデペンデンス・デイ』は、非常にアメリカらしい作品であるともいえるでしょう。アメリカの独立記念日をそのままタイトルにしたところからも、これは明らかです。全体的なプロットの筋書きは、SF小説の金字塔『宇宙戦争』から取られたものであることは容易に想像できますが、イギリスを舞台とした小説に対し、舞台をアメリカの独立記念日に設定し、アメリカ的な要素を多く付加したしているのが非常に興味深いです。
そして印象的なのは、結末の運び方です。本作では「コンピューターウイルス」を利用して地球人は宇宙人に対抗します。現代であればこれは特別な発想でもなければ、突っ込みたくなってしまう部分もありますが、当時としては相当画期的なプロットだったのではないでしょうか。
一方で、『宇宙戦争』において侵略者たちを一掃したのは、地球に元々あるウイルス(細菌類)でした。地球人たちは予想外に現れた外敵をどうにか打ち負かそうと奮闘しますが、人々の努力ではなく、もとより自然に存在していたウイルスが、その免疫を持たない宇宙人たちを滅ぼしていくというプロットは、人の力など及ばない自然の力の大きさを感じさせる結末だったといえるでしょう。
対して本作では、人口のウイルスが宇宙人を打ち負かします。まさに地球人の強さを物語る結末は、英米の価値観の違いのようで、非常に興味深く感じました。他にも「ロズウェル事件」や大統領の演説、退役軍人の描き方など、アメリカを象徴する文化的な価値観が本編全体に散りばめられていて、とても「アメリカ的」な一作だと感じさせられました。
ロズウェル事件とは
ロズウェル事件は、1947年にニューメキシコ州ロズウェル近郊で発生した、未確認飛行物体(UFO)墜落疑惑の事件です。当初、米陸軍航空隊は「空飛ぶ円盤」を回収したと発表しましたが、後に気球だったと訂正しました。しかし、墜落現場から宇宙人の死体が回収されたという証言も存在し、UFO愛好家の間では宇宙人の地球飛来を証明する事件として現在も議論されています。
独立宣言の演説に心震える
この映画のハイライトといえば、やはりクライマックスでの大統領の演説です。絶望の淵から人類が独立を宣言するシーンは、観ている私たちまで鼓舞され、思わず敬礼したくなるほど。
「今日のこの日、我々は人類として、一つの声で叫ぶ。我々は生き延びる!我々は今日、独立記念日を迎える!」
このセリフを聞くと、エメリッヒ監督の「エンタメに細かい理屈はいらない。ロマンと興奮を届けたい!」という熱い想いが伝わってくるようです。

荒唐無稽だからこそ面白い!
最終決戦で「宇宙人のシステムを簡易なPCでハッキング!?」など、突っ込みどころは満載です。しかし、「細けぇことはいいんだよ!」というツッコミが、この映画の醍醐味ではないでしょうか。 エリア51といったトンデモ都市伝説をストーリーの軸に据える大胆さも、エメリッヒ作品ならではの魅力です。
またモールス信号が宇宙人の通信手段に対抗する鍵となる展開は、改めて観ても感動的です。現代の最新技術ではなく、シンプルなアナログ通信が人類を救うという展開も、この映画の持つロマンの一つかもしれません。
まとめ
映画『インデペンデンス・デイ』は、90年代を代表するSF作品の一作です。公開日と連動した舞台設定に加え、CGと模型を組み合わせた撮影技法でも、多くの人々を惹きつけました。これぞアメリカらしさが本編全体に詰め込まれた作品でもあり、まさに独立記念日に見るにふさわしい一本と言えるでしょう。アメリカらしさを味わいたいときにも、おすすめの一本です。