映画本編9割を占める迫力満点のカーアクション
マッドマックスシリーズは本作より前に3作品が劇場で公開され、絶大な人気を誇り社会現象を巻き起こしてきました。本作はそれら前作よりもさらにカーアクションに力を入れており、最新の撮影技術を武器に、類をみないほどの映像美と目まぐるしく動き続けるカーアクションが一番の魅力です。
また、アクションシーンのカメラワークも絶妙な塩梅で、画が見づらくなってしまう程動きすぎることもなく、躍動感のある画が展開されていて、世紀末ジャンルにおける金字塔映画の風格を以前として保ち続けています。
人 v.s. 人の戦いでは、肉弾戦にこだわる事もなく本作でも様々な武器や車両の武装が登場。新しいものが出てくるたびに、これはどのように使われるんだろう、どんな効果がもたらされるんだろうと、楽しませてくれます。
とはいっても、これはマッドマックス。普通の映画のように必ず皆がハッピーエンドで終われるとは限りません。一瞬たりとも、決して目を離すことはできないでしょう。

ジョージ・ミラー監督の映画に込める魂
昨今CG技術がふんだん使用されている作品が多い中において本作においてCGが用いられたのは、なんと映像効果(VFX)の部分のみ。約150名のスタントマンが用意され、アクションシーンはすべて実写で収録されています。
“None of these shots have been enhanced with CGI in any way”「これらのシーン以外では一切のCG技術を用いていない」と太鼓判を押されたこちらの映像では、本編のCG合成メイキングの様子が公開されています。
さらにはアクションシーンの撮影にはなんと128日間もかけられたのですが、本作の舞台となった荒野の撮影地は、天文学的な確率によって、はたまた神のいたずらによって雨が降り、結果として荒野が「緑の地」となってしまい一度その地での撮影を断念し、18か月間の努力を水の泡にして、別のロケ地が選定されたのです。
現実にこだわり続けるジョージ・ミラー監督の映画魂は、今後もマッドマックスシリーズの栄光を築き続けていくでしょう。
主人公「マックス」の生き様
救いなんて一切ない、修羅の世界を生きる主人公が今作のヒロイン、シャーリーズ・セロンが演じる「フュリオサ」と出会い、妻と娘を亡くしたトラウマを抱えつつも徐々に心を開いていき、悪人共と戦っていく様はとても勇ましく、見ごたえがあります。
実は今作において主演トム・ハーディに用意されたセリフは100ワードほど。冒頭20分においてはほとんど喋るシーンはなく、しかし視聴者を背中で魅せつけてゆくのです。
このように弱者を救済するために立ち上がる正義のガンマン像によって、フランスでは「車の西部劇」などと表現されました。それは、人々の心を常に魅了し、また同時に自分の近くにもこのような話が、人がいてくれたらと希望を与える存在でもあります。
忖度一切なし!
前作を見なくても楽しめました
本シリーズを通して、大まかな前作からの繋がりはあるものの、それぞれの話は独立したシリーズ構成となっており、共通点があるとすれば主人公とその過去のみとなっています。そのため、前作を見たことがないマッドマックス初心者の方でも、安心して楽しめる構成と言えます。
逆に、本作は前作「マッドマックス/サンダーストーム」からは実に30年もの月日が開いているので、現代の映像技術によって大いに進化したアクションシーンを楽しみたいという方は、こちらから視聴して過去作を後から見るのも賢い選択の1つです。
なお、監督によれば本作は三部作品のうちの1つであり、今後「フュリオサ」「ウエストランド」がそれぞれスピンオフとして公開される予定です。
「マッドマックス」シリーズ一覧
- 「マッドマックス」(1979)
- 「マッドマックス2」(1981)
- 「マッドマックス/サンダーストーム」(1985)
- 「マッドマックス 怒りのデスロード」(2015)
- 「マッドマックス フュリオサ」(2024年公開予定)

もう一つのストーリーに感動
シリーズを通しての主人公「マックス」の物語として描かれた本作である一方、もう一人の主人公としてニコラス・ホルト演じる「ニュークス」の活躍は言及せざるを得ません。
「マッドマックス2」にて発生した戦争によって、放射能汚染によって寿命が刻一刻として迫りつつあるニュークスが、「砦」から逃げた赤髪の女性と懇意になり、人生を通じて自分が信仰してきたボスを捨て、命を懸けて仲間のために戦う姿はベスト・モブ賞を受賞するべきでしょう。
主人公の英雄譚に焦点が行きがちですが、このようにモブを含めて各キャラが各々の人生を抱え、その中で葛藤しながら戦う様は単純に「世紀末物」という言葉だけで片づけることは決してできない、名作でした。
