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ミッションインポッシブル デッドレコニングPART1:AIという新たな敵との知的格闘戦

Score 3.4

シリーズ7作目にして、トム・クルーズの代名詞とも言えるスパイアクション映画が再び公開されました。前作から5年の時を経て帰ってきた『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は、シリーズ最高峰のアクションクオリティと、AI(エンティティ)という形のない敵との知的格闘戦を融合させた傑作です。約3時間の上映時間があっという間に感じられるほど、クライマックスにふさわしい完成度を誇っています。特に崖からバイクで飛び降りる圧巻のスタントシーンは、映画史に刻まれる名場面として記憶されることでしょう。

原題
Mission: Impossible - Dead Reckoning - Part One
公式サイト
https://paramount.jp/mi-deadreckoning/

©2023 Paramount Pictures.

公式サイトSNS
監督
登場人物
イーサン・ハント

Actor: トム・クルーズ

他の作品:

IMFの敏腕エージェント。シリーズの主人公

グレース

Actor: ヘイリー・アトウェル

他の作品:

謎多き女性。鍵となる存在

ルーサー・スティッケル

Actor: ヴィング・レイムス

他の作品:

イーサンの盟友。IMFのハッカー

ベンジー・ダン

Actor: サイモン・ペッグ

他の作品:

IMFの技術担当。陽気な仲間

イルサ・ファウスト

Actor: レベッカ・ファーガソン

他の作品:

謎多き元MI6エージェント

ガブリエル

Actor: イーサイ・モラレス

他の作品:

イーサンの過去を知る宿敵

ホワイト・ウィドウ

Actor: ヴァネッサ・カービー

情報屋, 割り切った手腕

配給会社
制作会社

あらすじ

IMFエージェント イーサン・ハントに、「全人類を脅かす新兵器を悪の手に渡る前に回収せよ」というミッションが下される。イーサンは仲間とともに、過去の因縁を抱えた強敵ガブリエル、謎多きグレースらと対峙しつつ、全世界を股にかけて激しい追跡戦と戦いへ挑む。

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』|NBCユニバーサル・エンターテイメント

2023年夏、映画界最大のアクションスターであり職人トム・クルーズが再び不可能なミッションに挑む。それが「ミッションインポッシブル デッドレコニングPART1」です。ハリウッドストライキの影響で来日イベントが中止となる中、スクリーン越しにファンへ直接メッセージを送る冒頭の演出からして、このシリーズの特別感が伝わってきます。ミッションインポッシブルシリーズ通算7作目となる本作は、2部作構成の前半戦でありながら、単体でも十分な満足感を与える仕上がりとなっていました。

クリストファー・マッカリー監督が再びメガホンを取り、おなじみのイーサン・ハント(トム・クルーズ)、ベンジー・ダン(サイモン・ペッグ)、ルーサー・スティッケル(ヴィング・レイムス)に加え、前作から続投のイルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)、そして新キャラクターのグレース(ヘイリー・アトウェル)が物語を彩ります。

トム走りは本作でも健在であり非常に速いだけでなく、全身が生き生きとしているため、観客に強い印象を与えます

「なんとなく」で見て「めちゃくちゃ」面白い究極のエンタメ

物語の核心は「鍵を巡る争奪戦」

本作のプロットは驚くほどシンプルです。超高度AI「エンティティ」を操るために必要な2つの鍵を巡って、IMF、CIA、謎の組織シンジケートの残党、そして新たな敵ガブリエル(エサイ・モラレス)が三つ巴の争いを繰り広げます。

序盤の潜水艦シークエンスが示すように、エンティティは従来のスパイ映画の枠を超えた存在として描かれています。レーダーに映らないステルス潜水艦同士の戦闘という、一見複雑に見える導入部ですが、結局のところ「AIに支配されるか、人類が制御するか」という根本的なテーマに収束していきます。

AIで作成したイメージ画像

伝統的な要素の継承と破壊

シリーズおなじみの変装マスク、5秒後に消滅するメッセージ、ガジェットの数々など、ファンが愛する要素が丁寧に描かれる一方で、「いつものパターン」を自己言及的に破壊していく構造も秀逸です。特にイルサの死という衝撃的展開は、シリーズの「安全地帯」を容赦なく崩していきます。

トム・クルーズのアクションの真髄!崖から飛び降りる「死のスタント」

崖からのバイクダイブ:映画史に残る名場面

本作最大の見どころは、間違いなくノルウェーの断崖絶壁からバイクと共に飛び降りるシークエンスです。トム・クルーズ本人が6回もの撮影を重ねて完成させたこのシーンは、予告編の段階から話題を呼んでいましたが、実際の映像は期待を遥かに超える迫力でした。

飛び降りる瞬間の無音演出、そして成功後に流れるあの象徴的なテーマ音楽のタイミングは完璧です。過去シリーズを含めても最高峰のアクションシーンと断言できます。メイキング映像で明かされた膨大な準備期間と練習の成果が健在でした。

バイクダイブで使用したものはカスタムされたホンダ CRF250でしたね。

オリエント急行でのアクション:縦軸の魅力

電車を舞台としたアクションは、横軸の移動が多いカーチェイスとは対照的な縦軸の面白さを提供します。特に終盤の車両が橋から落下していく中での格闘シーンは、ハラハラ感と視覚的な美しさを両立させています。実際の車両を製作して撮影したというこだわりが、CGでは出せないリアリティを生み出しています。これはゲームのアンチャーテッド2 (2009) を思い起こさせるシーンでしたね。

ローマでのカーチェイス:コメディとスリルの絶妙なバランス

手錠で繋がれたままのイーサンとグレースによるカーチェイスシーンは、『ワイルド・スピード』シリーズを彷彿とさせる大規模なアクションでありながら、二人の掛け合いによるコメディ要素が絶妙にブレンドされています。フィアット500での逃走という設定も、イタリアらしさを演出する巧みな選択です。

足引っ張り系ヒロインvs.最強の仲間たち

新キャラクター:グレース(ヘイリー・アトウェル)

本作で最も賛否が分かれるキャラクターがグレースでしょう。登場は泥棒から始まり、最終的にIMFメンバーとして成長していく彼女の物語は、典型的な成長譚として機能しています。しかし、序盤から中盤にかけて足を引っ張る場面の多さは否めません。特にイルサとの命の天秤にかけられるシーンでの対応は、多くの観客をイライラさせることでしょう。イルサはシリーズの5から登場していたキャラクターなのでファンの思い入れも強いキャラクターでしょう。

ただし、ラストでの表情の変化、覚悟を決めた瞬間の演技は見事で、PART TWOでの活躍に期待を抱かせる仕上がりとなっています。

これまでの既存キャラクターの円熟

ベンジーとルーサーの存在感は、長年の友情関係があってこそ成立する安定感を提供しています。特にイルサを失ったイーサンを支えるルーサーの包容力、危険なバイクダイブを支援するベンジーの技術力は、過去シリーズからのファンにとって感動的な瞬間でした。

敵役の魅力:ガブリエルとパリス

エサイ・モラレス演じるガブリエルは、エンティティの代弁者として不気味な存在感を放っています。一方、ポム・クレメンティエフ演じるパリスは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のマンティスとは真逆のサイコパス的キャラクターとして強烈な印象を残します。このシリーズ初のサイコパス系敵キャラクターは新鮮でした。

スパイアクションとして変装マスク=最高!スパイガジェットの美学

政府要人会議での毒ガス散布からの変装マスク脱出シーンは、シリーズの伝統的魅力が凝縮された名場面です。緑色の毒ガスという分かりやすい危険演出から、そして振り返ると別人の顔というお約束の流れが、ファンの心を鷲掴みにします。

このシーンについて、編集を手がけたエディ・ハミルトンは「我々は常に新しく独創的な方法でマスクリベールをやろうとしている。これはミッション:インポッシブルの署名的な動きだから」と語っています。実際、本作では当初3つのマスクリベールが予定されていましたが、「物語全体での意義を損なうため」1つがカットされたという制作秘話も明かされています。

本作のもう一つの注目マスクシーンは、グレース(ヘイリー・アトウェル)がホワイト・ウィドウ(ヴァネッサ・カービー)に変装するオリエント急行での場面です。カービーは「2人の女性がこれをやったのは初めてだった。とても楽しかった」と興奮を隠せません。

特に印象的なのは撮影技術の巧妙さです。マスク製造機で完璧な顔が作られるシーンは実際にはカービー本人の顔で、「彼女の体はフレームの下に隠れている。VFXチームがブリーフケースの端を首のところに配置して、彼女をショットから消した」という moviemaking マジックが使われています。

「AI vs 人間」の予言的テーマ

ベンジーの声を真似てイーサンを混乱させるエンティティの攻撃は、形のない敵の恐ろしさを効果的に表現しています。これまで物理的な敵と戦ってきたシリーズにとって、サイバー攻撃という新しい脅威は斬新な試みでした。

現代的なAI脅威論との符合

ChatGPTをはじめとする生成AI技術が急速に発達する現代において、「AI vs 人類」というテーマは極めて時宜を得ています。本作は娯楽作品でありながら、AIの暴走という現実的な懸念を扱った社会性のある作品として評価できます。

アクション映画界での位置づけ

CGが当たり前となった現代のアクション映画において、トム・クルーズの実演主義は貴重な存在です。『トップガン マーベリック』の成功と合わせ、「本物のアクション」への回帰現象を象徴する作品と言えるでしょう。

まとめ:「不可能を超えた男」が遺す映画史への永遠の問いかけ

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は、60歳を超えたトム・クルーズがなお世界最高峰のアクションを披露し続ける奇跡的な作品です。AIという現代的脅威と、アナログな人間力の対決という構図は、デジタル時代への警鐘としても機能しています。

シリーズ通算7作目にして、まだ進化を続けるこのフランチャイズの底力に驚愕すると共に、PART TWOでどのような「不可能」が待っているのか、期待は膨らむばかりです。監督が「今作が一番危険だったが、次はもっと危険な挑戦をする」と語っているように、トム・クルーズの挑戦はまだまだ終わりそうにありません。

映画館のような大画面で真価を発揮する作品として、あらゆる映画ファンにお勧めできる傑作です。これぞ「映画の魔法」を感じられる、スペクタクル・エンターテインメントの極致と言える作品でした。

果たして人類は、AI時代の「不可能なミッション」を成し遂げることができるのか――。その答えは、PART TWOで明かされることになります。

各サイトのレビュースコア

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このページではNetflix Jpで配信中のミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEから執筆しました。

Netflix Jpで配信されている「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」のあらすじ、感想、評価を紹介しました。気になる方は、ぜひ下記URLのNetflix Jpからチェックしてみてください!

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