2003年に一作目となる映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』が公開されてから、日本でも多くの支持を集めている「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ。本作は全体的に批評家からの評価ではあまり良い結果を得られてはいませんが、一般の観客からの強い支持を受けています。レビューサイトのRotten Tomatoes はTomatometerだと30%に対してPopcornmeterが60%となっています。(2025年8月時点)
興行的には成功をした5作目となる映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』はジャックと仲間たちがどんあ冒険を繰り広げたのかを執筆しました。
おなじみのキャラクターと新たなキャラクター
映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』の中心となるのは、もちろんジョニー・デップが演じるジャック・スパロウです。一作目の映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』からアイコニックな存在であり続けるこの海賊の魅力は5作目になっても変わりません。大きく成長するわけでもなければ、後退するわけでもない、それがこのジャック・スパロウの魅力と言えるでしょう。さらに、同じくレギュラーとなっている海賊のバルボッサも、本作に登場しています。加えて、シリーズ3部作でメインキャラクターだったウィル・ターナーとエリザベス・スワンもわずかながら本作に登場したことで、大きな話題となります。

本作にはおなじみのキャラクターに加えて、新しいキャラクターも登場しています。まずウィルとエリザベスの息子であるヘンリーは、本作の主人公の一人と言ってよいでしょう。そして魔女と間違われてしまった天文学者カリーナが本作のヒロインとして登場します。加えて悪役として、スペイン海兵の亡霊で「海の処刑人」と呼ばれるサラザールが新たに登場しました。ヘンリーとカリーナはどことなくウィルとエリザベスを彷彿とさせる組み合わせですが、若い二人ということもあってか、ジャックとの関係性が全く異なるところが、本作ならではかなと思いました。

ヘンリー・ターナー

カリーナ・スミス

アルマンド・サラザール
アトラクション的な魅力の映画
映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』は、アトラクション性に非常に優れた作品だったといえるでしょう。これまで人物関係が非常に入り乱れ、恋愛や勢力が常に三つ巴戦が魅力となっていた最初の3部作や、小説を原作としてストーリー部分の強化を試みた前作と異なり、本作は全体的に非常に分かりやすい物語だった一方で、視覚的に観客を楽しませようとしている要素が強いと感じました。
例えば、本作の冒頭でジャックの登場場面である銀行強盗のシーンは、見ているだけで手に汗握るハラハラとしたシーンでした。プロットに大きく関係のある場面ではありませんでしたが、時間もそこそこ長く、印象にも残りまいた。また、ジャックが処刑台に送られた後、騒動の影響でギロチンごと揺れるシーンは、まさに遊園地の絶叫アトラクションのような作りになっていて、やはり見ている人々を大いにハラハラさせたシーンだったと思います。サラザールとの戦闘シーンでも、映像で魅せようとする描写が見受けられたほか、クライマックスの割れた海上でのシーンでもアトラクション的な演出が目立ち、作品全体として映像で観客を楽しませようという試みが感じられました。
また、もう一つのお楽しみ要素として、シリーズでは恒例となっている伝説的ミュージシャンのゲスト出演が本作でも用意されていました。やたらと歌がうまい海賊のジャックおじさんとして登場した、ポール・マッカートニーです。このシーンだけでも作品の大きな魅力となっていて、物語単体としては、体験する映画としての魅力を追求した一作だったといえるのではないでしょうか。
海の伝説を詰め込んだ一作
映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』では、海にまつわる伝説が複数詰め込まれていたとも感じました。前作は小説を原作としているからか、実在の人物が多く登場した半面、人魚のような伝説的生物も登場させていました。中でも、伝説的海賊「黒ひげ」の登場は、海賊を扱うシリーズとして必要なことだったと感じます。
対して本作では、「ポセイドンの槍」と「魔の三角領域」(バミューダ・トライアングル)が物語において最も重要な伝説として登場しています。これらは一般的にもよく知られた海の伝説なので、親しみやすい人も多いのではないでしょうか。ただ、その親しみやすさが仇となった部分もあったようにも感じられました。一般的に知られた伝説なので仕方がないのですが、全体的にどことなく「パーシー・ジャクソン」シリーズを彷彿とさせた面があったように思います。
過去作の呪いを解除できたのか?
本作は、シリーズの原点回帰とも言える物語が描かれています。しかしどこか既視感のある描写が続いていました。特に印象的なのは、若き主人公ヘンリーとヒロインのカリーナの物語でしょう。彼らの冒険は、第1作のウィルとエリザベスを彷彿とさせます。
ヘンリーが父の呪いを解くために冒険に出るという設定は、ウィルが父ビル・ターナーを救おうとする姿と重なり、新鮮味に欠ける部分がありました。また、バルボッサがどちらの味方につくのかという展開も、シリーズを通して何度も描かれてきたため、少し物足りなさを感じました。
これらの要素は、もはや「シリーズのお約束」であります。むしろ懐かしさを感じるものがあります。これはウィルとエリザベスの息子であるヘンリーが主人公であること、そして「父の呪いを解く」というテーマは、第1作から続き第3作目までの物語に「決着」をつける上では、不可欠な要素だったのかもしれません。
シリーズならではの難しさと、ファンへのサービス精神
『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズは、長きにわたって愛されてきたからこそ、新しい挑戦と過去作へのオマージュのバランスを取るのが難しいのかもしれません。
「過去作の焼き直し」と捉えるか、それとも「ファンが観たかった物語」と捉えるか。このあたりは、観客のシリーズに対する想いによって、評価が分かれるポイントと言えるでしょう。
しかし、ラストシーンで描かれるウィルとエリザベスの再会は、多くのシリーズのファンにとっては感動であり、この結末は、シリーズをずっと見続けてきたファンへの最高の贈り物だったのではないでしょうか。
まとめ:原点回帰と新たな冒険の融合
「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊」ではおなじみのジャック・スパロウやバルボッサに加え、ウィルとエリザベスの息子であるヘンリーをはじめとする新キャラクターたちが織りなす物語は、懐かしさと新鮮さの両方を感じさせるものでした。
本作は、前作『生命の泉』とは異なり、最初の三部作が持っていた壮大な物語のテンションを再び取り戻しています。全体的に明るく、ユーモアに富んだ描写は、まるでテーマパークのアトラクションを体験しているかのようなワクワク感を与えてくれます。「気負うことなく楽しめる」という点は、この映画だけでも楽しめるポイントだと思います。
本作は、「海にまつわる伝説」を題材に、家族の絆や呪いを解くという普遍的なテーマを盛り込んでいます。シリーズを観てきた人も、初めて観る人も楽しめるような、壮大かつ心温まる物語に仕上がっていました。