概要
リーアム・ニーソン演じる元殺し屋ジミーが、30年来の親友であるマフィアのボスショーンの息子ダニーを殺してしまった事から関係は一変。ジミーの息子マイクと共にマフィアや警察から追われる事になります。
ニューヨークを舞台に繰り広げられる、手に汗握るアクション逃走劇です。疎遠になっていたジミーとマイクの親子関係も見どころです。
ジャウム・コレット=セラ監督作品
話題になった「エスター」で有名な監督です。
「フライトゲーム」や「アンノウン」に続き、今回リーアム・ニーソンとの3度目の作品です。2013年「フライトゲーム」公開から1年足らずで撮影が始まり、2015年に今作「ラン・オールナイト」が公開されるという、タイトなスケジュールだったそうです。
飛行機内で巻き起こるストーリー「フライトゲーム」とは違って、「ラン・オールナイト」ではリーアム・ニーソンが街を逃げ回り、思う存分暴れ回っている印象です。
何度もタッグを組み作品を作りあげている事から、二人の相性の良さが伝わってきます。
父親と息子の複雑な親子関係
殺し屋という過去を持つジミーは、息子マイクにも嫌悪感を持たれ疎遠になっています。酒に溺れ孤独な毎日を送っていました。マイクは家族と幸せに暮らしているシーンがとても対称的でした。マイクが父親の居ない子供達にボクシングを教えている姿からも、父親という存在に対してのコンプレックスや感情を読み取る事ができて切なく感じました。
殺人現場に偶然居合わせた事により突然命を狙われる事になったマイクですが、ジミーに何度も助けられます。ジミーの息子を守るという強い気持ちが痛い程伝わります。最後までマイクに人を殺させる事はさせない行動に父親としての愛情を感じます。
マイクも少しずつジミーに対し受け入れるようになっていき、助けようとする場面は感動しました。ラストにジミーとマイクの古い写真が飾られているマイクの部屋の映像が流れます。父親に対しての感情が完全に変わり、心を許せた事を象徴しています。ジミーが命をかけて守りたかったマイクの幸せな生活。ジミーの願いが叶ったようで涙が出ました。
個人的にマイクの妻がジミーに対して「お会いできて嬉しい」と握手するシーンが好きでした。妻の寛大さと優しさを感じます。
ジミーとショーンの男らしい絆と関係性
孤独に生きるジミーですが、マフィアのボスであるショーンだけはジミーを気にかけていて、二人の長年の絆を感じます。辛い過去や傷を共有した戦友にも見えました。
二人の哀愁漂う渋く男らしい雰囲気が何ともかっこよくて、見応えがあります。
マイクを守る為ダニーを殺してしまったジミーが、電話で正直にショーンに伝える場面から、これから敵になるんだというお互いの覚悟が見えます。ショーンにとってもダニーはたった一人の大事な息子なので複雑な気持ちになりました。
マフィアのボスであるショーンの命令で、何人からも次々と狙われる事になるジミーですが、その戦い方が本当に強くてかっこいいです。最終的にジミーとショーンの一騎打ちになりますが、倒れたショーンを抱きかかえるジミーの姿が印象的でした。ジミーにとっても大切な存在であったショーンを、自身の手で撃たないといけないもどかしさ。ジミーに一瞬迷いが生じ動きが止まるシーンに、その気持ちを強く感じます。ショーンも一人の父親として愛情を注ぎ生きてきたんだと思います。男らしい最期でした。
ジミーの過去と最期
ジミーは殺し屋であった事から、顔見知りの警察に何人殺したのかと執拗に聞かれるシーンがあります。自身のしている事から家族を守る為に家族との距離を取っていたと思うと、それも愛情なんだなと思いました。
作中に何度か「ビリー」という名前が出てきますが、ジミーが殺したと認めたくなかった人物だといえます。後半でビリーはいとこだと分かり、ラストでは警察の求める殺した名前リストにビリーの名前が書かれています。ジミーは最後にビリーを殺した自分も受け入れ認めたというのが分かります。最後の最後でプロの殺し屋プライスからマイクを守り、ジミーは最期を迎えます。人生が終わる前に息子との時間を過ごし、息子の家族にも会え、自分の手で息子を守れた事はジミーにとって幸せな最期だったのかもしれません。息子に対する切実な想いや愛情を、ずっと持ち続け生きてきた父親。その想いが報われたような気がします。ジミーの表情はいつも切なく悲しそうですが、孫であるマイクの娘と話している時の笑顔がとても印象に残りました。ジミーの強い愛情とその悲しい人生に自然と涙が溢れました。