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ラスト・ナイツ:東洋と西洋が織りなす崇高なる騎士道譚

Score 2.8

キャッチコピー通り紀里谷監督の「忠臣蔵」でした。普通に面白かったです。 ストーリーはまさしく正義を貫きとおした主君の仇を討つ騎士の物語です。 紀里谷監督の前作の派手なCASSHERN、GOEMONに比べ、とても真面目に丁寧に物語が作られています。主人公の騎士の過去がけっこう重たそうなのですが、その過去シーンがなかったのが残念でした。 紀里谷監督らしい、かっこいい装飾品、背景とわかりやすいストーリーで、綺麗にまとまっている映画でした。 派手な描写がほとんどないので話題になりにくいとは思いますが、飽きさせず楽しめる映画でした。

原題
The Last Knights
公式サイト

©2015 Luka Productions

監督
登場人物
ライデン

Actor: クライヴ・オーウェン

主人公、主君の仇討に命を賭ける騎士団リーダー

バルトーク卿

Actor: モーガン・フリーマン

他の作品:

義と誇りを重んじる伯爵、ライデンの主君、理不尽な死を賜る

イトー

Actor: 伊原剛志

ライデンの宿命のライバルとなる騎士

配給会社

ここがおすすめ!

  • 「美しい絶望」の表現
  • 野心的な文化横断的アプローチ
  • 国際色豊かなキャスティング

あらすじ

腐敗した帝国で、主君バルトーク卿の死罪に無念を抱いた騎士ライデンたちが、1年の時を経て、理不尽な権力への復讐に立ち上がる。

映画「ラスト・ナイツ」は、日本の江戸時代を舞台にした『忠臣蔵』を架空の封建的な帝国に舞台を置き換え、騎士たちが活躍する映画に仕上げた作品です。

本作は、紀里谷和明監督による野心的なハリウッドデビュー作です。日本の伝統的な物語を西洋風の架空世界に移し替えることで、文化の壁を超えた普遍的なテーマを浮かび上がらせています。映像美においては監督の独特な美学が存分に発揮されており、中世ヨーロッパを思わせる重厚な世界観が構築されています。しかし、忠臣蔵という日本人にとって馴染み深い題材を、異文化の舞台で描くことによる違和感も否めません。

紀里谷監督による東西融合の壮大な実験

「CASSHERN」「GOEMON」と独特の映像美で、既成概念にとらわれない世界を構築してきた紀里谷和明監督。その彼が満を持して挑んだハリウッド進出作『ラスト・ナイツ』は、日本の古典的物語「忠臣蔵」を西洋の騎士道物語として再話する、まさに文化横断的な野心作です。

クライヴ・オーウェンやモーガン・フリーマンという実力派俳優陣に、伊原剛志らが脇を固める国際的キャスティング。この組み合わせは、単なる日本映画の海外進出を超えた、新たな映画言語の創造を予感させました。果たして、忠義と復讐をテーマにしたこの物語は、どのような化学反応を見せてくれるのでしょうか。

AIで作成したイメージ画像

紀里谷美学の集大成

本作最大の魅力は、やはり紀里谷監督ならではの映像表現にあります。「CASSHERN」では近未来のディストピアを金属的な質感と鮮烈な色彩で描き、「GOEMON」では戦国時代をCGと実写の融合で幻想的に表現してきた監督が、今度は中世ヨーロッパ風の架空世界に挑んでいます。

石造りの城塞、霧に包まれた荒野、そして騎士たちの重厚な甲冑──これらすべてが「CASSHERN」で見せたメタリックな質感表現の延長線上にありながら、より温かみのある色調で統一されています。「GOEMON」で培った実写とCGの境界を曖昧にする技法も随所に活かされ、現実味を残しながらも幻想的な美しさに満ちた世界を構築しています。

特に印象的なのは、復讐へと向かう騎士たちの心境を映し出すような、暗く重い色調の使い方です。これまでの作品で一貫して追求してきた「美しい絶望」ともいうべき美学が、本作では騎士道という西洋的テーマと見事に融合しています。

物語構造 忠臣蔵の新たな解釈

「忠臣蔵」について説明すると、これは江戸時代に実際に起きた赤穂事件を元にした日本の代表的な物語です。主君である赤穂藩主・浅野内匠頭が、幕府の高家・吉良上野介に刃傷に及び切腹を命じられた後、家臣の大石内蔵助ら四十七士が一年以上の準備期間を経て吉良邸に討ち入り、主君の仇を討つという実話です。この物語は「主君への絶対的忠義」「集団での復讐」「武士道精神」といった日本的価値観の象徴として、歌舞伎や映画で繰り返し描かれてきました。


本作は、この忠臣蔵の基本構造を西洋の騎士物語として翻案しています。物語は、主君を失った騎士ライデン(クライヴ・オーウェン)が、一年の時を経て復讐を遂げるまでの道のりを描きます。序盤では主君の死という悲劇から始まり、中盤では復讐への準備期間、そしてクライマックスで壮大な討ち入りが展開されます。

この構成は確かに忠臣蔵の基本的な流れを踏襲していますが、西洋的な騎士道精神との融合が興味深い効果を生んでいます。日本的な「忠義」の概念と、西洋的な「騎士道」が重なり合う部分もあれば、微妙にずれる部分もあり、その間隙から新たな物語性が生まれています。

国際的キャストの化学反応

クライヴ・オーウェンが演じる主人公ライデンは、静かな怒りを内に秘めた騎士として説得力のある演技を見せています。彼の抑制された感情表現は、復讐への想いを募らせる武士の心境を見事に体現しています。

一方、モーガン・フリーマン演じる賢者的な役割のキャラクターは、物語に重厚さと説得力を与える重要な存在です。彼の存在感は、この架空世界に現実味を与える錨のような役割を果たしています。

AIで作成したイメージ画像

伊原剛志をはじめとする日本人キャストの起用も効果的で、東洋と西洋の文化が混在する世界観に説得力を与えています。ただし、言語的な統一感に若干の課題があり、時として作品世界への没入を阻害する要因となっています。

忠臣蔵の国際的解釈

本作を語る上で避けて通れないのが、日本の「忠臣蔵」と西洋の騎士道物語との比較です。両者とも主君への忠義を美徳とする点では共通していますが、その表現方法や価値観の根底には明確な違いがあります。

日本の忠臣蔵における「義」の概念は、しばしば個人の感情や利害を超越した絶対的なものとして描かれます。一方、西洋の騎士道では、個人の名誉と正義感がより強調される傾向があります。本作は、この二つの価値体系を融合させる試みとして興味深い実験を行っているといえるでしょう。

文化的翻訳の困難

しかし、この文化横断的アプローチには限界も存在します。忠臣蔵の持つ日本独特の情緒や精神性を、西洋的な表現様式で完全に表現することの困難さが、作品全体に微妙な違和感として残っている印象でした。武士道における「義」と「忠」は難しいと思ってしまいました。

また、国際的な観客を意識するあまり、物語の普遍性を追求した結果、かえって特色が薄れてしまった感も否めません。東洋と西洋、どちらの観客にとっても完全に納得のいく作品として成立させることの難しさが浮き彫りになっています。

まとめ: 時代を超える忠義の美学

映画『ラスト・ナイツ』は、紀里谷和明監督の映像美学と国際的な製作体制が生み出した、野心的な文化融合作品です。日本の古典的物語を現代的かつ国際的な文脈で再話しようとする試み自体に大きな意義があります。

忠義という普遍的なテーマを軸に、異なる文化圏の価値観を架橋しようとした本作は、グローバル化する現代において、文化的アイデンティティをどのように表現し、共有していくかという重要な問いを投げかけています。完璧な融合には至らずとも、その挑戦的姿勢こそが、この作品の真の価値なのかもしれません。

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このページではNetflix Jpで配信中のラスト・ナイツから執筆しました。

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