日本初のおもちゃから発展してハリウッド映画となった「トランスフォーマー」シリーズ。その2作目となるのが、2009年に公開された映画『トランスフォーマー/リベンジ』です。前作の興行的な成功を受けて製作費を増額して作られた本作ですが、興行的に大成功を収めたにもかかわらず、内容についてはあまり良い評価とはいえません。
レビューサイトのRotten TomatsはTomatometer:(19%,248 Reviews)、Popcornmeter(57%Popcornmeter250,000+ Ratings)と低いです。
前作より大きなスケールで描かれる「トランスフォーマー」
映画『トランスフォーマー/リベンジ』は、前作の「トランスフォーマー」と比較して圧倒的にスケールが大きな作品となりました。1作目では主にアメリカとカタールが舞台となっていましたが、本作では世界中に潜むトランスフォーマーたちが描かれたため、地理的にスケールが大きくなりました。また、古代文明とのつながりが描かれたこともあり、アメリカを飛び出しエジプトが後半の舞台となり、スケールの拡大が象徴的に描かれていたように感じます。砂漠やピラミッドをはじめとした遺産で繰り広げられるバトルシーンは、新たな技術と古代文明の技術のつながりや破壊を象徴しているようにも見て取れました。

そしてスケールが大きくなったのは、ロケーションだけではありません。本作では前作よりも多くのトランスフォーマーたちが登場しました。おもちゃやアニメで人気のキャラクターが複数投入されているため、それらに親しんでいる人々にとっては、嬉しい展開だったのではないでしょうか。前作でもそうだったのですが、アニメ版で声を担当した声優陣が実写版でもトランスフォーマーの声を担当しているキャラクターも複数おり、アニメファンへの敬意を感じます。あまりのロボットの数の多さに、見慣れていないとどのキャラクターが誰なのかが分かりづらいのが難点ではありますが、「トランスフォーマー」の世界がいかに奥深いかを体感出来ました。
オートボット編
ロボット名 | 変形形態 | 主な登場・活躍シーン |
---|---|---|
サイドスワイプ(Sideswipe) | シボレー・コルベット・スティングレイ | 上海で鮮烈な初登場。サイドウェイズを真っ二つにする。 |
スキッズ(Skids) & マッドフラップ(Mudflap) | シボレー・スパーク & トラックス | サムと行動を共にし、コミカル担当。デバステーターの口から間一髪脱出。 |
アーシー(Arcee)/クロミア/エリータ-1 | バイク型 | 上海戦で連携してサイドウェイズを追撃。 |
ジョルト / Jolt | シボレー・ボルト | 終盤で登場。オプティマスとジェットファイアを合体させる。 |
ジェットファイア(Jetfire) | SR-71 ブラックバード偵察機 | 老兵として登場。サムに協力し、最終的に自らのパーツをオプティマスに託す。 |
ディセプティコン編
ロボット名 | 変形形態 | 主な登場・活躍シーン |
---|---|---|
デモリッシャー(Demolishor) | 巨大ホイール型建設車両 | 上海冒頭の戦闘で街を破壊、オプティマスと激突。 |
サイドウェイズ(Sideways) | アウディR8 | 上海で逃走するも、サイドスワイプに斬られる。 |
ラヴィッジ(Ravage) | ジャガー型メカ | サムの大学関連でオールスパークの欠片を奪取。 |
サウンドウェーブ(Soundwave) | 人工衛星 | 地球軌道上から監視。ラヴィッジを投下し工作活動。 |
コンストラクティコン(Constructicons) | 建設車両各種 | ピラミッド近くで集合し、デバステーターに合体。 |
デバステーター(Devastator) | コンストラクティコンの合体 | ピラミッドを破壊し、超巨大戦闘を展開。 |
グラインダー(Grindor) | MH-53ヘリコプター | 森林戦でオプティマスを襲撃するが撃破される。 |
ザ・フォールン(The Fallen) | プライム族の一体 | 宇宙から地球へ。人類に宣戦布告、最終決戦でオプティマスと激突。 |
大きく印象に残るCGとアクション
映画『トランスフォーマー/リベンジ』で前作を上回るのはスケールだけではありません。CGとアクションシーンも、前作よりも進化していたといえるでしょう。前作ではトランスフォーマーたちの存在が解明されるまでに少し時間があったため、トランスフォーマーたちの本格的な活躍シーンは中盤に差し掛かってからでした。しかし、本作では冒頭からトランスフォーマーたちの活躍を複数見ることができ、結果的に前作と比較して彼らの活躍を多く見ることができたように感じました。ロボットの数が増えたことでCGのクオリティが落ちたとは思いませんでした。映画の前半で登場するアリスの変身などは絶妙に恐ろしかったです。
登場するトランスフォーマーのキャラクターたちが増えたため、前作よりも多岐にわたるロボットの形態が登場したのも、興味深かったです。より柔軟にさまざまな場面にロボットたちが登場していたので、製作側としては大変な部分も多かったのかなと思いますが、見ている方としては大きなロボットだけでなくバリエーションが多かったので、CGでは飽きづらいつくりになっていたように感じました。
そして機械であるという設定を活かし、戦闘シーンの残虐性が際立っています。オイルが血の役割を担い、顔面を潰し、腕をもぎ取り、挙げ句の果てには背骨を抜くといった描写は、とてもファミリームービーとは思えません。スプラッター映画が好きな人にとって、このやりたい放題の残虐なファイト描写は、なんだかんだ言って好きになるんではないでしょうか。
ほぼない人間パートの描き方
映画『トランスフォーマー/リベンジ』の足を引きづっていたのは、人間ドラマのパートだったといえるでしょう。主人公サムが大学に進学したことを中心に、新たなキャラクターは登場していたものの、トランスフォーマーのキャラクターほどの激増ではなかった印象です。そのため、メインのキャラクターはほとんどが前作からの継続だったので、紹介を省きより深い人間関係を描こうという試みを感じました。特に、サムとミカエラがお互いに「愛している」という言葉を交わすかどうかが人間ドラマパートのカギとなっていて、彼らの関係の進展をより表していたと思います。また、サムと良心の関係についても、前作ではコメディパートの印象が強かった二人が、より「親らしさ」を魅せる場面が増えていたように感じました。この辺りは、続編ならではの登場人物の掘り下げ方だったのかな、と思いました。
その一方で、全体的にコメディパートが激増していて、人間ドラマや戦闘シーンの持つテンションを邪魔してしまっているように感じたのも事実です。前作のような間延び間ではなく、過剰さが目立っていて、作品の質を下げてしまっていた感は否めないと思いました。特に、トランスフォーマーのパートが古代文明やエジプトなどといった高尚なイメージのある事物と結びついていたので、コメディパートが悪目立ちしてしまう結果となったのではないでしょうか。本作も前作同様に2時間半と長いのに対し、尺を埋めるためにむりやりコメディパートを増やしたようにも感じられて、全体のバランスを見直した方が良いのではないかと感じました。
まとめ:スケールアップの果てに
映画『トランスフォーマー/リベンジ』は、前作の興行的な成功を受けて製作され、興行面では大成功を収めました。しかし、その内容は賛否両論を呼んでいる作品でしょう。その評価が分かれた主な理由は、前作をはるかに上回る圧倒的なスケール感と迫力満点のアクション、そして進化したCG技術が評価された一方で、過剰なコメディパートがシリアスな場面の緊張感を損ない、作品全体のバランスを崩してしまった点が残念でしたね。
そして世界中に舞台を広げ、多くの新キャラクターを投入したことで、シリーズの世界観は深く掘り下げられました。特に、ピラミッドでのバトルシーンは圧倒的です。一方で、コメディパートが浮いてしまったり、人間ドラマの掘り下げが不十分であったりした点が不評ではないのかと思いましたね。
ただCG技術についても圧倒的で、種類の増えた変形ロボットたちを違和感なく表現していました。人間ドラマについては、前作と比較してより深く描かれていた部分があった半面、コメディパートについてはやや過剰で、作品全体の評価を下げてしまった印象もあります。このあたりが不評の原因となったのではないでしょうか。それでも、アクションシーンは見ごたえ満載なので、ぜひトランスフォーマーたちの活躍を楽しみに観ていただきたい一作です。