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ノースマン 導かれし復讐者:野蛮美と神話が織りなす復讐叙事詩
『ウィッチ』『ライトハウス』で独特の映像美学を確立したロバート・エガース監督が、7000万ドルの大予算を得て挑んだバイキング復讐劇。シェイクスピアの「ハムレット」の原典となった北欧伝説を、圧倒的な暴力美学と神話的幻想で描いた野心作です。映像の迫力と歴史的ディテールへのこだわりは圧巻ですが、物語の構成面では賛否が分かれる、エガース監督らしい問題作となっています。 -
映画 アメリカ
ビースト Beast (2022):野生が牙を剥く時、父の愛が試される
映画『ビースト』は、アフリカのサバンナを舞台にした骨太のサバイバル・スリラーです。イドリス・エルバ演じる医師の父親が、二人の娘と共に巨大な人食いライオンと死闘を繰り広げる93分間は、予測可能な展開ながらも確実にエンターテインメントとしての役割を果たしています。本作最大の魅力は、短い上映時間を無駄なく活用した緊張感の維持と、イドリス・エルバの存在感です。CGIライオンの出来栄えや一部キャラクターの判断力に疑問符がつく場面もありますが、ドルビーシネマでの体験を前提とした音響設計と、長回しのカメラワークによる臨場感は見事というほかありません。批評家と観客の評価が分かれる作品ですが(Rotten Tomatoes 69% vs IMDb 5.9)、B級アクション映画としての割り切った楽しさを求める観客には十分に応える仕上がりとなっています。 -
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ノック 終末の訪問者:究極の選択が問いかける信仰と愛の境界線
『シックス・センス』から四半世紀、シャマラン監督が新たに挑んだのは「家族か世界か」という究極の選択を描く密室サイコスリラーでした。タイトな100分に凝縮された心理戦は確かに見事ですが、宗教的メッセージの扱いと原作からの改変が物議を醸し、評価を二分する問題作となっています。シャマランらしい映像美と演出の巧みさは健在ながら、社会的配慮に欠ける部分が作品の完成度に影を落としていた印象です。 -
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ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り:予備知識不要で楽しめる本格ファンタジー・コメディ
テーブルトークRPGの金字塔を実写化したのが映画「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」です。本作は、原作を知らない観客にも門戸を開いた、近年稀に見る完成度の高いファンタジー・コメディでした。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を彷彿とさせる絶妙なキャラクターバランスと、安易に流れないセンスの良いギャグで、予想を上回る面白さを提供してくれました。 -
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M3GAN/ミーガン:AI人形が問いかける「愛」の恐怖
2020年以降ChatGPTが世間を騒がせる時に、時代の最先端を捉えたAIホラーが登場しました。それが「M3GAN/ミーガン」です。本作はホラーにありがちなグロテスクな恐怖演出に頼らず、「愛情の暴走」という新しい恐怖の形を提示する意欲作です。ホラー初心者にも優しい作りながら、現代社会への鋭い問題提起を内包した、エンターテインメントと社会批評を両立させた秀作となっています。 -
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ザリガニの鳴くところ:自然と共に生きる少女の壮絶な半生
全世界で1500万部を超える大ベストセラー小説を映画化した『ザリガニの鳴くところ』は、ミステリーの皮を纏いながら、実は一人の女性の壮絶な人生を描いた感動作です。美しい湿地の自然描写と、デイジー・エドガー・ジョーンズの圧巻の演技が光った作品です。展開は難解でなくミステリーとしては結末が予想通りでした。ただそこに至るまでの心理描写の巧みさと映像美に心を奪われる作品でした。 -
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TAR/ター:芸術か実験か?問題作。
映画「TAR/ター」は16年ぶりにメガホンを取ったトッド・フィールド監督による野心作でした。ベルリンフィル初の女性主席指揮者の転落を描いたサイコスリラーは、2020年代のキャンセルカルチャーを鋭く切り取った時代の問題作です。ケイト・ブランシェットの圧巻の演技と芸術的な映像美は見事ですが、2時間半を超える長尺と複雑な構成で観客を選ぶ作品となっています。娯楽性よりも芸術性を重視した、まさに「映画評論家が絶賛し、一般観客が戸惑う」典型的な作品と言えるでしょう。 -
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ブラックライト:御年70歳を超えたアクションスターの人間味あふれる闘い
FBI長官直々に雇われた「フィクサー」のトラヴィス・ブロック(リーアム・ニーソン)は、極秘任務で潜入捜査官の救出と身元洗浄を行うプロフェッショナルです。ある日、救出した捜査官ダスティからFBIが一般市民殺害に関与しているという衝撃的な告発を受けます。この情報をジャーナリストにリークしようとしたダスティが何者かに殺害され、トラヴィスは記者のミラと共に真相を追うことになります。調査の過程で浮上するのは、極秘プログラム「オペレーションUnity」の存在。しかし、娘と孫娘が危険に晒されることで、トラヴィスは個人的な戦いに巻き込まていくのです。 -
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トランスフォーマー ビースト覚醒:マキシマルたちが告げる新しい時代
1994年のニューヨークを舞台に、オートボットと動物型トランスフォーマー「マキシマル」が手を組み、惑星を喰らう邪悪な存在ユニクロンに立ち向かう本作。日本のファンにとって思い入れ深い「ビーストウォーズ」のキャラクターがついにハリウッドデビューを果たしました。監督のスティーヴン・ケイプル・Jr.は前作「バンブルビー」から7年後の世界を描き、シリーズの新たな方向性を示しています。懐かしさと新しさが混在する一作ですが、期待値の6割程度の満足度に留まったのも事実です。 -
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ザ・フラッシュ(2023):時を駆けるヒーローの決断
DCユニバースの集大成として製作された『ザ・フラッシュ』は、単なるヒーロー映画の枠を超えた成長譚として結実しています。エズラ・ミラーの一人二役による演技力、マイケル・キートンの30年ぶりのバットマン復帰などそして時間改変がもたらす重厚なドラマが見事に融合。CGの完成度に課題は残るものの、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』的なSFコメディと壮大なアクションシーンが絶妙なバランスとなっていました。